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2、とりあえずお詫びと礼をしに行こう

「騎士団のみなさま、こたびは、本当に助かりました。ありがとうございました」


ぺこりと頭を下げるシャルロッテの姿に騎士たちはぽかんと口を開けたまま動けなくなった。目を擦る者や、頬をつねる者まで出る始末だ。

つくづく記憶を思い出す前の自分は罪深いな、とシャルロッテはこっそり苦笑した。なにせ、今回の襲撃もシャルロッテが我儘を言わなければ遭うことは無かったのだ。婚約者との茶会の帰りに海を見たいなどと言わなければ、寄り道することも、結果帰りが遅くなって夜道で襲われることも無かったのだ。


「いいんですよ、姫様をお守りするのが俺たちの仕事なんだから」


皆が固まっている中、軽口でも叩くかのような声が投げられ、騎士団長が慌ててそれを窘めた。しかし、グッタリと壁に寄りかかったまま動かない小柄なその騎士は、団長を無視してシャルロッテにヒラヒラと手を振った。

ルイーゼは少し眉を顰めたがシャルロッテは弾けるようにその騎士に駆け寄る。彼の頭に巻かれた血塗れの包帯を見てシャルロッテは下唇を噛んだ。

彼こそがシャルロッテを直接庇った護衛である。


「ごめんなさい、ジョン。私____」

「謝るなんて姫様らしくないなぁ。大丈夫、頭の怪我は派手に見えるだけだから」

(こんないい子を振り回してたのか、(シャルロッテ))


護衛騎士ジョンは、シャルロッテがもっと幼い頃に港町で拾ってきた孤児である。故に名前は持たず皆からジョンと呼ばれている。年に1度の『主日』のプレゼントに、この子が欲しいとシャルロッテが孤児を連れてきた時は流石の両親もひっくり返ったものだった。


(……あれ? もしかして、シャルロッテって元々結構な変わり者?)

「姫様の顔に傷でもついたらって思ったけど、無事なら良かった。俺も、討伐隊に入れたんなら良かったんだがなぁ」


6歳上のジョンはシャルロッテを妹のように可愛がりつつも、自分を救いあげた恩人として忠誠を誓っている。主に無体を働こうとした賊に目の色を変えて襲いかかるほどに。だがジョンはまだ17歳。ギリギリ未成年であり、実はまだ正式に騎士ではない。怪我のこともあって討伐隊には参加させてもらえなかった。騎士団詰所に取り残された彼は、シャルロッテが目覚めるまで盗賊団への呪詛を呟いていたのだとか。そんな話はもちろんシャルロッテの耳には入っていない。


「大丈夫、怪我なんてしていないわ。みなさまのおかげよ」

「そりゃあ、良かった……」


それから、シャルロッテは差し入れの薬をまとめて渡し(ひとりひとりに配ろうとしたら慌てて止められてしまった)、心配をかけないよう早めに自室へ戻った。



「……さて、お詫びを済ませたところで情報を整理すっか……」


1人になったシャルロッテは机から紙を引っ張りだし、羽ペンを取った。初めに「とりあえず覚えていること」と大きめに見出しを作る。


この世界は“私”の記憶によると、とある乙女ゲームの世界にほぼ一致する。ということは、悪役として登場していたシャルロッテの運命を“私”は知っているのだ。


[2018/04/24 追記]

すみません、矛盾が見つかったのでジョンの年齢を変更しました。早めに見つけられてよかったです……。

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