四話
本日は既に三話投稿しております。
ようやく異世界人が出てきますので、諦めずに読んでください(切実)。
異世界生活二日目。ボクは朝食を済ませて、これからの計画を立てていた。
「食料事情を解決するにしても、どうすればいいんだろう?」
創り出した紙と、女神サマから貰った"万年"筆――これは正真正銘、万年に渡って書けるらしい――を用意して、悩んでいる。
村々を巡って、畑を活性化するのが一番早いだろう。でも、現在地が不明な今、好き勝手動くのは避けたいのだ。かと言って、代案がある訳でもない……。
リンゴの木と森をバックに、聖堂と街があったら素敵だな。でもそれには緑が必要だ。
やっぱり妄想程度しか出来ないよ〜!
とりあえずボクは、この拠点(暫定)の周りを緑にしようと思う。いつまでも赤茶けた地面と、照りつける太陽は目に悪いからね。
緑化計画を実行するために家を出ると、ハイエナとジャッカルの間みたいな生物がいた。
「うわっ!」
「グルゥゥ……」
びっくりした、めっちゃ唸ってるよ〜。どうしようどうしよう。
額に真紅の宝石がついているものは、例外無く魔物と呼ばれるらしい。このハイエナとジャッカルの間みたいなやつは、それがない。つまり、餌に飢えた肉食獣……。
「……う、うわぁぁあぁああ!!!」
「グルルァァア!!」
ボクは逃げた。運動神経は悪くなかったボクだ。火事場の馬鹿力でかなり早かったと思う。
でも、手負いの獣ほど恐ろしいものはないとは言うもので、瞬く間に距離を詰めてくる。
「来るな来るな来ないでぇ〜〜!」
「ガァァァ!」
「あっ!」
ボクは足をもつれさせて、見事に転んでしまった。
どうしよう、どうしよう、もう目の前まで迫ってるよ〜!
『来ないでぇぇ〜〜〜!』
ボクが無意識に『植物創造』を発動させると、蔦が生み出され、一瞬のうちに獣を捕らえてしまった。
何が……?
ボクは暫く呆然としていた。しかし、状況を理解するととてつもない安堵感によって、力が抜けてしまった。
☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡
さっきはビックリしたなあ。まさか草も生えない土地に獣がいるなんて。これからは注意して生活しないといけないだろう。
柵とか設置した方がいいのかな。
あ、さっきの獣には、肉食獣に必要な栄養素が入った果物を上げてお帰り願ったよ。絶対数が少ない動物をわざわざ減らすよりも、繁殖してくれた方がいいしね。
さて、それじゃあ早速リンゴの木の後ろに森を作ろう。
イメージするのは屋久島。屋久杉を黄金リンゴの木に見立てて、森が広がるイメージ。
『植物創造』
すると直径100メートルくらいの森ができた。
おおお! すごい!
半分は森、半分は街に発展していくといいな。街の部分には暫定として芝生を生やしておこう。
それからボクは、1週間くらい芝生を生やしたり、森の植物を調整したりした。なんと! 森に動物や魔物が住み始めているのだ。嬉しいな。
森から街に来ないように動物や魔物が忌避するにおいの柵も設置してあるし、ちゃんと棲み分けられるといいな。
直径1キロくらいの森と、同じくらいの芝生。その間にあるリンゴの木とボクの家。どんどん素敵になっていく。
でも、誰もこの荒野を通りがからないのが不思議だ。これだけ緑があるのに遠目にも見えないのだろうか。
そんな不安を払拭するように、旅商人がボクの下を訪れたのだった。
☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡
ボクが異世界に来てから1週間ちょっと経った頃、ボクの家の外が騒がしいのに気付いた。
「おー! なんすかコレは。こんなところに森なんてあるんすねー!」
女の子の声だ。良かった、言葉は通じそう。意を決してドアを開けた。
「それにすげー大きい木があるっすよ! うひょー!」
くすんだ金髪の女の子はリンゴの木や森に夢中で、ログハウスやボクには気付いていないようだ。
「あ、あの……」
「この大きい木、なんて言うんすかねー。それに森があるなんてツイてるっす!」
「あの!」
「うわぁ! なんすかなんすかぁ!?」
「ボク、フロラって言うんだけど、何してたの?」
そう。ボクは女神サマから対外用の名前まで用意してもらっている。フロラ・カバリーと言うのが今世での名前だ。意味は分からない。
女神サマ、ポーラサマからは聖女や使徒なんてムダに仰々しい身分を名乗ることを許されている。
「フロラちゃん、すか? 自分、エラって言うっす。自分、旅商人やってるんすけど、たまたま通りかかったところに森があったんで、驚いていたんすよ」
「へぇ。エラちゃんって言うんだ。商人なんてすごいね!」
「えへへ、そんなことないっすよ! それより、フロラちゃんこそ何してたんすか?」
「そこ、ボクの家なんだ」
そう言って、ボクはログハウスを指さした。
「ええ! こんな森に住んでるなんて、フロラちゃんは妖精さんっすか?」
「ち、違うよ!」
ボクは恥ずかしくて、咄嗟に否定した。でも、エラちゃんの勘違いも最もかもしれない。こんな森の一角に居を構えていたら、そんな風に思ってしまうかも。
「なーんだ、違うんすね。でも、こんなところに住んでるなんてやっぱりすごいっす!」
エラちゃんは少し残念そうにしてたけど、すぐに元気になった。明るい性格なのかも。
「エラちゃんは商人さんなんだよね。どんな商品を売ってるの?」
「お、フロラちゃんも何か入用っすか? 自分、干し肉や堅パン、珍しいところだと鉱石なんかも扱ってるっすよ!」
「鉱石かぁ。なにか綺麗なものはない?」
「綺麗な鉱石っすか。それならメノウや晶洞石がオススメっす。」
エラちゃんはそうやって、色々と商品をみせてくれた。
「どうっすか?なにか欲しいものはあるっすか?」
「うん! ボク、ルチルクォーツが欲しいな」
そう言ってボクが選んだのは、透明な石に金色の針が無数に見える鉱石。
「フロラちゃん渋いっすね。それに金運上昇もあるっすし、結構俗っぽいっすね」
「ぞ、俗っぽいって……」
「いやいや、悪い意味じゃないっす」
釈然としないまま、ボクは鉱石を受け取った。
「支払いは現金か現物になるっす」
「じゃあ現物で。植物だったらなんでも用意出来るけど、何がいいかな?」
「なんでもあるんすか?じゃあ、腹痛用の薬草20株と交換っす」
「わかったよ」
ボクは創造を使い、足元に薬草を用意した。――正確には、地面からニョキニョキと生やした。
「これでいいかな?」
「…………な、なにをしたっすかぁぁ!?」
エラちゃんは目をまん丸にして、パチクリと瞬かせてから絶叫した。
うるさい。
☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡
「んー、えっと、ボクは女神サマからこの世界の食料事情を改善するために派遣された、聖女なんだよ」
「えっと、つまり?」
「……神の使徒?」
「どぅぇぇえええ!? それって、かなり偉いって事じゃないっすか! フロラちゃ、様! ははぁー!」
「わあああ!! やめて! 傅かないでー!」
エラちゃんの目の前で『植物創造』を使ったのは失敗だったかもしれない。でも、わざわざログハウスに戻って準備するのも面倒だったし、能力を使うことが当たり前になりつつあったし……。それで傅かれてるんだから世話ないよぁ。
「そ、そそそ、それに! なんすか、あの薬草ニョキニョキは!?」
「女神サマから、この世界の食料事情を解決するために受け取った力だよ!」
「す、すごいっす!すごいっすよ〜! お腹いっぱい食べられるようになるんすねぇ」
エラちゃんは涙ぐみながら、ボクからしたら少しズレたことを言う。これは……ほんとにこの世界では――少なくともこの国では、植物は万金の価値があるんだ。そのくらいの過剰反応だ。
「ず、随分な過剰反応だね。ちなみに、最後に満腹になったのはいつなの?」
「そうすっねぇ……。自分は旅商人なんでそこまで裕福ではないっすけど、週に一度は満腹になれるくらいの収入はあるっすよ。だから最後に満腹になったのは2日前っすね。農民なんかだと、半年に一回くらいしか満腹にならないなんてのもザラっすね」
あれ? たしかに先進国のように毎食満腹生活に慣れてる身からしたら少ない気がするけど、江戸時代とかの飢饉の方が深刻なイメージがあるな。
「この世界の食料不足はどのくらい続いているのかな?」
「んー、聞いた話だと100年前から徐々に、70年くらい前からはほとんど植物は生えなくなっていったって聞いているっす」
「???……聞き間違い、だよね。普通食べ物ってそんなに保存効かない、はず……だけど?」
「平民の自分では詳しくは知らないっすけど、なんでも昔の偉い人が飢饉を予言して、食料の劣化を防ぐ倉庫に詰め込みまくった、って話らしいっす」
「食料の劣化を防ぐ倉庫?」
「そうっす――」
エラちゃん曰く、食料の劣化を防ぐ倉庫は飢饉の予言があったために開発された、時間停止機能付きの倉庫のことらしい。
植物が減り始めた頃から、何でもかんでも倉庫にぶち込んでいたから今日まで耐えられているようだ。しかしその倉庫にしても、全ての村にある訳でもなし、どこもあと10年が限界とのこと。
読者のみんな! けいさんがおかしいとかいわないで! きっと、バカでかい倉庫にバカ少ない人口、バカ多い収穫量だったんだよ(ガバガバ理論)!
「じゃあ、第一異世界人であるエラちゃんにお願いがあるのだけど、聞いてもらっていいかな?」
「お、なんだか商売のにおいがするっすよ〜。儲け話は大歓迎っす!」
ボクは決意新たに、ゲス顔エラちゃんに商談を開始するのだった。
なんか典型的な算数出来ない人みたいでごめんなさい
数字を見ると頭に靄が掛かってよく分からなくなるんです、ほんとごめんなさい
見捨てないで……(ウルウル)




