第48話:「ボク、頑張って進化するから、期待してて良いよ♪」
「……(だんじょんますたー、ボクのお〇ぱいは好き? 嫌い? 揉んでみる?)」
囁くように小さな声だったけれど、かなり大胆な提案をしてくる水色幼女。
この子も、かなりキャラが濃さそうだ。
とりあえず、俺が誰にでも見境なくセクハラする男じゃないということを伝えるために、ここはやんわりと断っておこう。
「ごめんね、スラちゃんのことは嫌いじゃないんだけれど、流石に胸は触れないよ?」
「……(なんで?)」
子どもの純粋な瞳で俺の方を見てくるスラちゃんに、俺は一般的な常識であろう言葉を口にする。
「好きでもない人に、胸を触られるのは嫌でしょ?」
「……(なんで?)」
子犬のような純粋な瞳。何というのか、かなりやりづらい。
見た目は全身水色のスライムなんだけれど。
この子を相手に、どこまで踏み込んで伝えて良いのか困ってしまう。
「えっと……胸は大切な場所だから、好きな人以外には触らせちゃダメなんだよ?」
「……(なんで?)」
こてんっと首を横に傾げる可愛い女の子。思わず言葉に詰まってしまう。
「そっ、それは……大切なモノって、大事にしたいでしょ? 誰にでも触らせるのはもったいないと思わない?」
「……(なんで? どうして胸は大切なの?)」
そう言いながら、俺に抱き着く腕に力を込める水色幼女。
幼女だから胸は殆ど無いんだけれど、スライムだからサキ姐さんに負けない弾力が俺を襲う。
「そうだね……これは俺の考え方なんだけれど、『大切なモノは特別』なんだ。だから、特別な時や特別な人にしか、見せたり触らせたりしたくないって思うんだ。だって、誰にでも見せたり触らせたりするのは『特別じゃなくなる』でしょ?」
俺の言葉に、スラちゃんがコクコクと首を縦に振る。
良かった、分かってくれたらしい。
「……(うん! よく分かんないってことが、良く分かった!!)」
その言葉を聞いて、思わず力が抜けてしまった。
ヤバいな、幼女を相手に説明することが、こんなにも難しいなんて……。
そんな風に油断していた俺だったけれど、さらに水色幼女の追撃が襲う。
「……(だってボク、だんじょんますたーのこと好きだよ? だから、だんじょんますたーにお〇ぱい触って欲しいもん♪」)
水色の頬を少し青色に染めて、俯き加減に口にしたスラちゃん。
見た目はかなり美幼女だから、何かとっても――犯罪の匂いしかしないです。とてもとても、この状況で胸を触るなんてできません!
それに、周囲の魔物達もどこか楽し気な様子で、俺とスラちゃんのやり取りを遠巻きに見ているし。
「う~ん、胸は女の子にとって、とても大切で特別な場所だから、もう少し大きくなるまで大事にしよう? 大きくなったら、俺も考えてみるからさ?」
ええ、はい、困った時の『先送り』という逃げですが何か?
日本にいた時に、従妹の同級生とかその妹とか、近所の小学生とか職場の同僚の娘さんとか……なぜか年下(16歳未満の小中学生)にばかりモテた俺の十八番ですけれど問題ありませんよね?
この年頃の女の子って、真面目に相手をすると余計に加熱して暴走しまうから……嫌われない&相手が傷つかない程度に相手をしてあげた後に、それとなく先送りするのが一番だと俺は思う。
下手にこじらせるとストーカーになってしまうこともあるし、痴情のもつれで幼女に刺される成人男性とか、軽く社会的に死ねるから俺は嫌だよ。
新聞って怖いよね? 被害者は実名報道されちゃうから……。
まぁでも、実際に10年後に成長しても俺のことが好きなら、美味しく結ko――『おにーさん? 今日は月が綺麗ですよ?』――はい、ディル、ごめんなさい。
俺の思考を監shi――もとい覗kimi――じゃなくて、『共有』しているディルさんからの警告。危ない、危ない、俺は人として口に出しちゃいけないモノを考えるところだった。
今はそう、俺にはディルやエゼルがいるじゃないか!!
そんな風に油断していたのがいけなかったのだろう、スラちゃんがさらなる爆弾を投げ込んできた。
「……(さっきの言葉で、ボク、濡れちゃった♪)」
「ぅ、いや、あの……女の子がそんなことを言っちゃダメだよ!!」
「……(ダメなの?)」
叱られた子犬のようにうるうるとした瞳で、俺に抱き着きながら俺を見上げてくる水色幼女。
可愛い。そう、可愛いんだけれど……かなりやりづらい相手だ。
下手したら、サキ姐さん以上に、この子は手ごわいのかも。
スラちゃんの頭にそっと手を置いて、その髪(の部分?)を優しく撫でる。
「スラちゃん、キミに『ぬ、濡れ――もとい、『その言葉』』を教えたのは誰かな? おにーさんに教えてくれる?」
なるべく責めるようなイントネーションにならないよう気を付けながら、スラちゃんに問いかける。
誰がこんな言葉を教えたのか、『あのえっちなお姐さん』だと簡単に予測がついてしまうのがアレだけれど。一応、スラちゃん本人から証言をとっておくことは大切だと思う。
「……(ん~、自分で考えたんだよ♪ 凄いでしょ? スライムって興奮すると『じこぼーえー』のために、全身が濡れてヌルヌルするんだ♪ 剣や弱い魔法なら弾くことが出来るんだよ~♪)」
少し自慢げな顔で嬉しそうに言ったスラちゃんに、思わず俺は膝から崩れ落ちてしまう。
「……(大丈夫!? ダンジョンマスター、元気出して!!)」
慌てたようなスラちゃんの声を真横に聞きながら、自己嫌悪に襲われる。
ああ、俺、なんて汚れている大人なのだろう……。自分の汚さに、呼吸することさえ嫌になる。
俺が膝をついたことで、目線の高さがスラちゃんと同じになる。
「……(だんじょんますたーは、良い子だよ♪ いい子~♪ いい子~♪)」
そう言いながら、俺の頭を撫で撫でしてくれるスラちゃん。その純粋な心に比べたら、俺は何て醜いのだろう。
俺を慰めてくれるスラちゃんが、まるで天使のように見えた。
その瞬間――にこにこっ♪ とスラちゃんが意味ありげに笑った。
「……(な~んてね♪ 遊んでくれてありがと、ダンジョンマスター♪ 大きくなったら、ボクのことを女性として考えてくれるんでしょ? ボク、頑張ってレベルを上げて人間の淑女っぽく進化するから、かなり期待してて良いよ~。ニシシッ(///∀)~♪ )」
サバサバとした中学生くらいの女の子っぽい声で悪戯っぽく言うと、俺のほっぺたに軽くキスをしてからスラちゃんは走って逃げて行った。
……俺は、完全に遊ばれてしまったらしい。まぁ、何というのか――今後の成長に期待かな?
(次回に続く)




