第25話:「了解だ♪ それじゃ、打ち合わせ通りにいくぞ?」
「ごめん。もう少ししたら、助けるから――あと3分だけ我慢してね?」
思わず、小さく呟いていた。そして俺とエゼルは走り出す。
「エゼル、急ぎでお願いね?」
「ん? そうだな、女勇者にはできれば仲間になって欲しいからな(≡ω)b」
「うん。たくさん怖がらせすぎるのは、こっちに不信感を抱かせてしまうからね。そこのバランスが難しいんだけれど、さっきの女勇者の反応だと、あまり長くはもたないかも……」
「案外、ビビりなのな?」
「いやいや、つい最近まで命の危険が無い世界に住んでいたんだ。いきなり魔物がいる世界に放り込まれて、勇者として魔物やDMと戦えって言われて――結果として消化液の入っている落とし穴に落ちて……俺でもガチ泣き入ると思うよ?」
「フハハっ♪ そんな水島おにーさん、想像ができないぞ? 水島おにーさんの場合、自力で何とかしちゃう気がするからな!」
「それは、俺のことを買いかぶりすぎだよ?」
そんなことを話しながら、転移魔方陣の前に着く。
青白い光を放っている魔方陣は、正直、かなり不気味な雰囲気を放っている。コレ、本当に乗っても大丈夫なのだろうか?
「お~、罠じゃない転移魔方陣なんて、久しぶりだな~♪」
「エゼルは、転移魔方陣を見たことあるの?」
「ああ。ダンジョンを潰すときに、時々隠し部屋にDCやDM用の魔方陣が設置されていることがあるからな。でも、基本的にはダンジョンの人間しか双方向の転移魔方陣は使えないし、それ以外の転移魔方陣は原則『乗った人間をランダムに、ダンジョン内のどこかに飛ばす罠』だからな」
そこで小さく息を吸って、エゼルが言葉を続ける。
「ダンジョン内でマッピングができなくなるのは、迷宮から出られなくなる可能性が高くなるし、かなり危険だぞ? エゼルもひどい目にあったことが何度かある……(Tω)」
どこか遠い目をしたケモ耳天使はどこかシュールだ。
あまり深く聞かない方が良いのだろうけれど……エゼルのことだから、ダンジョンから出られなくて飢え死にしそうになったり、魔物に囲まれて大変な思いをしたりしたのだろう。
「俺も、他のDMのダンジョンに行く時には、気を付けるよ」
「それが良い。今はまだ力を貯める時だが、これからは他のDMのダンジョンを接収することも考えないといけないからな♪」
そう。体感時間が3時間超の会議の間に、俺達は今後のダンジョン運営についても軽く打ち合わせをしていた。
短期間で俺達が力を付けるためには「他のDMを倒してダンジョンを丸ごと貰うor他のDMを配下に置くor協力関係を作る」という方法が効率が良いのではないかという話にまとまったのだ。
敵対するDMは倒すし、協力できるDMは同盟関係を作る。
もちろん危険もあるけれど、そこはリスクを取らないと始まらないだろう。それに――世界征服を本気で考えるのならば、いつか必ずDMとはぶつかる。
現状で、DM同士の戦いはあまり推奨はされていないらしいが、攻めたからと言って非難もされないらしい。というのも、ほとんどのDCやDMは「ダンジョン協会」という相互扶助組織に自動的に所属することになっているらしく、そのダンジョン協会の方針として『切磋琢磨』という考え方があるからだ。
よって、ダンジョン同士の戦闘や抗争は、一部例外を除いて容認されている。
その例外というのは、「DCが誕生してから530日未満のダンジョンは攻めてはいけない」というルールだ。「いわゆる、初心者の期間は保護してあげましょう。そうしないと、新しいダンジョンが育たないからね?」という考え方に基づいているらしい。
なお、ダンジョン同士の戦いは、DCやDMの娯楽としても楽しまれているとディルが言っていた。
好戦的なDMによる小さな抗争は日常茶飯事。大きな殲滅戦も2~3年に1度は起こっているとのこと。
そして今回、ディルと一緒にDC研修を受けた自立型ダンジョンコアは39名いたらしい。その全員が今頃、500日後に生き残っていられるための力と500日後に戦闘開始ができるだけの力を蓄えているのだと考えると――正直、俺も悠長にはしていられない。
とはいえ、俺達は500日を待たずに他のダンジョンにケンカを売る予定だ。
なぜなら、この500日ルールがある限り「戦闘中も前後も、当事者以外のDMから横やりが入ることが無い」からだ。
それは俺達には大きなアドバンテージになる。
他人のダンジョンを攻めた後、他のDMから攻められることが無いので休息を十分に取ることが出来るし、たとえギリギリの戦いになったとしても、このアドバンテージがある限り、俺達は本当のギリギリラインまで戦力投入が可能になるから。
「他のダンジョンを攻めるの、今から楽しみだな♪」
「ああ、経験者のエゼルがいてくれるから、頼もしいよ」
実際、エゼルが1人いてくれるだけで、中級規模~大規模になりかけのダンジョンまでなら楽勝らしい。
ただし、ダンジョンで生計を立てている冒険者やサポーター、そして彼らを相手に商売をしている人達がいるから――ダンジョン討伐を進める天界の天使でさえも――「有名なダンジョンは潰してはいけない」という独自ルールがあるとエゼルは言っていた。
それはつまり、下手なダンジョンに手を出すと、人間からも天界からも恨まれるということを意味する。
「むっふ~♪ たくさん褒めて良いんだぞ(≡ω)?」
……うん、エゼルがむやみやたらにダンジョンを潰さないように、釘を刺しておくのを忘れないようにしよう!!
そんなことを考えている間に、そろそろ目的地の近くまでやって来た。ここからは、会話を女勇者に聞かれる可能性があるから、冒険者モードに切り替えなきゃ。
「エゼル、後でいっぱい褒めてあげるから――そろそろ、女勇者さんの近くに行くことになる。気を引き締めよう」
俺の言葉に、エゼルがこくりと首を縦に振って、嬉しそうに尻尾をゆらりと振った。
「了解だ♪ それじゃ、打ち合わせ通りにいくぞ?」
(次回に続く)




