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閑話:「素敵な淑女になってみせるからさ♪」

「……(な~んてね♪ 遊んでくれてありがと、ダンジョンマスター♪ 大きくなったら、ボクのことを女性として考えてくれるんでしょ? ボク、頑張ってレベルを上げて人間の淑女っぽく進化するから、かなり期待してて良いよ~。ニシシッ(///∀)~♪ )」


 そう言ってボクはだんじょんますたーにネタ晴らしをして、抱き着いていた腕を解いてから急いで離れる。

 だんじょんますたーがポカンとした顔を一瞬浮かべていたから、ボクの悪戯は大成功だ♪


「……(スラちゃん様、グッジョブ!)」

「……(ナイスです、スラちゃん様♪)」

 みんなのいる場所に戻ってきたボクを、銀色スライムの銀ちゃんと桃色スライムの桃ちゃんが、嬉しそうに身体をプルプル震わせながら迎えてくれた。


 この2人は、ボクの部下の中でも選りすぐりのスライム。頭の回転が早いし、何よりもコアマスターに対する忠誠心が限界突破している優秀な子達。

 そんな2人に、ボクはぼそりと『とある有力な情報』を流してみる。

「……(だんじょんますたー、押されると弱いみたいだから、銀ちゃんと桃ちゃんも可能性あるかもよ?)」

 そう、銀ちゃんと桃ちゃんは、さっきのだんじょんますたーの宣言で、だんじょんますたーに恋をしてしまったのだ。


「……(ぎ、銀には、む、むりだよぉ……(///Δ)ノシ  )」

「……(も、桃もちょっと難しいかも……(///Δ)ノシ  )」

「……(それで良いの? 銀ちゃんも桃ちゃんも、だんじょんますたーのこと、好きなんでしょ?)」

「「……(うぅ~、そうだけれど……でも、()は、下級スライムだから……)」」

 そう言ってへにゃーと崩れ落ちる銀ちゃんと桃ちゃん。

 2人はまだレベルが低いから、ボクみたいに人型には成れない。だから多分、それを気にしているのだろう。


「……(でもでも、ボク達スライムは、ペット枠として可愛がってもらえるよ? 最初はそっちの路線で攻めて、レベルを上げてから人型になって迫っちゃうのはナイスアイディアだと思わない? だんじょんますたーは押しに弱いみたいだから――愛着が湧いたペットが美少女になって迫っちゃうと、『色々な意味で』いっぱい可愛がってもらえるかもだよ?)」


「……(ふ、ふぇぇっ! そ、そんな破廉恥なこと、銀にはできないよぉ……(///ω)×  )」

「……(もっ、桃も、多分できなぃよぉ……(///ω)×  )」

「……(この、ヘタレスライムどもめッ!)」

「「……(うぐっ!? へ、ヘタレじゃないもんっ!!)」」

 ボクの口から思わず口からこぼれた罵倒の言葉に、銀ちゃんと桃ちゃんは(体の一部)を尖らせている。

 でもさ、ここで言わないでいつ言うのさ?


「……(できない、無理、下級スライムだからッ!? そんな言い訳をしていたら、いつまで経ってもだんじょんますたーに関心を持ってもらえないよッ!? それでも良いの!?)」

 ボクの叱責に、銀ちゃんと桃ちゃんの尖っていた口が元に戻る。

「……(良くない(TΔT) )」

「……(桃も、良いとは思わないよ……(TΔT) )」

「……(そうだよね? だから、まずは勇気を出して――突撃(あいさつ)しておいで♪)」

 そう言ってボクは視線をだんじょんますたーの方へと向ける。つられて同じ方向を向いた銀ちゃんと桃ちゃんの目には、だんじょんますたーの前に出来ている『挨拶待ちの魔物の列』が映っていることだろう。


「……(あの列にすら並べない――とは言わないよね? 2人は、そんなヘタレじゃないもんね?)」

 なるべく優しく聞こえるように気を付けながら、2人の背中を押してあげる。すると、銀ちゃんと桃ちゃんは恥ずかしそうに小さく震えてから、ほぼ同時に嬉しそうな声をあげた。

「「……(うんっ♪ だんじょんますたーに、挨拶に行ってくる!!)」」


 何かが吹っ切れたような、活き活きとした様子の2人。

 ぴょんぴょんと跳ねて『挨拶待ちの魔物の列』へ並ぶ銀ちゃんと桃ちゃんを眺めながら、ボクはちょっとだけ小さなため息を吐いた。

「……(あの様子なら、2人とも大丈夫かな?)」

 銀ちゃんと桃ちゃんは人懐っこい性格だし、だんじょんますたーも気に入ってくれると思うんだ。ペット枠には入れなくても、視界の中に居場所を作ることは出来るだろう。でもボクは――


「……(ボクが人間に変身できるのは、いつ頃になるのかな。コアマスターの情報だと、過去に人間に擬態できたスライムは最低でもレベル160は超えていたみたいだから……道のりはかなり遠いかも。才能が無いスライムは、どんなにレベルを上げても人間に擬態できないって言われたし……って、マイナス思考はダメだよ、ボクっ!!)」


 自分のほっぺたを両手で軽く叩いて、下向きになった気持ちを入れ替える。

「……(ボクはボクなんだ! 今はまだスライムだけれど、人型にだって成れるんだぞ! 才能は絶対にあるはずなんだ! だから暗い気持ちになんてならないで、前に進むことだけを考えるんだ!)」

 そうじゃないと――ううん、マイナス思考は止めるって決めたんだ!

 そう、ボクはボクの意志で、決めたんだ!


 ボクが生まれたあの日に『夢は見ないと叶わないんだよ?』ってコアマスターが教えてくれたから。

 いつも夢を見ながらも、一生懸命に努力をしたコアマスターをボクも近くで見ていたから。

 ボクは「異世界の優しいおにーさんを召喚して、私ちゃんのDMになってもらうのです♪」と毎日のように口に出して、実際に叶えることができた幸せなコアマスターの配下なんだから。

 絶対に、そう絶対に、ボクは「人間に変化できるスライム」に進化してみせる。今はまだ遠い遠い道のりだけれど、ボクは、必ず夢を叶えてみせる。


「……(だから、だんじょんますたーも期待して待っていてね? だんじょんますたーを振り向かせるような、素敵な淑女になってみせるからさ、ボク♪)」


 そう呟いてみたら――ボクの願いが叶う日が、そう遠くない未来にやって来てくれるような気がした。そしてボクの心に、熱く燃える『何か』が湧いてきた。

 この熱い何かの正体を、ボクはいつかきっと笑顔で見つけてみせるよ♪



(次回に続く)

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