5-5-13 俺と綾瀬先輩は海に行く準備をする
「おはよ、伊良湖」
「ああ」
旅行2日目の朝が来る。
旅館で朝食を食べ終わり外に出ると栗栖が旅館の入り口の前にいた。
「こんなところでどうした」
「ん?朝の海もきれいだなって思って」
「ああ、そうだな」
旅館の前に広がる海をお互い何も言わずに見ている。
すると後ろから綾瀬先輩に話しかけられる。
「健一郎くん、まだ黄昏る時間じゃないわよ」
「黄昏てません。そろそろ行くんですか?綾瀬先輩」
「ええ。もう少ししたら。
だから健一郎くんも準備をお願いね」
「わかりました」
綾瀬先輩がもうすぐ出ると言うので俺は栗栖にまたなと言って部屋に戻る。
そして水着等を準備して旅館の玄関まで行くと綾瀬先輩が先に来ていた。
「健一郎くん、こっち」
俺の姿を見つけた綾瀬先輩が手を招くように動かす。
俺が綾瀬先輩のもとまで行くとこっちよ、と言って俺を車まで案内する。
「あれ?これうちのトレーラーですよね?ヒッチメンバーついてたんですか?」
「ええ。バンパーに隠れるように、ほらここ」
綾瀬先輩がバンパーの真ん中を指さす。
そこを見ると確かにヒッチボールと配線をつなぐ口がバンパーに開いている。
「で、PWC載せたトレーラーがあったから姉さんに言って借りてきたと」
「そういうことよ。使いたいって言ったら静さん、快く貸してくれたわ」
「そうですか。一応聞きますけどこの車、950登録してますよね?」
俺が訊くと何それ、という顔をする。
「綾瀬先輩、この車の車検証見せてくれますか?」
俺の求めに綾瀬先輩が応じて車検証を見せてくれる。
「(950)けん引可能な・・・・・・・・・
あ、大丈夫ですね。すみませんありがとうございます」
「大丈夫なの?」
「はい。ちなみにランチングってしたことありますか?」
俺の質問にまたしてもよくわからないという顔をする。
俺が何のことか説明するとないと一言綾瀬先輩が答える。
「姉さんから板みたいなの渡されてません?」
「ええ、渡されたわ。今荷台に乗せてるけれど、それが必要になるの?」
「絶対に必要になりますね。一応あるか確認します」
俺は荷台の中を見る。
すると確かにバイクを載せるためのものとは違うラダーが載っている。
そういえばいつのまにか栗栖のバイクが降ろされてるが昨日の間に作業をしたのだろうか。
「それなら準備はいいということね。なら行きましょう」
綾瀬先輩が運転席に乗り込むのと同時に俺も助手席に乗る。
「まずは・・・・・・・・・食べ物を調達しないとね」
「しかしこの大きさでは駐車場に入りませんよ」
「その時はその時よ」
俺の心配をよそに綾瀬先輩はスーパーまで車を走らせる。
着くと幸い駐車場はそこまで車が多くなかったので端のほうに車を止める。
「何を買うんですか?」
「決まってるわ。肉よ肉」
肉を?あっ・・・・・・・・・・
「・・・・・・・喜んでお供します」
「いい心がけね。それじゃ入るわよ」
綾瀬先輩と一緒に俺はスーパーへと入る。
そして肉や野菜、調味料を購入し荷台に積んでいたクーラーボックスへ氷とともに放り込む。
「それじゃ、海に行きましょう」
「あ、すみません。その前にホームセンターに行ってください」
「ホームセンターに?一体何を買うの?」
「それは着いてから言います」
俺は綾瀬先輩にホームセンターまで連れて行ってもらう。
そしてそこでバケツとスコップを買い荷台に乗せる。
「お待たせしました。それでは海に行きましょう」
「わかったわ」
綾瀬先輩は俺の言葉を聞き海へと向かう。
そして海に着きPWCを降ろそうとするが・・・・・・・・
「進まないわね」
「綾瀬先輩、無駄にアクセル踏まないでください」
海までもうすぐというところでものの見事に車はスタックしてしまった。
それももうすぐ亀という状態まで。
「ちょっと待っててください」
俺はそう言って車を降りる。
荷台に載せたスコップを手に取り砂を掘る。
そして掘ったところにバケツで海水をかけていく。
「綾瀬先輩、トランスファを4Lに切り替えてください。スイッチはセンターコンソールにあります」
「これかしら?えっと、こう?」
「そうです。その状態でじわっと踏んでみてください」
綾瀬先輩がアクセルを踏んでいくと少しずつ進む。
そしてじわりじわりと進んでいく転回がなんとか終わる。
「それではランチングしましょう」
「ええ」
俺は綾瀬先輩に指示を出してランチングをしていく。
そしてそれを終えその後に起ったスタックも対処した後荷物を降ろしていく。
「・・・・・・・・・・・・」
俺は荷物の中にあるBBQコンロを見て少し憐れむ気持ちになる。
荷物を降ろし終えて綾瀬先輩と一緒に大型のタープを組み立て終える。
「それじゃあ水着に着替えましょう」
俺はそれに頷き綾瀬先輩と一緒に更衣室に向かう。
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