5-4-5 俺は姉の見慣れない姿にドキっとしてしまう
祭り当日。
栗栖・綾瀬先輩、そして姉と祭りに行く日である。
あの後姉が2人とどういうやりとりをしたのか聞いた。
しかし姉は気にしないでと言って結局教えてくれなかった。
そんな中の昼下がり。
姉が右手に着物らしき服を持って俺の部屋に訪ねて来た。
「健くん、甚平って着たことある?」
「いえ、ありません。それがどうかしたのですか?」
「今日夏祭り行くでしょ?せっかくだから着ていってみたらどうかなって思って」
姉にそう提案される。甚平か。
甚平なんて今まで着たことがない。そもそも着るような事態が発生しなかったために着る機会がなかった。
せっかく今まで言ったことがない夏祭りに行くのだからそれくらいしたいかも。
そう思い俺はその提案に応じる。
「いいですね。ですが私に合うサイズがありますかね?」
「お父さんに訊いてみたらこれが合うんじゃないかって出してくれたよ」
姉が右手に持っていた甚平を広げる。
藍を基調としたシンプルなデザインの甚平だ。
俺はそれを姉から受け取る。
「姉さん、着替えるので外に」
「えぇ~、着せてあげるからこっちにおいで」
「いえ、大丈夫です」
俺が姉に大丈夫と言うとちえっと言って部屋を出ていく。
甚平を着て部屋の前にいた姉に声をかける。
「終わりました」
「どれどれ、うん。すごく似合ってる。ちゃんと着れてるね」
姉に着た姿を見せると姉がそれを褒めてくれる。
「やっぱりよく似合ってる」
「さすが俺の息子だ、よく着こなしてる」
両親もいつの間にか俺の部屋の前におり、俺の甚平姿を見て姉と同じくほめてくれる。
「え、あ、ありがとうございます」
俺はそれに少し動揺してしまい言葉足らずに返す。
「そういえば俺にそんなことを言うってことは姉さんは今日浴衣で行くのですか?」
「そうしたいんだけどね~、車運転しないといけないからね・・・・・・」
「あら、一工夫すれば意外と難しくないわよ?」
「そうなの?」
姉が浴衣で運転をためらっていると母は姉に耳打ちで何か伝え始めた。
しかしうちにある車はいかんせん浴衣での運転なんて全く考えてない車しかない。
そもそも浴衣自体自動車が存在しない時代の衣服というのもあるが。
「わかった。わたしも浴衣で夏祭りに行く」
「え、大丈夫ですか?ほんとに」
「大丈夫。お母さん直伝の技ならどうにかなる」
「はぁ・・・・・・」
姉はキリッとした顔で言う。
「とりあえずお父さんの甚平が健くんのサイズに合うのはわかったけど、どうする?まだ時間があるし一旦着替える?」
「そうですね、そうします」
「わかった。準備は早めにしてね」
「わかっています」
俺がそう伝えると姉は両親と一緒に下に降りていった。
俺は甚平を脱ぎまた少ししたら着るからと畳んで床に置いておく。
普段着に着替え少し倉庫の掃除をしていたらそろそろ準備しなければいけない時間になる。
汗を結構かいたのでシャワーを浴びて汗を流し部屋に戻って甚平に着替える。
「健くん、そろそろ行く時間だよ。準備は出来てる?」
姉が俺の部屋の前で聞いてくる。
「準備はできています。今出ますね」
そう言って俺は部屋を出る。
するとそこには白地に花柄の浴衣を着た姉がいた。
「健くん。行こ」
「は、はい」
俺は姉の浴衣姿に一瞬ドキッとしてしまった。
浴衣姿もそうだが普段は下ろしてる髪を首筋が見えるほどに上げていて不覚にも色気を感じてしまった。
「?どうしたの?」
「あ、いえ。行きましょう」
「そう?」
俺は姉に大丈夫だと言って姉と一緒に家を出て車に乗って駅前を目指す。
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