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第20話 交錯する策謀と、明日の約束(ラスト)

「あれ? 船はどこだ?」

「ふふーん、今日はこれだよー!」


ラクリマが胸を張って指し示した海面から、ボコボコと盛大に泡を立てて――巨大なタコの魔物がぬぅっと姿を現した。


「「「ぎゃあああああ――っ!? 魔獣だぁ――っ!!」」」


これには港中の人々が驚愕し、恐怖からその場で尻餅をついたり、慌てて逃げ出そうとパニックに陥る。

だが、その中の一人が「いや、待てよ……ここヴェルダンはもう魔王領になったんだから、わざわざ逃げなくてもよくね?」と冷静に呟いた。それを聞いた周囲の人々も「あ、たしかに」「まあ、魔王軍の領地だし大丈夫か……」と妙に納得し、誰一人逃げるのをやめて何事もなかったかのように元の作業へ戻っていくのだった。


「おっ、タコ助! 久しぶりだな!」

「きゅきゅーっ!」


ロッシュが気さくに声をかけると、タコ助は嬉しそうに何本もの手足をクネクネと動かして応える。


「って、船ってまさか……このタコ助に乗るのか!?」

「だって……昔、みんなでよくこれに乗って遊んでたから……」


ラクリマは、シュンと両手を合わせながら今にも泣き出しそうな潤んだ目を向けてくる。


「わ、わかった、わかった! 船はタコ助だな! う、嬉しいなぁー!」

「うわーん! よかったぁ、喜んでもらえてよかったよー!」

「結局泣くのかよっ!」


やれやれと頭を抱えるロッシュの横で、レガリアがのんびりと手を振る。


「じゃ、アーシはここで待ってるからぁ。いってらっしゃぁ~い」


こうして、タコ助の背中にはロッシュとアストラゼノスが乗り込み、ラクリマは巨大なシャチの魔物の背にまたがって海面を進むことになった。


「いやぁ、懐かしいね。昔を思い出すよ♪」

「たしかゼノス、あの時タコ助から海に落っこちたよな」

「あははっ、あの時は不意打ちでテンパっちゃって、翼の存在すら忘れてそのまま落っこちちゃったんだよね」

「あの時は焦ったなぁ……っておい、ラクリマ! 思い出したぞ!」

「えっ、なになにー?」

「俺、ラクリマと違って水中で息ができないのに、昔無理やり海の中に引っ張っていっただろ! あの時マジで死にかけたからな!?」

「うえーーーん!! ごめんなさーーいっ!」


大粒の涙をボロボロとこぼすラクリマに、ロッシュは慌てて「おい、さらに海の水がしょっぱくなるんだから泣くな!」とツッコミを入れる。


「で? 肝心の船釣りだけど……どうやって釣るんだ?」

「ふふ、そこは任せて! ラクリマ!」

「はいはーい!」


ラクリマが涙を拭いて元気よく手を挙げると同時に、波がざぷんと大きく波立った。

――次の瞬間。海中から無数の魚や海の魔物たちが次々と姿を現し、なんと自ら美味しそうな魚を口に咥えたり、手掴みでタコ助の周りをぎっしりと取り囲み始めたのだ。


「って、これじゃあ釣りにならないだろ!!」

「あははっ、たまにはこんなのんびりしたデートもいいじゃん♡」

「……。……ったく、まぁ、たまにはいっか」

「デート♪ デート♪ 楽しいねーっ!」


釣竿を振る必要すらないシュールすぎる状況に呆れつつも、アストラゼノスとラクリマに囲まれたロッシュは、波に揺られながら穏やかな船釣りデートを満喫するのであった。

お読み下さりありがとうございます!

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