二話
女神サマとの邂逅を終えて、ボクは異世界に降り立った。ここはエーデ大陸の中央部の荒野、その中央部だ。
右を見ても左を見ても、カラカラに乾いた雑草くらいしか生えてない見事な荒野だ。太陽が照りつけているし、紫外線も強い気がする。昼過ぎくらいだろう。一番暑い時間帯だ。
女神サマから貰った餞別品のひとつ、『後光が見える気がする白ローブ』がなかったら、早々にバテてたよ。
ちなみに、他にも餞別品は貰ったけどそれは使用時に紹介するよ。
それにしても何も無いな。日陰も無いし、早速『植物創造』能力を使って、快適な日陰を作ろう。
出てこい! リンゴの木!
ボクは立派なリンゴの木を"想像"した。やっぱり最初の植物はリンゴだよね! 日陰が出来て、美味しい木の実で、水分も取れて、神話の定番だし。
すると、足元から芽が出てきてグングンと大きくなっていく。
荒地にあるとは思えないほど巨大で瑞々しい樹だ。地上50メートルは下らないそれからは、神聖さすら感じられる。
わ、わあー(棒)。
やりすぎたかもしれない。しかも神話を"想像"したせいか、たくさん実っているリンゴが全部金色だよ。
それにしても、この木の周りだけが少し涼しい気がする。森の中とか滝の近くにいるような気分だ。日陰になってるのに暗くないし、『植物創造』能力ってかなりデタラメなのかも。
金色のリンゴもきっとトンデモナイことになってるんだろうなあ。
ボクはリンゴの木に寄り掛かる形で座りる。
それにしても、50メートル以上ある木からリンゴをどうやって取ればいいんだろう。暑いし少し喉が渇いているんだけど……。
すると、"ゆっくり"と手のひら目がけてリンゴが落ちてきた。
なにこれ!? 物理法則無視した動きをしてたよ!
リンゴを見ると、明らかに光っている。これ、食べても平気なのかな……。ちょっと不安。
でも、剥いてもないのにリンゴの香りが芳しい。ヨダレが出てたし、我慢できない! ボクは思い切って齧り付いた。
しゃくっとした感触を脳が理解した時には、既にリンゴの香りでそれが上書きされる。
「!?」
お、美味しい! 一体、どれだけの寒さで育ったんだろうと思うほど、旨味が凝縮されている。
それに、なんだか活力も湧いてきた。今なら10キロくらい息切れなしで走破できそう。
やっぱりこの能力デタラメだよ! 必要経費とか言って、ごめんなさい! 明らかに過剰供給でした! 許してください、何でもしますから!
いや、でも女神サマが能力の詳細を語らなかったのが悪いよね(手のひら返し)。ボクは悪くない。
でも、一般向けに植物を増やすならこんなデタラメな植物絶対にダメだよね。地球準拠にしなきゃ暴動が起きかねないよ。
地球の植物は何百年も品種改良されてきたから、十分ありえない品質だとは思うけど、豊かな食事が大事だし妥協は出来ない。
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日が暮れてきた。そう言えば寝る場所が無かったな、と思い家を建てることにした。
家を建てるのもカンタンだ。木造の家なら"家の形をした植物"を創造すればいいんだから。それに鉄より硬く、燃えにくくすることだって出来るしね。
うーん、どんな家にしようかな。ここはやっぱりログハウス、かな。
よし、『植物創造』!
すると、芽が出てきて生長して、こぢんまりとした平屋のログハウスが出来た。
ガーデンハウスと呼ばれるタイプのそれより少し大きいくらいだが、今のところひとりだし、管理もしやすいだろうからこの位がちょうどいいだろう。
何よりかわいい!
ボクは女の子初心者だけど、前世では女の子に近付こうと女子力を磨いたものだ。
ドアを開けてログハウス内を見る。と、どうやら電気のようなものがついているらしく、暗くなってきたこの時間でも屋内は明るい。ヒカリゴケとかそういう植物が一緒に生えてきたのだろう。家の植物にだけ寄生する植物なのかも。
玄関ではボクの想像通りに、掃除がしやすいように靴を脱ぐ仕様になっている。
その先は小さめのダイニングとキッチン。奥にはベッドがある。
ベッド横の扉ふたつは、きっとトイレとお風呂だろう。檜風呂に柚子を浮かべたものを想像したし、きっといい湯に浸かることが出来るだろう。
そこ! 匂いが混ざらないか、とか言わない! 贅沢する時は下品になってしまうのは庶民の習性だし、多少はね?
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お風呂にお湯を貯めている間に、夕ご飯を食べることにした。
お湯は、45℃のお湯を貯め込む性質の植物を創造して吐き出させている。熱めのお湯は、入る頃には適温まで下がっているだろう。
さて夕ご飯だが、あのリンゴの木を生み出した時にやりたいと思ったことがある。
ドラ〇もんのカレーが入っている木の実。絶対に上手くいくと、ボクは確信している。
中辛のカレーライス、それが大きな木の実の中にあると"想像"する。
すると、小さな芽から大きな木の実が実った。途端に、役割を果たしたからなのか、芽は枯れて木の実だけが残った。
成功だ! 問題は味だよね。
木の実を割ると、スパイスの爆弾が爆発したように刺激的な香りが部屋を満たした。
ついでとばかりに創り出したのだスプーンを持って……。
「いただきます」
まずはカレーだけを食べる。……美味しい! 香辛料は植物だから当然だけど、肉のようなものまで感じられる。昨今話題の、大豆ミートみたいなものだろう。食べたことは無いけど、それより美味しいに違いない。
当然ライスも植物なので、ボクの能力で異常なまでに美味しく仕上がっていた。
ボクはこんなに美味しいものを食べられない、この世界の住人の食料事情を解決しようとカレーの辛さと一緒に燃え上がるのだった。




