第47話:「ボクのお〇ぱいは好き? 嫌い? 揉んでみる?」
「ぼそっ(コアマスターに飽きそうになったら、おねーさんをつまみ食いして、お口直し&仲直りしてもいいからね♪ おねーさん、期待してあなたを待っているわよ♪)」
本気とも冗談とも取れない声色でそう言うと、俺と1回だけ視線を合わせて微笑んでから、サキ姐さんは飲み物があるテーブルの方へと消えて行った。
……年上(多分)のおねーさん、おそるべし。
「……おにーさん」
「ん? どうかしたの、ディル?」
「……私ちゃん的には、ずっとこうしていたんですけれど……そろそろ、恥ずかしいので――」
ディルにそう促されて気が付いた。俺、ずっとディルを抱きしめたままだ。
「気付くのが遅れてごめんね、俺もずっとこうしていたいけれど、みんなとお話しないとだもんね?」
慌ててディルを解放するのじゃ格好がつかない。だから俺は、あえて余裕たっぷりな様子でディルに回していた腕を解いた。
内心では、めちゃくちゃドキドキしていたのだけれど。
いつもは透き通るような白い頬を、真っ赤に染めたディル。
彼女は、名残惜しそうにもう1回だけ強くぎゅっと抱き着いてから、俺の腕の中を離れて行った。
「えへへっ♪ おにーさんを堪能しちゃいました(///ω)v!」
照れ隠しのように笑顔を浮かべると、隣で大人しく料理と格闘していたエゼルの方へ近づいていく。
そしてエゼルのケモ耳に、こそこそと何かを話していた。
「ごにょごにょ(次は、エゼルさんの番ですよ!)」
「うにゃうにゃ(え~、あんな恥ずかしいことはエゼルはできないぞ? それよりも、この料理美味いのな?)」
「ぼそぼそ(色気よりも食い気ですか? おにーさんに甘えるチャンスを逃がしてもいいんですか?)」
「にゃおにゃお(エゼルは、あまりガツガツしないタイプなんだよな~。あんまり纏わりついても嫌がられるだけだぞ?)」
「がぅがぅ(おっ、おにーさんは私ちゃんのことを嫌がったりなんてしませんっ! ……多分、ですけれど……)」
「みゅーみゅー(まぁ、それよりもこのムニエル食べてみろよ? とっても美味いぞ(≡ω)♪)」
ディルとエゼルが何を話しているのかは分からない。でも、何か女の子2人でとっても楽しそうな話をしているんだろうな~ということは、俺の方から見ていても理解できた。
「さて、俺は俺でお仕事をしますかね♪」
なるべく誰にも聞かれないように、小さな声でぽつりと呟いて気合を入れる。
なぜなら、主役の俺と話をしたがっている様子の魔物達がさっきから俺の方をちらちらと見ているから。全員とまではいかなくても、なるべく多くの配下とコミュニケーションを図っておきたい。単純に仲良くなりたいというのもあるし、今後のダンジョンの防衛や運営に、彼らの力は欠かせないから。
さて、誰から話しかけるかな? と思った瞬間、遠巻きに俺を見ていた集団の中から2人の魔物が俺の方へと向かってきた。
ゴブリンのゴブさんとコボルトのボルトさんだ。
「ダンジョンマスター、先ほどの演説ハ、とても感銘を受けマシタ」
「俺の心も震えました。流石、御嬢のパートナーになられた御方です」
少し片言なのがゴブさんで、心が震えたと言ってくれたのがボルトさんだ。
あと、ディルのことを『御嬢』と呼ぶ言葉からも感じられるのだけれど……この2人やその配下の行動パターン、どう考えてもヤ〇ザなんだよね。まぁ、俺達を立ててくれているうちは、とても助かるのだけれど。
なお今の二人の外見は、RPGでよくある腰ミノ1枚の姿ではない。
新米冒険者なら遭遇した瞬間に撤退するであろう、金属と皮で作られた立派な鎧に身を包んでいる。その容姿も、別にゴブリンやコボルトだからと特別醜い訳じゃない。「角がある小人」や「犬の被り物をした小人」といった感じだから、人によっては多少の不気味さは感じるだろうけれど、俺的には忌避感はゼロである。
多分、地球では妖精や小人として描かれる姿が、このアクアマリンという世界の人型の魔物達なのだろうと感じた。オークみたいな、可愛くない例外もいるみたいだけれどさ、俺のDMの知識によると。
――っていけない、2人と会話をしている途中だった。考え事をしている場合じゃないよ、俺っ!
「2人ともありがとう。俺の希望を叶えるためには、2人の力も欠かせない。まだまだお互いを知らない俺達だけれど、2人に背中を預けてもらえるように俺も頑張るから、よろしくね」
なるべく表情と声に焦りが乗らないように気を付けながら、本心を口にする。
「「御意!」」
短く返事をしてから、ゴブさんとボルトさんが笑顔を浮かべた。
そして2人は、そのまますっと身を引いて、俺の前から去ってしまった。
俺としてはもう少し話をしてみたかったのだけれど、後に控えている魔物達のことを考えての行動だろう。……まぁ今後は作戦会議室などで、たくさん話をすることができるだろうから焦らないでおこうかな。
そんな風に考えていると、魔物達の中から人型の『小柄な水色幼女スライム』が飛び出してきた。
そして、その勢いのまま俺に抱き着いてくる。
「……(だんじょんますたー、ボクのお〇ぱいは好き? 嫌い? 揉んでみる?)」
囁くように小さな声だったけれど、かなり大胆な提案をしてくる水色幼女。
この子も、かなりキャラが濃さそうだ。
(次回に続く)




