学長のお願いとドライブ、そして千香の命令(平安神宮)パート1
ep.11の本文のつづきです。
頭の中が錯乱しています。歳ですかネ。
ネタ帳が、年代順に為っていなくて、ズレが多少有ると思います。それと 夢の中の話しです。夢の中では、その場に居て、その景色を見て話を書いても、改めてネットで調べると様変わりしています。
十数年前に見た夢を書き留めておりました。
ですから、今から二十数年前が話しの時代です。
おおらかな気持ちで、年寄りの話しを聞いて下さい。
学長から千香のもとへ電話が入った。
“妹を貸して!!”
学長と千香の間で大人の事情(裏取引)が、やっぱりあった。 千香は、只では動かん!
“貸し”と言う恐ろしいものを、学長へやんわりと
か‐し‐た。
ニコニコしながら学長は待っていた。
学長は、画家でもあったが 歴史的遺産、遺物に興味が強かった。特に、龍馬ファンであることは有名であった。
千尋が、見つけた掛け軸に龍馬が絡んでいた事に喜びが、隠しきれなかった。
二人が、学長室へ入ると、すぐに
「千尋君、昨日の話しだが その当時の写真から誰と誰か? 教えてくれないか?」
「ウン、いいよ! 写真有るの?」
「後で、博物館の学芸員の人が持ってくるから…その時頼むね。」
「学長!ポラロイドカメラが有ったら、私が掛け軸を書いた人達の写真を撮ってあげるよ! どうせ学者は認めないけどね。」
「ウン! でも私は認める。用意しとくね。」
すぐに、博物館学芸員、明治維新に精通した教授、6名が現れ簡単な挨拶をすると早速、中西本社へ向かった。
中西社長は、事務所で長テーブルを用意しながら ふと、これ迄の事を思い………物思いにふけった。
社長は、千香達学生の考えや行動に若かりし頃の自分を思い出していた。私は真っ直ぐに突き進んで来た。しかし子供達は、家を離れ別の仕事に就いていて、寂しい思いをしていた。そこへ大学生が、着物文化に新しい風を吹かそうとしていた。“ 嬉しかった。 ”
自分の道の、終着駅がそろそろ見える所へ来ていた。
それだけに、なんとしても、学生達を助けたかった。そこで 千香と千尋を知り何故か自分の子供達のように感じ “可愛くて! 可愛くて! ”
何でも手伝ってやりたくなっていた。
特に、千尋である。大人びているが、千香の言う“生き神様”らしくなくおっちょこちょいの子供である。でも やる事が、大人以上という“天才”を見せ付けられるが、千香には一切逆らえぬ妹で在ることが、姉妹の関係をハッキリとさせ、そこが好きになった一番であった。
千尋ちゃんが、教えてくれた自分の祖父の宝物。
掛け軸の秘密、今日、千尋ちゃんが解き明かしてくれる。
社長は、天にも昇る心地で千尋ちゃんを待っていた。
「社長!!!! きたよ---!!!!」
千尋の元気な声
付け足すように 「お世話になってます。」
カバン持ちのあやね
「社長!忙しい時にスミマセン、今日は、悪ガキの親代わりです。」 千香は頭をポリポリ。
社長は笑顔で 「 オ-! まいど!! 」
遅れて、学長達が入って来た。
学者達は、金持ちと一緒で、下じもの者を下に見下す所があり、学長も学芸員もそんなところが、見受けられた。本人達も知らぬ間に……。
あやねが気になりそっと千尋に伝えた。
千尋は、笑みを浮かべて頷いていた。それを千香は見つめ承知したように声を発しなかった。
千尋が言っても、千香が言っても学者達には届かない。千尋は、自らの態度で解らせようと考えた。
自分達の理解できぬ事が起こった時、彼らは先ず否定する。否定しきれないと話をすり替える、
最後は、その人の人格否定をする。
最後まで行く人は心なき者なり…と。
学者達もやはり人なり、心なきを恥と理解していると思いたい。
袖 振り合うも 多生の縁
天上界(現世に生まれ出ない神々の世界)の遥か高みの女神の千尋。
学問の世界の人間と縁を作るかどうか?
この時と……。
中西社長は、桐箱から掛け軸を取り出し長テーブルに広げた。すぐに、千尋が皆に声を掛けた。
「皆さん!ちょっと待って下さいね。今!写真を撮りますから!」
千尋は、学長から渡されたポラロイドカメラを持ってパチパチと撮り始めた。カメラレンズに蓋がされたまま、皆は苦笑するしか無かった。教授は、腹を抱えて笑っていた。“あんなんで、写真が撮れるか!”
誰もが、そう思った。しかし、一人真剣に見ている人がいた。学芸員の一人で皆から“主任”と呼ばれていた佐伯である。
「学長さん!芸者さん本当に綺麗だよ!」
学長は、千尋より写真を受け取ると一枚一枚振りながら事務机の上に並べた。
次々と映像が浮かび上がってきた。10枚全部。
「ヤッタ-!!すべて、すべて写ってる!!」
中西社長も学長も、興奮して雄叫びを上げていた。
坂本龍馬、桂小五郎、芸者さん、それぞれの真正面のものや、三人揃ったものまで写し出されていた。
芸者さんにいたっては、着物の色や柄までハッキリと写っていた。
今ここで撮った写真、レンズの蓋がされたままのカメラ、居る筈の無い人々の写真、
驚愕の念写を初めて見た。イヤ見せられた。
「学長さん! それでいい?」
「うん、うん、すばらしい! ありがとう! 私の宝物だ。」
佐伯主任は、興味深くそれぞれの写真を見て、胸の奥がワクワクしていた。つい、聞いてしまった。
「お嬢ちゃん、掛け軸の書かれた場所…お店の名前分かるかな?」
「分かんない。そこまで映像の中に入れない。」
「お嬢ちゃん、ついでに この写真の人達の名前分かるかな?教えて貰える?」
「信じて無いくせによく聞くね。読み方分かんないから字で書くよ。この写真の人達だけよ。」」
学長から頼まれていた事だった。
セピア色に変色した写真に五人写っていた。それこそ、明治維新前の時の写真らしく、ちょんまげのサムライ、畳の上で正座有り、中央で椅子に腰掛ける中年男性、お座敷での撮影らしく床の間が有った。照明は、どうしたんだろう。
千尋は、A4のコピー用紙に何処の藩の誰かを写っている位置に書き記した。すると、
「名前はどうやって分かるの?」
「本人言わないけど頭に字が浮かんで来るのよ。学長!もう、これ以上は 私ダメ!」
続けて、中西社長に、
「社長!この掛け軸は、おじいちゃんの宝物だから、手放したらダメだよ。」
「オウ!分かった。大事にする。」
佐伯主任は、
「今日は、驚きを隠せません。実際のところ念写を見たのは、今日が初めてでして しかも中学生の女の子が……。私は、念写というのを信じておりませんでしたが、写真を見る限り他には無いものです。それにもまして、この書は、文化財にすべきものです。この子が言ったことも事実でしょう。紙質が違います……昔の襖の地模様の様です。この署名は、当時二人が使っていた偽名で書かれております。一旦、博物館でお預かりさせて頂きたいのですが?」
「悪いが、今この子が言った通り、死んだオヤジの宝物でして、社長室に飾れと言われております。これが、偽物でも本物でも社長室に飾ります。我が家から、一歩も外には出しません。」
学長は、ニコニコしてるのに、回りは、腕を組み考え込んでしまった。
千尋が言った。
「学長が、コピーしたの持ってるよ。」
「エ-------!!!!」
「私達も、コピーさせて下さい!!」
それぞれ手分けしてコピーを取ると直ぐに写真撮りと動きが速かった。
「学長!念写の写真焼き増し頼むね。」
「社長!デジカメに納めて拡大して持って来ます。」
「オウ!頼むな!」
社長の奥様が、
「千尋ちゃん、こっちへ来て、お茶をどうぞ。」
「ワッ!! 饅頭! いただきま~す。」
「千尋ちゃん、ありがとうね!!昨日、今日、身体が、楽で楽で! 病院に行ったら医者様びっくりしてたよ。検査の数値が、すべて正常に戻っているって!」
千尋は、両手に饅頭を持って、
「良かったね! アレやると大変でね。お礼なら姉様に言って!」
「姉様が、生き神様だって!?」
「こき使われてます。 あっ!! おばあちゃんが、ケーキ欲しいって! 仏壇に上げてやって!」
呆れ顔の奥様が、
「おじいちゃん、おばあちゃん、また居るの?」
「私が来ると現れる。これが、言いたかったみたい、息子さん夫婦、仕事辞めて帰って来るって!どうも、友人の金銭トラブルで利用され…大分疲れて居るようよ。深刻に考えず、いい勉強が出来たと…慰めてあげて!」
「大丈夫かしら…?」
「ははは おじいちゃんが守ってくれたから…。お金取られただけで済んだよ。これ おじいちゃんの弁。命取られる所だったみたい。これも おじいちゃんの弁」
「兎に角…支度しとかないとね!」
「この先の左手にマンションが在るでしょう!今3階に空室有るから、押さえて置いた方がいいよ!これもおじいちゃんの弁。」 それと 「来年、男の子が生まれるよ。まだ本人達知らないから気を付けて、これ おばあちゃんの弁」
「ハイ!ハイ! 生き神様!仰せの通りに!! 来年、おじいちゃんか…。」社長は答えると事務員にマンションの手配を指示した。
「千尋ちゃん、ありがとうね。本当にありがとうね!!」 奥様は、目頭を押さえながら何度も何度も頭を下げていた。
千香とあやねさんは、饅頭食べながらお茶を飲み我関せず。
学長が、こそこそ千香に、
「明日も、千尋ちゃんを貸して!!」
「なんじゃ! いい加減にして!仕事をさせる為に呼んでるのよ。」
「飛鳥寺と平城京を、お願いしたい。出来たら、聖徳太子も……。」
「二つ目は、大きい貸しだぞ!」
「何でも、協力するから…。」
態度が、さらに大きくなる千香であった。
千香が千尋を呼んだ。
「明日、学長と奈良へ行ってあげて!お菓子とジュースは、好きなだけ学長が出す。お昼は、一番高いものを食べてよし。」 続ける様にあやねさんへ
「千尋の事頼みます。」
あやねは、がく然、ショッピングを予定していた。
このエロガキ、余分な事しやがって…と腹の中で思ったが、そこは大人である。瞬時に、
「承知しました。明日9時に事務棟でよろしいですね。」 千尋の返事を聞かずに決まった。
「千尋ちゃん、ちょっと教えて?」
佐伯主任は、見栄も外聞もなく念写の事を聞きたかった。分からない遺構など念写で解き明かせないだろうか。頭の中で整理出来ぬ間に、
「さっき、写真撮ったでしょう。昔の建物も念写出来ますか?」
「分かんない、やったこと無いし、やる気もない。」
「お願いしたらやってくれる?」
「イヤ!貴方達、念写を信用して無いから、雑念強くて写真撮るの疲れるの!」
「学長さんの為に写真撮ったの?」
「学長さんには、お世話になってるからね。」
「念写で、撮られる人は、撮られている事が分かっているのかな?」
「判んないよ、 ん! 判っていた人がいた。
根性の悪いヒミコよ!写真撮ろうとしたら怒った。
あのクソババ-! 質が悪いよ。
日の巫女と書いて、ヒミコ………斎王の事よ。
当時、男の王より偉かった。」
「どこで、ヒミコの写真撮ろおとしたの?」
「九州へ行った時、偉そうな巫女がいたので、撮ろおとしたら怒ったのよ。霊感が恐ろしく強い女よ。」
「アマテラスとヒミコって同じ人だったのかな?」
「アマテラスも日の巫女! つまり、ヒミコよ!」
「ところで、邪馬台国って大和地方に在ったんじゃないの?」
「違うよ!大和に居たのは、今のアイヌの御先祖様。ヤマタイ族は九州。純に近い日本人は、アイヌの御先祖様!」
「それじゃ!今の日本人は……?」
「もともとが、縄文人が中心、弥生人は、大陸よりの移動民族が大半。大陸から争う心が、この蓬莱に伝わり戦国の世となった。ヤマタイに、一人の乙女が現れ戦を治めた。乙女の名は、アマテラス。連合国家だから名をヤマトと改め乙女が斎王として多くの国を治め平和を築くが、五十年持たず、神武が武力を持って静めたが戦が絶えなかった。アマテラスの遺言通りに、トヨが生まれでて平和を築いた。
日の巫女アマテラスが初代、トヨが二代目 すべて斎王と呼ばれ7.8代続いたが、男の王が、いつの間にか斎王を斎主と名を変え権力を奪った。それでも、アマテラスは死して後も この日の本を護らんと働いている。…………また余分な話をしちゃった。」
「あそこの神社の神様、アマテラス様でしょう。
すると、みんな初代ヒミコを祀っている事になるね!」
「アマテラスは巫女の身分から女神様になった。
当時アマテラスの祈った神様は “アマテル”
エラ~イ大神様が、若くて、美しいアマテラスに鼻の下を伸ばして女神にしたの!! 昔は綺麗だったけど、今はババ-よ! 私の天敵!」
佐伯主任は、千尋の話しが面白く最初から録音して良かったと思っていた。昔話しが好きになっていた。
「ところで、どうして喧嘩しているの?」
「写真撮ってたら、怒ったけど知らんふりして、撮影してたら、カメラに砂を掛けやがった。
“砂かけババ-!”って言って蹴飛ばしたら、肥溜めに落ちた。 くさかった~!」
「それから、どうしたの?」
「ざま~みろ!って 逃げた、逃げた、遺跡中…アッチ、コッチ」
「追い掛けてきたの?」
「地縛霊だと思ってたから…動けない筈なのに、アイツ、地縛霊じゃなかった。しつこく追い掛けて来たから、焦った、焦った、 あまりに臭くて堪らず…悪魔払いをやってやった。」
「どうなったの? 大丈夫だった?」
「鬼ババ-の顔して逃げた。それから仲良くないのよ。仲裁に、入る神様がいない。ミナカヌシが、笑い転げて仲裁出来ず。困ったもんよ!」
「イヤ~! 面白い歴史認識ですね。」
「学長! 私もう良いですね。」
学長は、笑いながら千尋に礼を述べた。
「千尋ちゃん!今日は、ありがとうね! 悪いけど……明日は、ドライブ御願いね。 今ね、千香君のOK 貰ったから安心だよね。美味しい食事処……探しとくから……若い子とドライブ楽しみ!!」
千尋は、千香に文句の1つも言おうと千香を見るとちょうど電話に出るところだった。
千香が電話に出ると、アカペラの部長からであった。
「姉様! 妹貸して!! 明後日、平安神宮の前、広場にして各大学アカペラ部参加の歌の広場をやるんだ。地元TV局も来るんだ。目立ちテー!!頼む!
サングラスの歌姫呼んでくれ----!!」
「知るか!妹は来てるけど、私の仕事の為だぞ!」
「あさって!! こないだと同じ15時から30分。
妹 来てくれるなら、1時間に延長。
サングラスの歌姫!!! 頼む!!!!!」
「部長、おまえは、頼み方を知らんのか? 私の横に、千尋のマネージャーが居る。どうする?」
「大学の会社事務所へ今から行くから………10日分の食券も持ってくよ。」
「それだよ、解ってるな!今から事務所に戻るよ。」
あやねは、聞きたかった。千尋の出演料は……?
ワンステ-ジ 30分 10万は欲しい。
ところが……なし?? しかも
千香さんへの食事券? 10枚?
1万か、そこら……なんじゃ! 無料奉仕か?
しかし、私の時間は高いぞ! 何を買うか、ゆっくり考えよう~。自分の時間外手当は、現物支給でブランド品。内心では、ホクホクでありオヤジ殿へ苦情を言いつつ、欲しい物が有る…と言えば、
すべてOK!(やったね!)
あやねは、大人である。内心は、顔にも口にも出さず粛々と……。
蚊帳の外であったがあやねは、また 目が点…
……この姉妹……なんじゃ~~~!!
また やってくれた! だけど 平安神宮???
素晴らしい!!!!
あやねは、斉木に電話した。
「サイ!あさって! 千尋ちゃんが、アカペラと歌う。場所は、平安神宮!!」
「エ------!! 平 安 神 宮!!!!」
「…………の前の広場(通路全面を使って)」
あやねと斉木の漫才は、暫く続いたが二人が我に返ると、それぞれ仕度を始めた。
あやねから私の所へ連絡が入った。私が、家内に話をすると “行きたい!” これで、家内も同行となった。この時、初めて あやねからの指示で、ヤメとクラそして龍治と楓、ボディーガード12名が動く事となった。リーダーは、クラであやねから細かく指示が出ていた。
千尋は、千香が電話中の時、中西社長の奥様に気になった事を尋ねた。
「奥さん、家の裏手に、池か井戸がなかったですか?」
「昔、機場の所が、畑だったと聞きました。井戸が、あったかも知れません。」
「池か井戸が、ちょっと問題でね。機場の入口辺り見せて下さい。」
裏にまわり、機場の入口に千尋が立った。
ボーとしているように見えるが、過去に逆登る様に景色を眺めていた。
江戸時代辺りまで眺め、この場所が大名屋敷であった事が分かった。明治維新で落ちぶれる大名が多い中、中西社長の御先祖様は、船を使った商いで儲かっていた。地元(九州)、京、江戸に屋敷を持っていたが、先の大戦で、地元と江戸の一族が亡くなってしまい音信不通、悪いことは続いて火事で、京の屋敷は無くなり池を潰して畑にした。掘っ立て小屋の生活から、土地の切り売りなど苦労の末に機屋を始め現代に至る。
湧き水は、昔から知られており、池を潰す時、井戸の様に木枠で囲いその水を畑に使っていた。曰く付きの湧き水だったらしく機屋を建てる時、その井戸を避けていた。いびつな機屋の原因が、この井戸であった。井戸は、いつしか使われなくなり、廃れるまま忘れ去られた。二畳程のスペースが、機屋入口の右手に不自然にあった。
千尋が、中西邸に来たことで、霊的反応が起きて水が湧き出した様だ。
電池切れの様に佇む千尋を、心配した奥様が千尋に声を掛けた。
「千尋ちゃん! どうしたの?」
「ここに大名屋敷があって、機場全てが池の上に建てられている。中西さんは、大名の三男坊の末裔、京屋敷の責任者。あそこが、井戸の跡。」
千尋は、場所を指し示して、言葉を続けた
「霊泉水を切ってしまった。家名が、廃れる原因になる。……霊泉水は、万病に効く。折角だから身内だけで飲みましょう。」
「えッ!!え~~!! 万病に効く水!!」
「今は、悪い方に向かってる。ピンチをチャンスに変えましょう。やっぱり姉様に出て貰うしかない。」
家の裏手に来ていた奥様と千尋の耳に、千香の雄叫びが届いた。
「 チ………ヒ………ロ………~~!!!!」
「奥様! 急いで戻りましょう。 遅れると殴られる!!」
千尋は、血相を変え アタフタと事務所に走って行った。その慌てように、奥様は笑いながら事務所に戻った。
「お姉様! お待たせしました。」
事務所に駆け込んで来た。
「千尋!明後日、平安神宮の前の広場でアカペラと……………。15時から……。父も母も来る。しっかりと頑張れ ファイト!」 いつも通り他人事。
「あの~~? 明日も? 明後日も?
私 何のために来たのか判んないよ。」
「そんな事は考えるな!! それよりもアカペラとの打ち合わせ頼むよ。たまには、女の子の歌を可愛く、お前には似合わないかもしれんが、あのエロオヤジが来るから、かわいい処を見せてやれ。姉としての絶体命令!!」
「お姉様、かわいい処を見せたら、お父様喜んでくれますか?」
「アイツは変態だ!! 若くて、可愛ければ、すぐ飛び付く!娘として…ハ~! 情けない。」
嘆く姉とウンウンと納得する妹。 そして
「先日、お父様 あやねに手を出そうとして……振られた。でも 無実だと、叫んでいた。 きっと人が良すぎて、あやねにハメられているよ。」
「いいお灸だよ! あやね! 許す! タカれ!」
大義名分が出来たあやねであった。
錦の御旗を手放さぬと決めたあやねであった。
あやねは、映画で見たフェラーリを夢見ていた。
フェアレディZが着たばかりなのに次のスポーツカーを考えていた。洋服や宝石類は、千尋の買い物に紛れ混ませれば…OK! ウンウンと納得のあやね。
「ところで、お姉様 この事務所の裏側に昔、井戸が在りまして、今埋められてて不味いんです。
霊泉水を飲めるようにしたい。万病に効く水なんです。 なんとか協力して下さい。」
「お前が、そう言う時は、図面でも出来ているだろう。 見せてみろ! 社、造ってどうとかだろ?」
あやねが、千香にそっとノートパソコンを見せた。
そこには、井戸らしき物……それは直径50cm程の筒を3m沈めて、井戸として、木の蓋をするとその上に、社を建てた形である。横にポンプを設置、配管は、中西邸の昔の正門付近まで這わせ、小さな小屋を建て、その中に蛇口を三つ設置して管理人を置く事としてあった。
千香は、即座にマキへ連絡を入れ担当責任者を任せた。アシスタント二名は、マキに決めてもらった。
千香達と入れ替わりに中西邸に来て打ち合わせを任せた。
すると、連絡を受けたマキは、今日子と鈴子を連れ中西邸に赴き工事の段取りから進めた。当然の事、工事に係る経費全て千香の持つ個人資産より出すこととした。
中西社長には、今後の管理費や運営費そして維持費等を町内会交えて話し合ってもらうこととした。
この後、マキにクラから連絡が有り貴船神社も協力を惜しまない事を知らされる。
マキ達三人は、市役所内、商業界、町内会、各旅行会社などで有名人となっていった。
単なる水だが、奇跡の水 “天女水”は、いろいろな逸話を残して行くことになる。
千香は、全てを確認すると千尋とあやねを連れホテルへ戻った。
あやねは、当然の様にマキ達や自分の後輩二人そして雅の役職五人を呼び、夕飯はホテルでと、スィートルームで食事が取れる様に段取りをしていた。
「あやね! 斉木さん 来るのか?」
「明日ね!………ん? 確認してみる!」
あやねが、確認をいれると本日19:00京都着予定との事、今回は、撮影隊30名との事で、会社でホテルを手配したとの事。
「サイ! 夕食 大丈夫か?」
「アイツらは、オニギリで十分。私は、ラーメンでも……。」
「こっちで、30名分用意しようか?
どこのホテルなの?」
「駅の側のアパへ34名で取ったよ。」
「酒 中心で良いよね? こちらのホテルで用意させる。
タクシーも手配するよ。今夜は飲むぞ~!!」
千香と千尋は、頭をかかえ マキ達は大爆笑。
こういう時のあやねは速かった。ホテル側を脅しまくり宴会場を用意させ一人ウキウキ。部屋での食事は、千香と千尋だけ、その他大勢は酒へと走った。
あやねは、ワインは懲りて飲まぬと思った千尋だったが、
「明日、オヤジ殿が来る。
今夜の分はオヤジ殿へ!」
あやねは、一枚上手だった。
千香と千尋の知らぬところで、賑やかで楽しい一夜が、大金と共に舞い散っていった。




