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この捻れた世界にて、〜悪役令嬢は愛する者のために戦う〜  作者: 3色あんこ
第4部 常世に最も近い国

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第4話 風を駆ける姫君


璃州港。

カミツ国からの迎えが来る予定の日。

朝から港はどこか落ち着かなかった。


「今日でしたよね?」


ミーナが海を覗き込む。

ヴィクトルは頷いた。


「ああ、予定では午前中には着くはずだ」


ジュリアンが腕を組む。


「本当に来るんだろうな?」

「来なかったら笑えませんわね、どうにかして入国だけでも……」


イリシアが苦笑する。

その時だった。


「船だ!」


誰かが叫ぶ。

水平線の彼方。

白い帆が見え、そして巨大な船体が姿を現した。


「あれが……」


ルークが目を細める。

白木造りの巨大船。

船体には金の装飾。

帆には金糸で描かれた九つ尾を持つ狐と太陽を象った家紋。

港にいた商人たちがざわめき始める。


「あれがカミツ国の外交船か……!」

「でかい……」

「まるで動く城じゃないか」


船はゆっくり港へ近付いてくる。

その時だった船首へ一人の少女が飛び出した。

深い紫色の東方衣装。

腰まで届く黒髪は後頭部の高い位置に結い上げていて、鮮やかな紅色の紐が風になびく。


「お待たせ致しましたーー!」


元気いっぱいな声。

そのまま少女は──


「今行きまーーーす!」


勢いよく船首から飛び降りた。


「「「えええええっ!?」」」


港中が悲鳴を上げる。

高さは優に数十メートル。

普通なら水面に落ちる距離。


しかし、少女は空中でくるりと一回転すると、ふわり、と風が舞った。

彼女の足元へ幾筋もの風が渦を巻く。


「──風神の加護よ」


小さく呟いた瞬間、身体が風へ溶けるように加速した。

海面すれすれを滑空する。

白波が一直線に割れ、風だけが港へ駆け抜ける。


「すご……」


ミーナが口を開ける。


「飛んでる……」


ミレイユも目を丸くした。


「風神の権能……」


イリシアが静かに呟く。

一方、船の上では。


「姫様ーーーーー!!」


腹の底から響く悲鳴。


「はしたないですよーーーーー!!!」

「外交官が何をなさっているんですかーーー!!」

「まだ接岸しておりませーーん!!」

「お願いですから戻ってくださーーーい!!」


船員たちが一斉に頭を抱えながら叫んでいた。

しかし、当の本人はまったく気にしていない。


「大丈夫ですよー!ちゃんと着地できますからー!」


元気よく手を振り返す。


「そういう問題ではありませーーーん!!」


さらに悲鳴が響いた。

数秒後、少女は港へ軽やかに降り立つ。


とん


まるで一枚の木の葉が落ちるような軽さだった。

そのまま勢いよく駆け寄り、ぱっと両手を広げる。


「はじめまして!」


太陽のような笑顔。


「カミツ国外交官!日乃神(ひのかみ) 咲羅(さくら)です!ルヴァン王国の皆様をお迎えに参りましたー!」


その眩しい笑顔に、港の空気が一瞬で和らいだ。

ヴィクトルたちは顔を見合わせる。


(……なんというか、思っていた外交官とは違う)


全員が同じ感想を抱いたのだった。

元気な姫様です!

読んで頂きありがとうございます!

次回の投稿は明日の7時頃を予定しております!


本作品はカクヨム、アルファポリスにて同時投稿をしております。

気が向いたらいいね、ブクマ、よろしくお願いいたします。

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