7-1-5 俺の綾瀬先輩の家での生活がついに始まる
綾瀬先輩の家の玄関にて。
「本日から1年間お世話になります。
伊良湖健一郎です。よろしくお願いいたします」
「「こちらこそよろしくお願いします」」
俺と綾瀬先輩、そして彼女の父典史氏は互いに挨拶を交わす。
父も俺に続いて挨拶を交わす。
「健一郎くん、今日からよろしくね。
まずは部屋の場所を案内するわ。荷物を運ぶのはそれからにしましょう」
「わかりました」
家に来て最初、俺が住む部屋と部屋がまでのルートは当然分からない。
そのため俺は綾瀬先輩に今日から俺が過ごす部屋へ案内をしてもらう。
父には玄関に荷物を置いてもらうように言ってからだ。
「ここが今日から健一郎くんが過ごす部屋だよ」
そう示された部屋は見たことがある部屋だった。
その部屋は綾瀬先輩の部屋だった。
「ここですね。わかりました。この部屋に荷物を入れますね」
「ええ。もし持ってきた荷物が入り切らなかったらこっちの部屋に入れてね」
俺がこれからの1年を過ごす部屋についてあえて何も質問をせず綾瀬先輩にまたついていく。
荷物が入りきらないときに荷物を入れる部屋を教えてもらった後玄関に戻る。
そして父が玄関に置いてくれた荷物を何度も往復しながら持っていく。
「これで全部ですか」
「はい」
「では私はこれで。
健一郎、
そう言って父が帰っていく。
「それでは、まずは私の部屋にある荷物を整理しましょうか。
お父様、よろしいですか?」
「ああ。身辺整理をまず済ませてもらって」
綾瀬先輩が典史氏に一言言って俺を連れていく。
どうでもいいが契約の後詳細な話し合いを行った結果この1年間の同棲に関しては以下のようなルールになった。
1. 今回の同棲において、俺の戸籍は伊良湖家のままとする
2. 住所に関しては出場手続き等の関係もあるので綾瀬家の住所に変更する
3. 引っ越しで綾瀬家に持っていく手荷物・電子機器等に関して特段持ち込みに制限は設けない
4. 俺の精神的及び身体的健康の維持管理等の責任は全て綾瀬家に帰する
5. 1年間の俺のレース出場及びそのマネジメントに関しては全て綾瀬家が決定権を持つ
6. レース及び普段使いで使用する車両は綾瀬家で用意する
7. 連休以外の伊良湖家への帰宅は不許可
8. 俺の行動の一切は綾瀬家が管理する
9. 今回の契約の条件に基づき設置した監視カメラについてはその位置とデータ蓄積サーバの置き場所について立ち合いを行って確認する
10. 7で確認を行った監視カメラの撮影データは両家以外の人間が絶対に閲覧できないような処置をしたうえでサーバにデータを保存する
11. 綾瀬家の中に機密エリアがあるため、そこに許可なく入った場合は法的責任等を追及し必要と認める場合は負う
12. その他の協議すべき事項が出た場合はその都度話し合い決定する
以上の取り決めをしたうえで今日ここに来た。
綾瀬先輩の後ろについて綾瀬先輩の部屋に入った瞬間綾瀬先輩が何か期待する顔で荷ほどきを手伝うと申し出る。
「さて、健一郎くん。
持ってきた荷物を整理しましょうか」
綾瀬先輩がそう言って目の前にある荷物に目線を向ける。
恐らく綾瀬先輩は俺の荷物から何か出てくることを期待しているのかもしれない。
だが綾瀬先輩が期待しているものは一切入ってないし持ってきたPCにも一切入ってない。
なので二つ返事でその申し出を了承し荷ほどきをしていく。
++++++++++++
「なんてこと・・・・・・・・・・
絶対出てくると思ってたものが一切出てこないなんて」
綾瀬先輩が俺の荷物の荷ほどきを終わった後 _| ̄|○ ←まさにこんな感じでうなだれる。
俺はその姿を見てしてやったりと思いながら綾瀬先輩に尋ねる
「綾瀬先輩、俺の荷物から一体何が出てくることを期待してたんですか?」
「それはもちろんアレよ」
「?」
「いえ、なんでもないわ」
俺がニッコリと何のことやらという顔をすると綾瀬先輩はそれ以上言わない。
開封した荷物を綾瀬先輩の部屋の中の俺が使う棚や机に置き終え置ききれないものは指定された場所に置く。
「これでとりあえずの準備は終わりですね」
「まだよ」
「え?」
「まだ終わってないわ」
綾瀬先輩が言う。
俺は綾瀬先輩が言っていることが分からず訊き返す。
「もう終わりましたよね?」
「いいえ。
健一郎くん。いいえ健一郎。
今日から私たちは同棲するのと同時に実質的に家族となるのよ。
いつまでも他人同士みたいな呼び方をするのはおかしいでしょう?
だからこれからは私のことは下の名前で敬称をつけずに呼びなさい。
それが自然にできるようになって初めて準備は終わりよ。
ほら、私のことを呼んでみて」
綾瀬先輩が熱弁する。
俺はいまいち理由が理解できなかったがとりあえず綾瀬先輩のことを下の名前で呼んでみる。
「桔梗」
「もう一回」
「桔梗」
「もう一回!」
「桔梗」
「そうよ。これからはそう呼ぶのよ」
何度も綾瀬先輩を下の名前で呼ぶとそう言って満足する。
「あとは、そう。
これから1年間この家で私と同棲するわけよね。
籍は変えないと聞いてるけれど実質1年間私の家の子になるわけでしょう?
ということはつまり私達は実質姉弟となるわけでもあるでしょう?
だからね、私が望んだ時には"お姉ちゃん"て呼んで私のことを姉として見て欲しいの。
いいかしら?」
綾瀬先輩が恍惚とした表情で俺にそんなことをお願いしてくる。
綾瀬先輩の言ってることを俺は全く理解できない。
俺にとっての姉は静さん以外にいない。
のだが俺は綾瀬先輩の気持ちを満足させるためにはいと答える。
すると綾瀬先輩はとてもうれしそうな笑顔を見せる。
「ありがとう。それじゃあ準備が全部終わったことだし時間も時間だからリビングに行って食事にしましょう」
俺は綾瀬先輩に手を引っ張られ部屋を出る。
こうして俺の綾瀬先輩の家での生活が始まった。
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