5-5-1 俺は姉に怒られたりお願いされたりする
夏祭りから帰る車内にて。
「健くん、いつまでそんな目をしてるの?」
「?」
姉に目について訊かれどういうこと?と尋ねる。
「健くん、目がドロドロに濁り切ってるよ・・・・・・・・?」
「えっ?」
「もしかして自分で気づかなかったの?」
「全く気付きませんでした」
姉にそう指摘され俺はドアミラーを使って自分の顔を見る。
俺には至って普通の目にしか見えないが・・・・・・・・・・。
「いつもこんな目じゃないですか、私」
「いやいや、今日の濁り具合は今まで見たことないよ?」
「そうですか?」
俺は姉とそんな会話をしていると家に着く。
そして部屋に入って甚平を脱ぎ父の部屋に行きそれを返す。
その帰りに祭りを回って汗をかいたので風呂場に入って体を洗っていると後ろから物音がする。
「健くん、お背中お流しします」
物音を感知してすぐに体に付いた泡を流して浴槽に入ろうとする。
だが泡を全部流し切れず姉が入ってくるのを許してしまう。
「大丈夫です、姉さん。すでに洗い終わりました」
「え?でも健くん髪」
「大丈夫です」
「髪洗ってあげるよ!」
姉の誘いを断り浴槽に入ろうとすると姉に腕を捕まれ制止され、無理やり椅子に座らされる。
「いいですよ、姉さん。無理に洗おうとしなくても」
「わたしが洗いたいんだよ。ほら、お姉ちゃんに任せて」
姉が俺の髪を洗い始める。
「痛くない?」
「大丈夫です」
そして姉に髪を洗われ、泡を流してもらった後先に入ってと姉に言われ入る。
少しの間ぼーっと湯舟に入っていると姉も体を洗い終え湯舟に入ってくる。
「健くん、前にいって」
姉に言われ前に出ると後ろに姉が座って入る。
そして俺の身体を抱き寄せ後ろからぎゅっと抱きしめてくる。
当然ながらお互い裸なので姉の胸の感触を背中に直に感じることとなる。
「ね、姉さん」
「ダメ。このまま」
姉が離さないと言うようにさらに強く抱きしめてくるので離れるのをあきらめる。
それにしても今日はまたなんで俺の入浴に侵入したんだろうか。
・・・・・・・もしかしなくてもあの一件と今日のことで姉に気を使わせてしまったのだろう。
姉はああは言ってたけど間違いなく俺の様子を気にしてこんなことをしたのだろう。
「俺のことは心配しないでください。
本当にどうとも思ってないですから」
「・・・・・・・・・嘘」
姉は俺の言葉に怒った口調で言う。
「健くんは本当はすごく気にしてる、というよりあの子のことを許してないんじゃないの?」
「!」
俺の本当の気持ちを言い当てられ本気で焦る。
確かに綾瀬先輩のことは全て水に流したわけではない。
俺は綾瀬先輩もあの人とグルでそれを隠して家に泊まらせたんじゃないかという疑いをまだ持っている。
「やっぱり。前に言ったでしょ。あの子に絆されちゃダメだって」
姉にそう注意される。
確かに俺は姉にそう言われた。
姉の言葉に俺は反論することができない。
「・・・・・・すみません」
「ん。これからしばらくはあの子に誘われても断って。
ダメならわたしが陰でついていくから。
そのつもりでいてね」
姉が堂々と俺に綾瀬先輩と会ってる間ストーカーすると宣言する。
それはちょっとどうなのだろうか。
綾瀬先輩のほうもそんなことしても誰かを使って姉を見つけ出して追い払いそうだが。
それにしても・・・・・・・・・・・胸、胸の感触が。
かなり強く抱きしめられてるから背中の広範囲にそれを感じるっ!
あとそのせいでなんか知らない感触が俺の背中に!!
「姉さん、強いです」
「ん?何が?」
「とぼけないでくださ、ちょ、姉さん!」
俺は結局そのまま姉に強く背中に胸を押し付けられながら抱きしめられながら風呂の中の時間を過ごす羽目になった。
上がってからも髪と身体を姉に拭かれ服も一緒に着替えることになってしまった。
「健くん、わたしの部屋においで」
風呂場の脱衣所から同時に出ると姉は俺の腕を引っ張って自分の部屋へと姉を連れ込む。
「健くん、ベッドに一緒に入ろ♡」
姉が一緒にベッドに入れと言うので俺はベッドに同時に入る。
すると姉が突然俺の上に馬乗りになる。
「姉さん、いったい何を」
「健くん。あの子の家にお泊りに行ったときのこと、お姉ちゃんが忘れさせてあげる」
そう言って姉が俺の顔に自分の顔を近づけてくる。
「姉さん、待って・・・・・・・・むぐっ!」
姉が俺の唇に自分の唇を押しつけるようにキスをする。
「れる、んむ・・・・・・・くちゅ」
姉が俺の唇を食べるように唇を動かす。
そして姉の舌が俺の口内に侵入し端から端まで舐め回す。
「じゅる、んちゅ、んぐ」
姉が今度は全身を俺に押し付けてひたすらにキスを続ける。
そして俺はその後姉に延々とキスされ続け・・・・・・・・・・・・・。
「ん、お姉ちゃんとのキスで満足してくれたみたいだね」
俺が放心状態になっている中姉はせっせと後片付けをする。
「あの事、忘れられた?」
「・・・・・・・・はい」
頭がぼーっとした状態で俺は姉の質問に答える。
貞操はまだ守られているとはいえ、姉に二度もキスで・・・・・・・・。
「健くん、また気分が沈んだらわたしにすぐ言って。ね?」
姉は片づけを済ませた後俺にそんなことを言ってくる。
「姉さん、いくらなんでもその度こうやって慰めてもらうわけには」
「わたしは健くんのためならいくらもしてあげたいんだけどな」
「そういうわけには・・・・・・・・」
「わたしからの慰めの申し出は、迷惑?」
姉が俺に悲しそうに聞いてくる。
俺は姉のその目を見て思わず違うと言ってしまう。
「いえ・・・・・・・」
「ならこれからもお姉ちゃんが健くんが嫌な気持ちになったときは慰めてあげるね!」
というかそもそも俺たちは姉弟・・・・・・・・いやそれも今更だな。
でもこんなこと、いつまでもは。
そう思っていると姉が俺を呼び寄せる。
「健くん、わたしの隣に来て」
俺は姉のその呼びかけに応じて姉が寝ている横に寝転がる。
「健くん、これからはわたしに甘えてきてほしいな」
「え?」
「健くん、基本的に誰にも甘えたりしないでしょ?
でもわたしはもっと健くんに甘えてきてほしいし甘やかしたいんだよ。
だから、ね」
「・・・・・・・・・・・・・」
突然姉が俺に甘えてこいと言ってくる。
そう言われても、甘えるってどうしたらいいのか全くわからない。
「・・・・・・・・・・・・甘える、というのがどういうことなのか正直私にはわからないんですよ」
「どんなことでもいい、わたしに愚痴ったり癒してほしいって求めたりするんだよ。
それが甘えるということの一つだよ」
姉に俺はそう教えられる。
俺は基本的に愚痴ったりしないし癒されたいって思ったりしないんだよなぁ。
うーん。
「・・・・・・・・・わかりました。その時はお願いします」
「うん、お姉ちゃんに任せてね!」
とりあえず俺がそう答えると姉がうれしそうに言う。
「それじゃ、今日はもう寝よう?」
「はい、お休みなさい」
「うん、お休み健くん」
姉は俺の体を抱き締めながら寝る。
姉に甘えるっていう状況自体が今後起こる気がしないんだが、と思いながら俺も眠の谷へと落ちていった。
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