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その5 子曰く、千乗の国を道むるには、事を敬みて信あり

なんか思ったよりまじめな感じになってしまった。

「【()(いわ)く、千乗(せんじょう)の国を(おさ)むるには、事を(つつし)みて信あり、用を節して人を愛し、民を使うに時を(もっ)てす。】」

 

 先輩が今日の教えを提示する。


「で、先輩これはどういった教えなんですか?」


「うむ、よくぞ聞いてくれた。これはね『孔子先生が言うには、諸侯の国を治めるには国政を真面目に取り組み民の信頼を得、国費を節約して人々に対して思いやりを持ち、民に労役を課すなら農業の妨げにならないようにするといったような時期を選ばないといけない。』ってことね」


「なるほどです。で、これにも何かあるんですか。特に問題ないような気がしますが」


「うーん。まあ問題ないのかもしれないんだけどさ、私的にこれ現代日本に当てはめるとちょっと微妙な気がするのよね」


「はあ。で、具体的にどう微妙なんですか?」


「なんというか、これだけじゃ国が回らないっていうかなんというか」


「はあ……」


「まあわかりやすいところを言うなら、一回始まった事業ってそのあとにやっぱり不必要だったってことになってもなかなかやめられないものじゃない。お金を節約するってことなら即刻辞めるべきなんでしょうけど、でもやめたらやめたで今までのはなんだったんだってことになっちゃうじゃない?」


「……確かにそうですね。ムダとわかっててもやめられないものってありま

すね」


「でしょ!例えば道路工事とか、途中で辞めるとかよっぽど何か問題がないと基本ムリじゃない。だから言い方は悪いかもしれないけどパフォーマンス的なものってのも時と場合によりけりなんじゃないかなぁって思うわけよ」


「まあ、こういうのって難しい問題ですよね」


「そうよね。まあ、本当は完全に無駄を省いて節約ってのがベストなんだろうとは思うんだけど、そういうムダな必要なさそうなのもある意味で必要なものなんじゃないかなって思うわけよ」


「はぁ、今日はなんかほんとに大真面目に議論しましたね」


「私はいつだって真面目よ!まぁでも、いつもと毛色が違うのは認めるわ」


「いやー、たまには有意義に時間を過ごせたなぁって思います。……で、今日の本当の議題は?」


「あ、やっぱりばれた?」


「当たり前じゃないですか。だって先輩ですよ。」


「だって先輩ですよの意味が分からないんだけど……。まあいいわ。前振り

はこのくらいにしてさっそく今日の議論いってみよー!」


「今までのただの前振りだったんですか……」


 こうして、さっきの前振りこそ論語部らしい活動だろと思いつつ今日の真

(?)の議題が話し合われる。





「さっきも言ったと思うけど一見ムダと思われるようなことにお金を使うことも時と場合によっては必要なのよ!」


「はい、それがどうかしたんですか?」


「うむ、琴浦部員よ、よくぞ聞いてくれたわ。担当直入に言うとね……毎年

うちの部費が少なすぎるのよ!」


「ん?」


「わかる?ここは現代日本なのよ!ちょっとくらいお金を流してくれたって何の問題もないじゃない!」


 先輩がよくわからないことを自信満々につげる。


「……うん、さっぱりわかりません」


「いいこと、必要なさそうなとこにお金を回すことはもはや必要悪といって

も過言じゃないわ!」


「……それは過言だと思いますよ」


「黙りなさい琴浦部員!あなたもこの論語部の部員なんだからもう少し部の

ために貢献しようと思わないの!」


「……そういうのはもうちょっと実績をつくったうえで言うべきセリフだと

思いますよ」


「はっ、実績なんて私がいるんだから十分じゃない」


「なんなんですかその変な根拠は」


「とーにーかーくー、あなたも部員なんだから何か協力しなさいよ」


 何かって……。


「むしろ僕としてはこんな活動実績もなさそうな得体のしれない部に予算をつけてくれてることがすでに驚きなんですが」


「そんなことはどうでもいいのよ。今重要なのはお金が少なすぎることよ!」


「ところで実際どのくらいもらってるものなんです?」


「そうね。1つ言えることはこの学校の全部活の中で1番少ないわ」


「……妥当じゃないですか?」


「全然妥当じゃないわ!これじゃあ何もできないじゃない!」


「そうですか。具体的に先輩は何かしたいこととかあるんですか?」


「もちろんよ!具体的には私の素晴らしい知性を広めるために……」


「はい、お疲れ様でしたー」


 聞いててバカらしくなった。


「わわ、待って待って琴浦君。冗談だから。冗談だから!」


 帰ろうとする僕をあわてて先輩が引き止める。

 しょうがないので元の席に戻りつつ改めて聞く。


「で、具体的に何に使うんですか?」


「まあ、色々と部室に置く本とか資料とか欲しいなって。今部室にある本も

大分古いものだし、それに論語を知る上で中国史の資料とかもあった方が便利かなーって」


「思ったより普通の要望でしたね」


「別に私だって常識はずれな要望がしたいわけじゃないわよ。まあ、なんというかせっかく琴浦君っていう新しい部員も入ってくれたことだし、必要になるかなって私も考えたわけよ」


「……その、なんというかありがとうございます」


「ちょっとやめてよお礼なんて。なんか恥ずかしくなるじゃない」


 そういう先輩の顔はほんのちょっとだけ赤くなっているような気がする。


「じゃあなおのこと部費を上げてもらうようにしないと。ならやっぱり論語部の実績を上げる必要がありますよね。実績を上げるにはどうしたらいいんですかね?」


「うーん、無難に文化祭の時展示とか文集でも出す?」


「まあ、妥当なとこじゃないですかね」


「よし、長期的な目標が決まったとこで次は目先の予算会議についての話し

合いよ!」


「はい、今日は付き合いますよ」


 こうして、今日の部活も過ぎてゆく。


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