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12.甘い紅茶がどうにも苦く

「昨晩、しでかしたと聞いたぞ。シャルロッテ」

「……あら、耳が早いんですね」

「別に、今朝バベットから聞いただけだ」


話を切り出したにも関わらず短く言葉を切って紅茶に口付けるジュリアンに、思わずシャルロッテはため息をついた。シャルロッテだからいいが他の令嬢だったら会話に困ってしまうだろう。こんな調子でヒロインを口説くことは出来るのだろうか。

バベットのお茶会があった翌日、放課後にシャルロッテはジュリアンの邸でお茶を頂いていた。これは入学前から約束していた茶会で、いわば婚約者同士の定期的な交流である。

というのも定期的にこのような場を設けなければジュリアンはシャルロッテと関わろうとせず、下手をすればクラスメイトよりも接触がない。

年齢が上ればどれだけ仲の良かった男女も少し疎遠になる。ましてや親に決められただけの婚約者であるジュリアンとシャルロッテがこうなってしまうのはある意味、自明の理であった。


「魔法の制御を怠るなど冗談にもならないぞ。お前の魔法は命を奪いかねないのだと理解した方がいい」

「そうですね……猛省します」


バベットが告げ口をしたのはある種の意趣返しだろう。ジュリアンに漏らした程度なら世間話の体を保てるし、従姉妹と婚約者なら前者を信じやすい。

しかし、それはあくまで信じやすいというだけの話だ。第一王子として、その認識は大丈夫かとシャルロッテは内心ため息をついた。


(せめて私からも話を聞けよ)


バベットが令嬢たちの実質的なトップであることは学園の誰もが知っている。それはある意味政治であり、王妃候補であるシャルロッテはそれを上手く泳ぎきることを求められているのだ。

お節介が過ぎたかもしれないがシャルロッテは自分のした事に後悔はない。

自分の魔法についてよく知っているジュリアンなら、違和感を覚えシャルロッテに尋ねてくると思ったのだが。反論しても伝わるかどうか危ういこの空気では、どうしてもその気力が湧いてこない。


「そんなことより、ジュリアン様はもうこちらに慣れましたか? 私はどうしても目が冴えて、あまり寝つけませんでした」

「……そうだな、俺は問題なかった。元々修行も兼ねて地方へ赴くこともあったし、慣れるのは早い」

「流石ですわ。私も見習いませんと」


シャルロッテが選んだのは反論ではなく話題の切り替えだった。どうして分かってくれないのかという憤りはあるが、面倒くささが勝ってしまった。

いけないな、とシャルロッテは思う。本当にジュリアンを想うのならば自分の気持ちを殺してでも彼を注意しなければならない。学園に来る前までには出来たそれが、こんなに億劫に感じるなんて。


シャルルとして決意してしまったからだろうか、それとも新しい環境の忙しさにかまけて? もしくは年々辛辣になっていくジュリアンの態度に拗ねているのかもしれない。大人にならなくては、とシャルロッテは深くため息をついた。

ふと、飲んでいる紅茶が甘いことに気がついた。きっと用意した使用人がジュリアンと同じように角砂糖を二つ入れたのだろう。

王宮でお茶をしていた時はきっと、宮仕えの侍女がシャルロッテの好みを把握していたのだ。環境が変わって、使用人が変われば落ちる情報もある。それでも、シャルロッテはジュリアンの紅茶の好みを覚えていた。


(あーあ……)


恋慕したことは無いが、情はあった。クロードと同じ、弟のように愛している気持ちはあった。

心が離れるとは、まさにこういうことかとシャルロッテはひとり甘い紅茶を飲み込んだ。

しばらくまた書き溜めて、更新していく予定です。

私の始まりともいえる作品なので、どれだけかかろうとも完結まで持っていきたいな……!

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