第55話:「次は、ダンジョンの強化を始めなきゃだよね?」
「よし! それじゃ3時間の休憩を挟んでから、またパワーレベリングを始めようか!」
次は俺も、5人の中に加わって、レベル上げに励むことになっている。
動かないとは言え巨大なドラゴンが相手なのだ、正直、ドキドキしている俺がいた。
そして――3時間の休憩時間を挟んでから、不死ドラゴンを使った2回目のパワーレベリングを俺達は開始した。
2回目ということもあって、みんなスムーズな流れで攻撃を繰り返していく。俺もその流れを乱さないように気を払いながら、着実にドラゴンにダメージを与えていく。
鑑定によると、レベルが40未満の俺でも1回の攻撃で2~5のダメージを与えることが出来ている。
数値としては微々たるものだけれど、こっちの世界では戦闘に参加することで経験値が分配されるシステムになっているらしいから、攻撃の輪に加わることが重要なのだ。
なおディルやエゼル曰く、もらえる経験値は「総与ダメージ」「総被ダメージ」「戦闘の貢献度」「相手とのレベル差」「ノーダメージボーナス」「相性ボーナス」などの項目が複雑に絡まって叩き出されるらしい。
今回のアンデッド・デミ・ドラゴンの場合だと、何か不測の事態が起こらない限り「総被ダメージ=0」「相手とのレベル差=55~140」「ノーダメージボーナス獲得」が確定しているので、通常の戦闘よりも効率よくレベルアップすることが可能だ。
そんなことを考えながら、でも油断はせずに、不死ドラゴンへ着実にダメージを与えていく。
そして30分の時間が経過したのとほぼ同時に、アンデッド・デミ・ドラゴンは光の粒になって消えて行った。
「やっぱり、みんなのレベルが上がると、討伐までの時間が格段に早くなるね」
「そうですね♪ 私ちゃんも全身に力が漲っています(///ω)ノ」
俺の言葉に返事をしてくれたディルに続いて、サキ姐さんが口を開く。
「ねぇ、この後はどうするのですか? 休憩してから、もう一度戦います? おねーさん、もっとレベルアップしたいなぁ(*^-)♪」
何というのか、サキ姐さんはレベルアップして気分が高揚しているのか、とってもうっとりした表情になっている。
恍惚として、なんか艶っぽくて、だから何かとっても――「ごちそうさまです!」と言いたくなってしまう。
「あらら? ダンジョンマスター、どうしたんですか?」
サキ姐さんと視線が合って、意味深な目で、にこっと微笑まれてしまった。
「い、いえ、別になんでもありませんよ??」
口ではそう言いながらも、多分、俺のごちそうさまがバレたのだろうと感じていた。
――でもさ、なんでそんなに嬉しそうにしているんですかぁ!! 俺、サキ姐さんの手の平の上で「コロコロ」されている気分なんですけれどッ(Tω)ノシ!
「クスクス♪ で、どうするのです?」
意味深な笑い声をあげてから、サキ姐さんが聞いてくる。
気が付けば、ゴブさんやボルトさん、スラちゃんも一緒になって俺の方を期待した目で見ている。
「もっとレベル上げをしたいという顔をみんなしているけれど……今日の戦闘訓練はここまでにしようと思う。いきなりレベルを上げたから、戦闘の感覚が今までとずいぶん変わったと思うんだ。今日の残りの時間は、戦闘の感覚を取り戻す時間として使って欲しい」
俺が「戦闘訓練はここまで」と言った時には、少し残念そうな顔をしたサキ姐さんとスラちゃんだったけれど――後半を聞くと納得したような表情に変わっていた。
追加で、俺は言葉を口にする。
「分かっていると思うけれど、今のみんなの戦闘力についてこれる配下は、まだこのダンジョンにはいないからね? ディルを除いた4人で上手く組み合わせを考えながら、自主訓練をしてみてよ。そしてディルは、俺やエゼルと一緒に『対天使用の罠』を設置する準備をしてくれるかな?」
「「「「ハイ!!」」」」「ハイなのです(≡ω)!」
サキ姐さんとスラちゃんとゴブさんとボルトさん、そしてディルの声が重なった。
早速、誰が誰と組手をするのか話し合うサキ姐さん達。
一方ディルは、俺とエゼルの近くにやって来る。
「今度は罠を設置するのです!」
「うん、そうだね。それじゃ、まずは拠点へ戻ろうか?」
俺の言葉に、エゼルとディルが首を縦に振る。
「了解なのだ♪」
「了解なのです! あっ――でも……」
「ん? ディル、どうかしたの?」
何かを言いかけて口ごもったディル。気になったから俺は、彼女に声をかけた。
「えっと……いっぱい一杯、汗をかいてしまったので……その、『洗浄』でキレイにはしたのですが……」
もじもじとしながら、顔を赤くして言葉を口にするディル。
女の子だから汗をかいたら気になってしまうのは、俺にも理解できる。
「了解♪ 拠点に戻ったら、最初にシャワー浴びておいで」
「はいなのです♪ 10分と30秒で完了させますので、2人は飲み物を飲んで待っていてほしいです!」
「了解♪」
「ゆっくりで良いぞ♪ エゼルはその時間に、お菓子を食べるからな(≡ω)b」
お菓子という言葉に、ディルが反応する。その表情は、まるで子どもを叱るお母さんだ。
「エゼルさんは、お菓子を食べ過ぎですよ? お腹がポッコリしちゃっても良いのですか??」
「ぅっ――それはヨクナイ(Tω)x」
ですよね~と言ってクスクス笑っているディルに手を引かれながら、俺は2人と一緒に拠点のログハウスへと帰っていく。気が付けば、エゼルも俺の手を握っていた。
「効率の良いパワーレベリングの次は、ダンジョンの強化を始めなきゃだよね?」
(次回に続く)




