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第54話:「パワーレベリングを始めようか!」

「ふっふっふ♪ 俺のダンジョンチートの時間が、ついに始まるッ!」

 思わず口に出して、俺は――羞恥に悶えた。俺もエゼルに毒されているみたいだなぁ……あぁぁぁあ。

 ――そんな感じに身悶えをしたのが3日前だっただろうか?


 あの後、お茶を淹れた俺は、ディルやエゼルと飲み物を口にしながら簡単に、今後のダンジョンの運営に欠かせない物事について話をした。ざっくりとしたダンジョンの方向性だったり、これから呼び出したい魔物だったり、今後広げていきたい階層の種類だったり。

 でも、簡単な話をしていたはずが……気が付けばディルとエゼルの議論が白熱していて――もうそろそろ夜も良い時間だなという頃になっても、2人は議論を止めようとしなかった。

 結局、思考加速を使用して会議の時間を延長したおかげで、何とかその日のうちに寝床に入ることはできたのだけれどさ。


 そして、迎えた翌日の朝。

 俺達は『各自が考えている、ダンジョンの理想や現実&戦略と戦術』をお互いに話し合っていたのだけれど、その議論もかなり白熱した。

 俺がパワーレベリングのために「意志を持たない(アンデッド・)高レベルダンジョン(デミ・)モンスター(ドラゴン)を召喚して倒す」ことを提案すると、ディルが一時的なブースト用の武器一覧をパネルに表示してくれて、エゼルがアンデッドに特効を持つ聖属性の魔法を付与することを提案してくれる。


 他にも、重力魔法を一瞬だけ発動させる簡易罠を応用した「天使にも対応できる(対天使用の)落とし穴」を俺が提案すると、ディルが重力場を強化する改良術式をその場で組んで見せたり、エゼルが確実に天使を落とし穴に嵌めるための「嫌がらせ(天使の習性)」を、「ちょっとしたもの~初見なら確実にハマるだろうというもの」まで多数提案してくれた。


 ――そんな風に有意義な時間を積み重ねて、今日この時がやってきた。

 俺達は今、ダンジョンの中にある『魔物の訓練場』の一角で、パワーレベリング用の魔物を召喚する準備をしている。

「ディル、サキ姐さん、ゴブさん、ボルトさん、スラちゃん――準備は良い?」

 俺の最終確認の言葉に、5人の声が重なる。

「「「「「はい!」」」」」

 その声を聞いて頷きを返してから、5人を守るように立っているエゼルへと視線を送る。

「エゼル。もしもの時には、エゼルがみんなを守ってね?」

「もちろんだ(≡ω)b アンデッド・デミ・ドラゴン程度なら、エゼルが後れを取ることは無い。安心して訓練を始めてくれ♪」


 頼もしいエゼルの声に頷きを返してから、俺はみんなに聞こえるようにあえて声を出して「意志を持たない魔物」を召喚する。

「それじゃ、行くよ!!――『召喚:アンデッド・デミ・ドラゴン』っ!!」

 俺の言葉と同時に、「この3日間にこうもりさんを総動員して供給されたDP」&「エゼルがアイテムボックスの中に保管していた不用品を、ダンジョンに吸収させて獲得したDP」の6割が消える。そして、禍々しい黒いオーラを伴いながらレベル180の不死ドラゴンが召喚された。

 即座に俺は、意志を持たないドラゴンに命令を下す。


「その場で動くなっ! 何をされても動くなっ!!」

 完全に骨になっている昏い眼窩の中には、感情を読み取ることは出来ない。ただし、茶色の巨大な骨が繋がった、博物館の恐竜の全身化石のようなドラゴンは、咆哮をあげようとした体勢のままピタリとその動きを止めている。

「――それでは、各自、気を付けながら順番に攻撃を開始してくれ!」

 俺の言葉に、ディル達5人が首を縦に振る。

「「「「「はい! これから、攻撃を開始します!」」」」」

 そして、5人の中から最初にディルが前に出る。

 ドラゴンは動かないけれど、今のディルのレベルでは、ドラゴンに攻撃されると致命傷になるのは間違いない。だからエゼルも緊張した様子で、ディルとドラゴンの近くに立って警戒を強めている。


「それじゃ、私ちゃん、聖属性の剣でドラゴンを、1回斬りつけます!」

 今回の訓練は安全確認のためにも各自が行動をする前に、次の行動予定を言葉に出すように決めている。ディルも真剣な表情で自分の行動予定を口にしてから、着実に実行していた。

「てぇぃやぁぁぁぁっ!!!」

 普段は魔術師タイプのディルだけれど、近接攻撃ができない訳じゃない。エゼルと戦う前のレベル1桁だった時にも、俺を相手に華麗な回し蹴りを披露してくれたほどだから。


 ガキンッ! という固い音がして、ディルの剣がドラゴンの骨に弾かれる。

「っ!?」

 レベル差があるから予想通りとはいえ、困惑する表情を浮かべたディルに俺は声を掛ける。

「大丈夫! 鑑定では、ちゃんとHPを削れているから! ディル、次のサキ姐さんに交代して」

「は、ハイです! 私ちゃん、交代します。サキ姐さん、お願いします!」

「了解♪ それじゃ、次はおねーさんが聖属性の剣で、ドラゴンちゃんを2回斬りつけます♪」


 サキ姐さんもディルと同じように行動予定を口に出して、剣を構える。

 サキ姐さんは完全に魔術師タイプの人だから、与えるダメージを増やすために2回攻撃をしてもらうことになっている。

「せーのっ♪」

 サキ姐さんが剣を振り下ろすと、ガギッ!! という剣が傷んだ音が聞こえてくる。

「……ダンジョンマスター、このまま攻撃しても良いの?」


 視線はドラゴンから外さないまま、サキ姐さんが俺に聞いてきた。

 ドラゴンの動きを命令で止めているとはいえ、油断しないところが、いつもしっかりしているサキ姐さんらしい。

「サキ姐さん、気にせずにもう一度攻撃して下さい! 今回の武器は消耗品ですので!」

「りょ~かぃ♪ 2回目の攻撃、いきますよ!」

 もう一度サキ姐さんが攻撃して、ドラゴンのHPが削れたのを確認してから、俺は口を開く。


「サキ姐さん、この調子で次回も攻撃して下さい。しっかりとドラゴンにダメージを与えられていますから!」

「ありがと♪ それじゃ、おねーさんはゴブさんと交代するわね♪」

 そう言ってサキ姐さんは、みんながいるところに下がった。

「姉御の次ハ、俺が行きマス。俺、聖属性の剣デ、ドラゴンを1回斬りつけマス!」

 走り出したゴブさんを視界の中に収めながら、俺は油断なくドラゴンの動きを注視する。


 そして――5人が順番に攻撃するのを4時間続けて。最後は喉に唯一残っている逆鱗にも攻撃をしながら――ようやくアンデッド・デミ・ドラゴンを倒すことができた。

 光の粒になって消えて行く不死のドラゴンをしっかりと見送ってから、5人とエゼルがゆっくりと緊張を解く。それを確認してから、俺も小さく一息つけた。


 最初だから時間はかかってしまったけれど、この調子でみんなのレベルを上げて行こう。

 なお、今のみんなのレベルは次のようになっている。


===

【カンディル・バイオレッド】

種族:吸血姫型ダンジョンコア

性別:女

属性:闇・魅


レベル:96

HP:9600

MP:9600

SP:4800

 ※詳細鑑定は、「こちら」を選択して下さい。

===


===

【サキ】

種族:クィーン・サキュバス

性別:女

属性:闇・魅


レベル:82

HP:4592

MP:9840

SP:4592

 ※詳細鑑定は、「こちら」を選択して下さい。

===


===

【ゴブ】

種族:キング・ゴブリン

性別:男

属性:土


レベル:125

HP:5625

MP:1500

SP:6250

 ※詳細鑑定は、「こちら」を選択して下さい。

===


===

【ボルト】

種族:キング・コボルト

性別:男

女属性:風


レベル:125

HP:5625

MP:1800

SP:5850

 ※詳細鑑定は、「こちら」を選択して下さい。

===


===

【スラ】

種族:キング・スライム

性別:女

属性:水


レベル:125

HP:25000

MP:5000

SP:5000

 ※詳細鑑定は、「こちら」を選択して下さい。

===


 最初にしては、なかなかいい感じじゃないだろうか?

 ディルがオリジナルの特製結界を張ってくれたおかげで、不死ドラゴンの召喚や武器の取り寄せに使用したDPも、3/4以上を回収することができたし。

 この調子で油断しないように気を付けながら、ゆっくりと着実に繰り返していこう。


「よし! それじゃ3時間の休憩を挟んでから、またパワーレベリングを始めようか!」


 次は俺も、5人の中に加わって、レベル上げに励むことになっている。

 動かないとはいえ巨大なドラゴンが相手なのだ、正直ドキドキしている俺がいた。



(次回に続く)

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