第26話 溢れ出る難民と、山賊の砦(その4)
グラニート山の険しい山道を登りきった一向は、木々がまばらになった高台から、眼前にそびえる中規模の要塞(山賊砦)を見下ろしていた。
「ここから攻めるのか……」
ロッシュが呟くと、ラージは不敵に笑いながら胸を張った。
「あぁ。数ヶ月前、俺たちがこの砦を初めて攻略した時につけた傷がまだ残っててよ。あそこの木壁なんざ、修復が追いついてねぇからあちこちボロボロのスカスカだ。だから正面から突撃するのと同時に、裏手から物見櫓への侵入も余裕でできるのさ」
――かつてラージたちが刻んだ「攻略の爪痕(手抜き工事)」が、皮肉にも今回のスムーズな侵入経路を作り出していた。
「す、凄いな……さすが『勇者』ラージ」
ロッシュが素直に感心すると、ラージは「わはは、任せとけって!」と得意げに胸を叩き、エルたち他のメンバーも「まあ、それなら裏手からこっそり入るのも簡単そうね」「ラージの武勇伝もたまには役に立つじゃない」と納得した。
そうとは知らず、ラージは意気揚々と作戦の続きを告げる。
「よし……ロッシュ。お前は裏手にまわり、冒険者のみんなが正面から突撃したら物見櫓を占拠しろ」
「お、おう!」
「占拠したら櫓の銅鑼を鳴らせ。それで奴らは挟み撃ちだと混乱するハズだ。後はパニックになった奴らを、一人で二人以上倒せば完了だ」
「ふ、ふたり……(ゴクリ)」
下級魔法しか使えない自分に「二人討伐」はなかなかハードルが高いな……と生唾を飲み込みつつ、ロッシュはラージの作戦通り、見つからないように慎重に忍び足で砦の裏手へと迂回した。
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「ここから登るんだな……」
不気味にそびえる物見櫓のハシゴを見上げ、ゴクリと唾を飲み込むロッシュ。
すると、すぐ真横からワクワクした弾んだ声が聞こえた。
「ドキドキするね!」
「なんでいるんだよっ!?」
驚いて飛び上がりそうになるロッシュを、金髪の少女に擬態したテンペスタがクリクリとした目で見つめ返してくる。
「だってー、ロッちゃんと遊びたいんだもん!」
「シーッ! 声が大きい! 静かに!」
「ね! ね! 何するの!?」
「分かった、分かったから! ……いいか? ラージたちが正面から突撃したら、俺たちはあの物見櫓にこっそり登るんだ」
「うんうん!」
言葉を噛み砕いて説明するロッシュに、テンペスタは理解したのかしていないのか、元気よく深々と首を縦に振るのだった。
――それから少しして。
砦の正面から、ラージたちの勇ましい雄叫びが轟いた。
「突撃ぁーーっ!!」
その鬨の声に呼応するように、物見櫓にいた山賊の慌てふためく絶叫が響き渡る。
「て、敵襲ーーっ!? 正面から野郎どもが攻めてきやがったぞ――っ!!」
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