第56話:「おまえの迷宮をぶち壊すっ(≡ω)! 迷宮殺――」
「効率の良いパワーレベリングの次は、ダンジョンの強化を始めなきゃだよね?」
――ということで、シャワーから戻ってきたディルを加えた後に、俺達3人は拠点の作戦室でダンジョン強化の話し合いを始めることにした。
テーブルの上には、『バーゲンだっっ!』のアイスクリームや『効果コーラ』や『ヨーグルだっぺ』などの飲み物が、お茶会のように並んでいるのだけれど……まぁ、それは気にしないでおく。
何事にもメリハリが大切なのだ。ちゃんと真面目に考えるのであれば、何も問題ない――はず!
俺がそんなことを考えている間にも、空中や壁に表示されているモニターを操作していたディルが作業を一旦止めて、俺とエゼルの方を見た。
「それでは、ダンジョン強化を始める前に、まずは現在のダンジョンの状況をおさらいしたいと思います!」
「よろしくね」「よろしくなのだ(≡ω)b」
俺とエゼルの返事を聞いてから、ディルが手元のタッチパネルを操作して、壁面のモニターにダンジョンの全体像を表示させた。
ちなみにだけれど、今の俺達の席順は、壁のモニターに向かって全員横並びになっている。
前回の「女勇者侵入事件」の時には、壁のモニターに全員が背を向けているという大失態を犯したけれど、もう二度と同じことは繰り返さない。俺達は、学べる生き物なのだから。
「……何か、水島おにーさんがドヤ顔しているぞ(≡ω)?」
「エゼル、突っ込まないで。ふと、思い出したくない失敗を思い出しただけだから」
「ああ、鹿島さんのことか? アレはエゼルも思い出したくないぞ」
「私ちゃんもです。ポカミスでしたからね~、ここに居る全員が背中を向けていたせいで、思考加速中なのにも関わらず一切気付けなかったのですから」
「だよねぇ……」「アレは無いよなぁ(Tω)」
俺とエゼルのため息に近い言葉が重なった後、話が脱線していることに気付いた。
「ゴメン、ディル。話が違う方向に行ってしまったね。えっと、早速だけれど、ダンジョンの状況を説明してくれるかな?」
「はいっ! それでは、簡単に説明していきますね♪」
こうしてディルが説明してくれたダンジョンの状況を、俺なりに頭の中でまとめていく。
現在のうちのダンジョンの階層は、全部で8階層。
エゼルが「こんな浅くて簡単な階層じゃ、安心して眠れないぞ(Tω)ノシ」と言っていたから、ここ数日で新しく構造を変更したのだ。
一応、仮の姿だけれど――ダンジョンの内訳はこうなっている。
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1階層:洞窟簡易迷路
2階層:洞窟簡易迷路
3階層:草原フィールド
4階層:森フィールド
5階層:鍾乳洞簡易迷路
6階層:鍾乳洞迷路
7階層:鍾乳洞迷路
8階層:お花畑(拠点のログハウス有 ※旧鍾乳洞)
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壁のモニターに表示されている、ダンジョンの全体像はこんな感じ。
そして、4階層と6階層の転移魔方陣からは「魔物用宿舎」「食堂」「訓練場」がまとまっている、魔物達の住処といえる別の空間に移動することが出来る。
一応、ダンジョンの中は亜空間になっているから別々の階層なのだろうけれど、意識的には4~6階層をぶち抜いた空間が、ダンジョンの隣にあるとイメージしてもらえると分かりやすいだろうか?
そうそう、あと絶対に忘れてはいけないのが「こうもりさんの棲み処」だ。
これは1階層から少し離れた場所に複数設置されている、こうもりさん専用の居住スペース。こうもりさんが棲みやすいように気温や湿度、外敵対策などを万全にした空間で、近隣のこうもりさん達の間では羨望の棲み処として話題になっており、ちょっとしたステータスなのだとか。
毎日、夕方から夜に撃退DPを28000ポイント(鹿島さん達が帰った後、最優先で棲み処を増築した)も稼いでくれるこうもりさんなのだ。外敵対策として、キラーバットやキラーマウスのパトロール隊を常駐させてホームセキュリティーを強化し、手厚く保護するのは言うまでも無い。
これを今から、10万DPを使用して堅牢なダンジョンに変更していこうと思う。
「むっふっふ~♪ いよいよ、エゼルの迷宮殺しの力を活かすときがやって来たのだなっ(≡ω)b」
ドヤ顔で何か左手をわきわきしているエゼルだけれど……俺、あえて突っ込まないよ?
ここで相手にしたら、確実にエゼルが調子に乗るのが見えるから。
「おまえの迷宮をぶち壊すっ(≡ω)! 迷宮殺――「エゼル? ソレだけは、止めとこう? うちのダンジョン、たとえ幻想だったとしても、壊さないで……otz」」
(次回に続く)




