猫耳魔法少女は♂?
カオス・クロニクルは、6つの種族と8つの職業の組み合わせでキャラの能力が変わる。
まずは種族。
ヒューマン。平均的な能力値を持つ初心者向けの種族で、どの職業とも相性がいい。
エルフ。攻撃力と魔力が低く打たれ弱いが、回避率や攻撃速度、詠唱速度が高いので、アーチャーや、ヒーラーと相性がいい。
ダークエルフ。攻撃力と魔力はヒューマンを少し上まる程度だが、クリティカル率とクリティカル時の攻撃力が非常に高い。その分エルフよりもさらに打たれ弱い。ローグ、ウィザードと相性がいい。
オーク。全種族中最高のHPを誇り、一撃一撃の攻撃力が高い。しかし、速度に関しては全種族中最悪で、特に後衛の魔法系職業とは相性が悪い。とりわけ、ウォーリアが一番相性がいいが、ナイトという選択もある。
ドワーフ。能力はヒューマンを劣化させた感じになる。どの職業もこなせるといえば、こなせるが反面特にどの職業と相性がいいというわけでもない。しかし、ドワーフは唯一生産系のスキルを使えるという魅力がある。
フェイブ。低いHP。低い防御力。それを補って有り余る攻撃力、魔力、MP、速度、回避率。基本コンセプトは『殺られる前に殺れ』、『攻撃は最大の防御』と言ったところか。実装当初はここまで極端なパラメーターではなかったのだが、ナナメ上行くアップデートのおかげでネタと化した。
次に職業。
ウォーリア。剣、槍、斧・鈍器、デュアルソードを使いこなす近接戦闘のエキスパート。スキルはジャンプして目標に飛び掛る『メガクラッシュ』や、大ダメージを与える『クリティカルブレード』など、多彩で派手なエフェクトのスキルが充実している。
ナイト。剣と盾を装備する。パーティーの壁。ヘイトスキルを使用して自身にターゲットを固定させたり、スキル『ファイナルプロテクション』で防御力を一時的に底上げすることができる。
ローグ。デュアルダガーを装備する。暗殺者。一撃で敵を仕留める事も可能な『デュアルスタッブ』に、5秒間姿を消す『サイレントステップ』で敵を不意打ちできる。
アーチャー。弓を装備する。遠距離からちくちくと攻撃でき、視点モードを切り替える事で、ピンポイントで相手の部位を攻撃できる『スナイプ』が使える。
ウィザード。攻撃魔法を使いこなす。魔法書を装備する。地水火風の属性攻撃魔法を使いこなせるが、覚える魔法は種族によって一部異なる。例えると、ヒューマンが覚えるブレイズアローはフェイブは覚えず、代わりにダークアローを覚える。
ヒーラー。回復魔法の使い手。杖を装備。回復魔法全般と、一部だが強化魔法も覚える。このヒーラーの技量によってパーティーの生存率が大きく変動する。
サマナー。召喚獣を使役する。装備は杖・魔法書。使役できる召喚獣は、狩り場に出現するMOBである。自分のレベル+5までのMOBと召喚契約を結べるが、最大3匹までしか契約できない。使役できる召喚獣は原則一匹のみである。主人のレベルに合わせ召喚獣もレベルが上がるので、こだわりのあるプレイヤーは、ゴブリンを最大レベルまで育て、それを最高狩り場で使役するという。
エンチャンター。強化魔法(バフ)を使いこなす。装備は特に何の縛りもなく、全ての武器を装備できる。が、攻撃スキルもないし、攻撃魔法もない。しかし、自分を含めたパーティーメンバーの能力を大幅に強化する強化魔法(バフ)を使えるので、ある程度のソロは可能である。ナイト、ヒーラーに続いてパーティー狩りでは必須の職業だ。
「……こんなもんかな。わかったか、プン?」
返事がない。
「プン」
しかし、返事はない。
「あああああああ、ごめん。寝てたzzz」
「寝落ちとは、やってくれるな」
「だって、エルくんの説明長いんだもん;O;」
「お前はアホか。これくらい頭に入れておけ。基本だ。できる前衛ってのは後衛の経験もあるし、できる後衛ってのは前衛の経験があるもんだ。互いが互いを思いやれば、それは自然に理想のパーティーの動きになる。だから、公式に載ってる全種族、全スキルのデータを頭に入れておけ」
「そんなの無理だよ~;; あ、それならエルくんもヒーラー以外の職で前衛やったことあるの??」
一瞬答えるべきか躊躇した。しかし、自分で吐いた言葉を自分で踏み潰したくない。ここで『やったことがない』なんて言ったら、できる後衛じゃないと自分で言ってしまうようなモノだ。プンにナメられるわけにはいかない。
「まあ、な」
「おおw@@w」
それ以上答えるつもりは無いので、話題を変えようとした時、いいタイミングでヤマモトがログインしてきた。
オレとプンの真後ろにヤマモトの巨体がうっすらとフェードインして、カオス・クロニクルの世界に形作られていく。
「ソロ○ンよ、私は帰ってきた!!」
何のセリフだか解らないが、またもシャウトでエリア一帯にヤマモトの声が響く。
「ヤマちゃんこん^^」
「ぬお。プンちゃん、今宵も一段とハアハア」
「ハアハア^q^」
「お前らヤメロ」
プンがヤマモトに連られ、ハアハア言い出したので止める。それにしても、予想よりも早くヤマモトがログインしてくれたので助かった。
「いや~とりあえず、仕事放り出して帰ってきた! 上司が何か言ってけど無視してやったw」
……ダメな大人がここにいる。
「そんなことしてたらクビ切られるぞ。オレはよく解らないけど、再就職って難しいんだろ? てか、それって大人としてどうなのよ?」
「てへ、中尉にほめられちった(//▽//)」
何を言ってもダメなようだ。それ以上何も言わないことにして、プンの開いたパーティーマッチに再び目をやる。
「おい、プン。パーティー希望者が来たみたいだ。えっと、すぺりおる……だな。このすぺりおるって奴を招待しろ」
マッチには一人のプレイヤーが顔を出していた。名前はすぺりおる。職業はドワーフエンチャンター。エンチャンターか。都合がいいな。
プンが四苦八苦しながらすぺりおるを招待する。事前にオレとヤマモトもパーティーに入っていたので、4人分のHPバーが画面上に表示される。
「よろしくぅ」
すぺりおるの発言。と、それと同時オレ達の前方にドワーフの少女がとことこと歩いてきた。
このカオス・クロニクルにおいて、ドワーフ=ヒゲもじゃジジイという想像は間違いである。
ドワーフは男女とも、小学校高学年くらいの幼い少年少女である。こちらもオークとは違う意味で人気が高い。特に、ドワーフ女は。
目の前に現れたドワーフの少女は、頭に猫耳を装着し、ピンク色のローブ(これまた丈が短い)、杖を装備していて魔法少女然としていた。
「ぬお。す、すぺりおるたん、ハアハア」
案の定、ヤマモトのハアハアがすぺりおるに炸裂する。
「かわいいいーーー><w すぺりおるちゃん、かわいい!」
プンは、ドワーフ女を見るのが初めてなのか、近寄って抱きつくソーシャルをする。ちなみに抱きつくソーシャルは、相手側の了解を得られないとできない。
「レベル28のドワーフエンチャンターだぜぃ。緑のおっさん、ムサイから近寄るな。ねーちゃんエエ尻しとるのぅ」
「ぬを。まさか、すぺりおるたんって……」
「あぁ、俺、ネカマだから」
ドワーフ女の8割は中身が男だという噂があった。噂は真実らしい。




