地下室の冷たい光と、追放の宣告
カチャリ、と重い鉄の鍵が閉まる音が響く。
大きな公爵家のお屋敷の一番深い地下にある薄暗い部屋。
そこが、私――エレナの部屋だった。
窓はなく、おひさまの光は届かない。ベッドすら置いていない。
固くて冷たい石の床の上で私はいつも小さな体を丸めて眠っていた。
私には、生まれつき不思議な力があった。
庭の枯れてしまった花に触れると、パッと綺麗に花が開く。
飛べなくなった傷つきの小鳥を撫でると、一瞬で羽が治って元気に飛び立っていく。
でも、お父様はそんな私を恐ろしいものを見るような目で見つめこう怒鳴った。
『気味の悪い呪いめ! お前のような不気味な子は、我が公爵家の恥だ!』
お父様は私を地下室に閉じ込めた。
朝になっても誰も「おはよう」なんて言ってくれない。
お腹が空いて泣いていても、もらえるのはカビの生えた硬いパンの耳と濁ったお水だけだった。
たまに地下室から出されても、待っているのは冷たい仕打ちばかりだった。
二歳年下の妹のリリアは、私が大切にしていたお母様の形見のガラスのペンダントを笑いながら奪い取った。
『お姉様みたいな呪われた人に、こんな綺麗なものは似合わないわ!』
パリン、と音を立てて砕け散る透明なガラス。
私の目の前でそれを踏みにじり、勝ち誇った顔で笑う妹。
婚約者だった王子様も、助けを求めてすがりつく私を見てクスリと冷たく笑った。
『そんな汚い手で僕の服に触るなよ、無能の呪い子。リリアの方がよっぽど愛らしくて素晴らしい。』
誰も私を抱きしめてはくれなかった。
どんなに「良い子にするから」「お手伝いをするから」と頑張っても、誰からも優しい言葉をもらうことはできなかった。
「私なんて、生まれてこなければよかったのかな……」
誰もいない真っ暗な地下室で、私は一人で膝を抱え、ポロポロと涙を流した。
そして、あの大雨が降る日。
妹が「お姉様に宝物を盗まれたの!」と嘘をついた。
一度も私の話を聞いてくれなかったお父様は、私の腕を強く掴み、引きずり回した。
『もう限界だ! お前のような価値のないゴミは、二度と我が家の敷居をまたぐな!』
破れた薄いドレス1枚。靴すら履かせてもらえず、裸足のまま。
私は馬車に押し込められ、王都の外れにある「呪われた森」の入口へ放り投げられた。
ドサリと冷たい泥の中に倒れ込む。
『森の魔物に喰われて消えてしまえ!』
捨て台詞を残して、馬車は去っていった。
雨が容赦なく私の体を打ちつけ、体温を奪っていく。
(ああ、これでいいんだ……。私がいなくなれば、みんな幸せになれるんだもの)
悲しさよりも、どこかホッとした気持ちだった。
私は冷たい雨の中、泥だらけの手をぎゅっと握りしめ、そのまま意識を失ったのだった。
新作連載はじめました(^^)/
よろしくお願いします。




