5-1-5 俺は栗栖と姉の口論を止められない
「お前ら、祭りを楽しむ準備はできたか!?」
「いえーい!」
「よろしい、これより荒波高校文化祭を始める。野郎ども、かかれー!」
文化祭実行委員長のその掛け声とともに文化祭が始まる。
俺と栗栖は教室に戻ってそれぞれ用意された更衣用のスペースで出し物用の衣装に着替える。
俺達のクラスの出し物は俺たちが着替え終わればいつでもできる体制になっている。
「いよいよだね」
「ああ・・・・・・・・・とちりそうになったときは頼むよ」
「ふふ、任せて」
サムズアップをする栗栖。
「まずは参加者を集めよう。これから頑張ろう」
「おう」
俺と栗栖は入り口に立ち
「フィーリングカップル参加者募集中でーす!ぜひ来てください!」
と参加者を募集をしているとあっという間に参加者が集まった。
なので早々に募集を締め切って最初のフィーリングカップルが始まる。
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「最初の時間が終わったー」
栗栖が背伸びをしながら言う。
「結構盛り上がったね」
「ああ。だがカップル成立は一組だけだったな」
「それはしょうがないよ。じゃ、また次の時間ね」
栗栖が教室から出ていこうとすると
「あれ?外がやたら騒がしいけどどうしたんだろう?」
といって立ち止まる。
外に明らかに先ほどより人だかりができている。
そしてその目線は教室のほうを向いていない。
ん?もしや?
「栗栖、ちょっと待ってて」
「え?うん」
教室を出て人だかりができている方向に行く。
教室前の多数の生徒の人だかり。
その原因は
「あ、健くん!」
俺の姉だった。
「みーつけた♡」
俺の姿を見つけるやいなや生徒たちを押しのけて俺のほうへと駆け寄り抱きしめてくる。
「姉さん、来ないでくださいと言ったじゃないですか」
「言っても来るってわかってたく・せ・に」
それはまぁそうなんだが・・・・・・・・。
そういえば
「そもそも私クラス教えてませんよね?どうやって私が所属してるクラスを見つけたんですか」
「一つ一つ教室を回ったんだよ。そしたらこんなことに」
なるほど、姉が俺のクラスを探してるうちにこんなことに。
こうなるってわかってたから昨日あんなことを言ったのだが・・・・・・・。
「誰だよあいつ、あの人に抱き着かれるなんてうらやましい」
「私のお姉さまを奪うなんて、許せない」
で、俺の姉は校門くぐってからここに辿り着くまでに一体何人の生徒を篭絡したんだ。
そして怖い、怖いよそこの女生徒。
「アンタ、お姉さまの何なの?
お姉さまとなれなれしく話して」
「ふふん、知りたい?なら今ここにいるみんなに教えちゃうね。
彼、伊良湖健一郎くんは、わたしの彼氏だよ!」
少しの静寂の後
「「「「「な、なんだってーーーーーーー!」」」」」
姉の周りにいた全員が驚嘆の声をあげる。
「嘘ついちゃダメですよ、お姉さん」
周囲の絶叫が終わった直後栗栖の声が俺の真後ろから聞こえる。
「ん?何のことかな?」
「とぼけないでください。伊良湖はお姉さんの彼氏なんかじゃないじゃないですか」
「それはあなたも同じでしょ?栗栖さん」
姉がそう言った瞬間
「え?どういうこと?」
「栗栖って伊良湖と付き合ってるんじゃないの?」
と周囲の生徒の中にいた俺のクラスのヤツが疑問の声を出す。
だが一人の生徒が
「いやちょっと待て。
よくよく考えたらそもそも陰キャの伊良湖と学校一のギャルの栗栖と付き合ってること自体がおかしいと思わないか?
だから前に栗栖がした宣言は伊良湖が栗栖の弱みを握って無理やり言わせたんじゃないか?」
という根も葉もない推測を立てる。
すると
「なるほど。だけどそれだとあの美人なお姉さんにつっかかる理由が説明つかない」
「それも恐らく伊良湖に指示されてやってるんだろう」
根拠が全くない憶測が一人のクラスの男子によって展開されてるんだが。
だがそれをよそに二人の言い合いがヒートアップする。
「残念ですがアタシはもう実質伊良湖の彼女ですから。
一緒にお風呂に入ったりキスしたり、一通り恋人同士でやるようなことはしましたし」
「残念だけどわたしは健くんと栗栖さんよりはるか前にそういうことをしてるんだよね」
「先越されて悔しいからって見栄張るのはどうかと思いますよ」
「ふふ、認めたくない気持ちもわかるけど全部如何ともしがたい事実だよ」
そうして姉と栗栖の言い合いは延々と続く。
俺が止めようとしても
「健くんは黙ってて」
「健一郎は首突っ込まないで」
と突っぱねられる。
俺も当事者なのに・・・・・・・・・・。
そんな言葉ももはや二人に届かない。
もはやこの場にいる誰も収拾をつけられなくなったとき
「生徒会よ。これは何の騒ぎかしら」」
綾瀬先輩が二人の言い合いの現場に現れる。
「多数の生徒から口論してる二人がいるって報告が来てたのだけど状況を教えてくれるかしら」
「実はかくかくしかじかしくしくめそめそで」
「そう・・・・・・・わかったわ。私がきちんと止めるから安心して」
俺の証言を聞いた綾瀬先輩がそう言って二人に近づいていく。
「生徒会です。今すぐ口論をやめてください」
綾瀬先輩の一言で口論がぴたりと止まる。
「それ以上はほかの方のご迷惑ですので」
綾瀬先輩が諭すように言うと
「すみませんでした」
「申し訳ありません」
と二人が綾瀬先輩に謝罪する。
「事の顛末をお聞きするためお二人と伊良湖くんには生徒会室に来ていただきますがよろしいですね?」
綾瀬先輩の言葉に二人と俺はわかりましたと言う。
「ご協力ありがとうございます。では私についてきてください」
俺と二人は綾瀬先輩の後について生徒会室へと向かう。
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