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文太は長谷川さんと会話した。

文太は、学校の帰りに本屋に寄った。そして大辞林を買おうとした。長谷川さんに対抗して覚えてやろうと思った。しかしお金が足りなかったのだ。しみじみ感情だけで行動するのは気を付けないと、と思った。家に帰ってよく考えたら自分の持っている電子辞書に入ってるから、いらなかったことに気づいた。

なんだか無駄な時間を過ごした気分になり、その日は少し勉強しただけですぐ寝た。


早く寝たせいか、いつもより一時間早く起きた。こんなに早く起きたのなら一番初めに学校にいけるのではと思い、急ぎ足で家を出た。


学校に到着し、教室のドアを開けたら長谷川さんがいた。

文太は何ともいえない敗北感にさいなまれた。教室に入った順番がどうであろうと、勝った、負けたもないだろうと思ったのだが、腹から沸き上がってきたのだからしょうがない。長谷川さんのこと意識し過ぎだと自分に言い聞かせながら席に着いた。


「梶原くん、おはよう」

と長谷川さんから挨拶された。屈託のない笑顔に先ほどまでの対立心が少しやわらいだ。

「おはよう、長谷川さん早いね」

「うん、今日はお母さんに送ってもらったの」

「そうなんだ」

「ところで梶原くんって漢字博士って呼ばれてるの?」


文太に衝撃が走った。

いきなりだ、相手はこちらの戦力を伺ってきている。さっきの笑顔は油断させる作戦だったのか。

「まぁ漢検2級は取ったけど、それぐらいだよ」

嘘を言っても恥を塗るだけだと思い正直に言った。長谷川よ、どう出てくるのだ。

文太の頭の中では、長谷川さんの笑顔が急にさげすむ顔になり「そんな程度で博士って」と鼻で笑われるイメージが沸いた。かわいい顔にそんな事言われたら泣いてしまうかもしれない・・・しかし


「そうなんだ、すっごーい!!」

と長谷川さんは子供のように驚いて。笑顔を更に輝かせた。文太は予想と違った反応に戸惑った。

「梶原くんも国語好きなんだね。仲間だよね。」

ね?ね?と長谷川さんは問いかけてきた。

「うん。国語は好きだよ」

と文太は答えた。

「やっぱりそうなんだ。昨日漢字博士って言われてたから。そうかなって家に帰って考えてたんだ」

長谷川さんは嬉しそうにニコニコしていた。


文太が長谷川さんに負けないよう、大辞林の丸暗記に挑戦しようと考えてた時、対する長谷川さんは、文太との友好条約が結べるのではないかと考えていたのだ。

文太は自分を恥じた。一つは漢字博士というポジションを奪われるのという小さなことに捕らわれていた事に。もう一つは橋本のひやかしのおかげで、長谷川さんと少し仲良くなってることに。あいつの思惑通りじゃないか。


「梶原くん」

太陽の様な満面の笑みを浮かべ、長谷川さんが呼び

「これからヨロシクねっ」

と握手を求めてきた。


文太はヨロシクと答え軽く手をとった。

うかつにも、ときめいてしまった。

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