一話
初投稿です。20年弱童貞だった男の妄想を生暖かく見守って下さい。
「世界を救って、どうぞ」
「嫌です」
ボクの目の前の、ソファーにどっかりと座った日焼け肌のお姉さんが訳の分からないことを言い出した。世界を救う? 唐突すぎではないだろうか。
もちろんボクの返答は否だ。具体性も報酬も不明なこんなアヤシイ取引、怖くて出来っこない。
そもそもボクの知り合いにこんな綺麗なお姉さんはいない。相手の素性すら知らずに依頼を受けるほど、ボクは間抜けじゃないゾ。
自己紹介すらしてないのにせっかちなひとだなぁ。
「お姉さん、依頼の前に自己紹介お願いします」
「しょうがないね。私の名前はポーラ、職業は女神」
「め、女神?」
「そうよ。ここは神域にある女神の間、男子禁制の大奥。死者の中でも神域まで来られる魂はひとつまみ程度なのよ?」
ええ!? ボク、いつの間に死んでいたんだろう(困惑)。
確かに、神聖な雰囲気のギリシャ建築に似た建物の構成はしてるけど……。装飾が華美になるのはなんて言ったっけ。ヘレニズム、だったかな。
でも肝心なのはそこではなく……。
「ボクは男なんですケド……」
「……えぇ!? 女の子そっくりじゃない!」
「うぅぅ……やっぱりボクは、みんなに性別を間違われる運命なんだ。こんなならいっその事、女の子になりたかったよ……」
なんでボクは、女の子みたいな見た目に生まれてしまったのだろう。死んだという事実より、神サマの世界ですら男として認識されないなんて……そっちの方がショックだ。
「地雷、踏んでしまったのかしら……。ていうか、奥に男の子入れたってバレたら事ね。黙ってないと……(危機感)」
☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡
ボクは赤面しながら、女神サマに謝り倒した。おかげで笑って許してもらえたけど……。人様の前で恥ずかしい行動をしてしまった。気を付けないとなぁ。
「聞いてる〜?」
「アッハイ」
「それでね、あらゆる世界を監視し、必要とあらば人を派遣して安寧を保つのが仕事なの」
ボクは女神サマに、神という職業について説明されている。
なんでも、世界には何度か危機に陥る時があると言う。戦争の激化で人が住めない環境になったり、大規模かつ長期的な飢饉で人口が大幅に減少したり。バイオハザードが起きたり。
人間の技術や、団結力なんてものはあてにならず、世界自体の自然治癒力も期待出来ない。そんなときに、女神サマが素質ある者を『ありとあらゆる世界』から選定し、『能力を与えて』使者としてその世界に送り出すらしい。
仮に地球の人口が20億人を切るような事態になったら、女神サマ含む神々が使者を送り込むこともあるらしい。
地球全体の人口が20億を切らないと何もしないのが、人口増えすぎなんだなって理解させられるよね。
「今回あなたに行ってもらいたいのは、食料難が著しい世界よ」
「まだ了承してないですけどね」
「どうせ地球人なんて異世界大好きなんだし、絶対行くわよ(偏見)」
「ぐっ……そりゃあ否定はしませんけど……」
女神サマにすら異世界大好き認定されるなんて、地球人――特に日本人――の異世界好きは筋金入りなんだなぁ……。
「説明続けるわよ」
ボクが行くとしたら食料難の著しい世界のようだ。植物は限られているし、野生動物は肝心の餌の植物がないため、少数。魔力という、空気中のエネルギーを餌にする魔物にしても、強すぎたりして太刀打ちできないから食料にならないようだ。
そりゃあ、ただでさえ強い魔物にお腹が減った状態で挑んでも、ロクな結果にならないよね。「お腹がすいて力が出ない」は有名な格言だしね。
きっと、食料は国の上層部が好きなように使ってるんだ(偏見)。
鉱物資源は豊富みたいだけど、燃料の植物がないから武器類も作れないみたいだし……。生物って言うのはどうしても植物に頼ってしまうんだなぁ。
「それで、ボクにはどうして欲しいんですか?」
「行ってくれるんだね!?」
「まだ決めた訳では無いですよ。ただ、話だけは聞くつもりです」
「堕ちろ!」
ボクが異世界に行く時には、女神サマが『植物創造』能力を与えてくれるらしい。
この植物を創造するってどういうことなんだろう? 単に植物を生やすだけの能力では無いみたいだし。女神サマは「実際に使えば分かるわ」とはぐらかすばかり。トコトンまでボクをその気にさせるつもりらしい。気になる。
その植物を創造する能力を使って、異世界の食料事情の解決を目指せ、との事だ。
ボクにそんな大層なこと出来るかな……。
「仮に行くとしたら、報酬はどんなものなんでしょうか」
報酬次第では頑張る気にもなる……かも、しれない。モチベーションは大事だよね。
「へ? あ……あ〜、報酬ね。ハイハイ、ちゃんと渡しますよ〜っと」
「いえ、渡すのは当然だと思うんですけど、どんなものをどのくらい頂けるのかを聞いているんです」
「そ、それは……アレよ! アレ!」
「アレ、とは?」
なんだか雲行きが怪しくなってきたなあ。
「だ、だから〜……」
だから? 一体何が貰えるんです?
「……そう、そうよ! あなたに植物を創造する能力を与えるって言ってるじゃない! それが報酬よ!」
ほら! ほら! やっぱりだ! なんかアヤシイと思ってたんだ!
「それは必要経費なのでは?(正論)」
「うぐっ……」
「これは『仕事道具を給料天引きにする悪質企業』の典型ですよ! 仕事で必要なものを社員持ちにするなんて……あいつら絶対に許さん!」
ボクがバイトしてたところも、制服貸与とか求人に書いておきながら、実際は天引きで辞めたら制服はクリーニングまでやらせて回収したからな!
時給700円台のところだったけど、死んでも同じような目にあうんだきっと……。
「な、なによ! だったらどうして欲しいのよ! そんなに欲しいものがあるならなんでも言ってみなさいよ!」
「ん? 今、何でもって」
「そうよ! なんでもよ!」
「じゃ、じゃあ……ボクを正真正銘の女の子にしてください(迫真)!」
い、言ってしまった……。なんでもって言っていたとはいえ、コンプレックスを直して欲しいなんてボクちっせぇぇ……。
「……それで、あなたは『正真正銘の女の子』になれれば、異世界に行ってくれるんだね?」
「は、はい。それさえ叶えて貰えるなら喜んで行かせてもらいます」
「堕ちたな」
そんな訳で、ボクは異世界で食料事情の解決をすることになった。
不安は尽きないけど、報酬も前払いだし精一杯頑張らなきゃ!
お楽しみいただけましたでしょうか?
この作品に淫夢要素はありませんので、悪しからず。
ところで皆さんの中にも、悪徳バイトに出会ってしまった人はいるのでしょうか?
今後とも無職童貞引きこもりと現人神転生をよろしくお願いします!




