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1-3

 一の鐘が鳴ると同時に宿の前に馬車が止まった。

 二頭の馬が引くのは八人乗りの豪奢なキャリッジで、執事っぽい人が一人乗っていた。

 本気で賓客として持て成してくれるらしい。

 執事っぽい人に一人ひとり傘を掲げられて乗り込むと、ふかふかな椅子に座る。

 出発した馬車の中から町並みを見れば、道路はどこも狭く、建物は全てが五~六階建てだった。ティア姉はオウルに空が無いといった。

 城塞都市は土地の有効活用が重要視される。特にオウルのように最初のカーテンウォールが作られてから三五〇年ほどが経つ都市は、余っている土地がないので建物は上か下に伸びるしかないのだった。

 しばらく走るとオウル城に着く。

 オウル城は本来城塞だった。敵から国の中枢を守ることだけが考えられており、外側からは華美や優雅さとは無縁に見える。

 しかし、長年の平和の中で内装は豪華に改装され、戦いとは無縁の空間になっていた。城塞というよりも、宮殿といった方が良いだろう。

 リータ達はオウル城に着くなり武具を取り上げられると、謁見の間と思われる場所に通された。ただただ広くて、何かの毛皮で覆われた宝石の付いた豪華な椅子が一段高い場所に置かれている。

 しばらく待つと壁際に家臣団と思われる人達が並び、椅子の横に偉そうな格好をした人が立った。たぶん大臣か宰相じゃないかと思われた。皆正装をしており、暑そうに汗を拭っている人が多かった。

 その偉そうな人が声を張った。

「ヴァンター王国サウル=リルクヴィスト国王陛下のご入場となります」

 左手のカーテンから(ごう)(しや)なマントを(まと)った青年が現れた。ものすごく暑そうだ。

 サウル王はマントを偉そうな人に渡すと椅子に座って周囲を(へい)(げい)すると、壁際の人達が片膝をつき頭を下げた。

 それに習って頭を下げるべきか悩むけれど、ティア姉だけでなくアイリとシルヴィも立ったままなので、それに習うことにした。

 ヤスカだけは(ひざまず)いて(こうべ)を垂れる。

 静まりかえったホールの中に偉そうな人の声が響く。

「国王陛下の御前である。礼を持って接するように」

 要するにお前たちも跪いて頭を下げろと言いたいらしい。しかし、ティア姉達には(したが)うつもりはないようだった。

 アイリの声が響く。

「わたしの名はアイリ。こちらは妹のシルヴィ。エルフ族は他種族に対して頭を()れない。なにとぞ無礼と思わないで欲しい」

 エルフ族は自分たちが一番優れた種族であると自認し、他種族と接することで(けが)れを受けるとして接触を嫌う。一部の変わり者以外はエルフの勢力圏から出てこようとはしないため、詳しい生態は分っていない。

 しかし、少なくとも他種族に跪くエルフがいないことは有名だ。

(わたくし)はティア=レイステラと申します。こちらは妹のリータ。トゥルク王国の王族に属させて頂いております」

 王族が他国の者に頭を下げることはない。相手が例え王様でもだ。

 何か言いたそうな偉そうな人を制し、サウル王が挨拶を返した。

「予が王のサウルである。ご足労いたみいる」

 声も若々しい。確かサウル王の代になってから三〇年は経過していると聞いた。

 そうなると、目の前の青年は五~六〇歳にはなるはずだ。

 国王になるか、国王の血筋で認められた者のみが不老不死になれる。

 大概の王様は三〇年も治世を取ると飽きるのか、次の跡継ぎに王位を譲ってしまうらしい。

「実は折り入って頼みがあり来てもらった。詳しくは会議室にて話すので移動して欲しい」

 それだけを言うとサウル王は立ち上がり、マントを掛けさせてからホールを後にした。

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