12、金と銀
誕生パーティと言っても主役であるシャルロッテがやることは大して多くない。
贈り物は後日に贈られ、あとはせいぜい入場の際に盛大に祝われるくらいだ。その後は顔見知りの招待客と適当に挨拶を交わすのである。
社交界デビューの歳である15歳や成人の18歳のときのパーティならばいざしれず、13歳という半端な歳ではこの程度である。
しかし、このパーティには主賓のシャルロッテでも遠慮しなくてはならない人間がやって来ているのだ。自然と招待客たちの装いも豪華になる。
(流石に私から挨拶しないとな)
ジュリアン・ドーレス・オルディア。
このオルディア王国の第一王子であり、シャルロッテの婚約者だ。まだこの世界が乙女ゲームだった頃、彼はプレイヤーから多大なる人気を得ていた。
清く正しく美しい、尊大なる未来の聖王____少々王道が過ぎるが、そんな彼に溺愛されるジュリアンルートはとにかく砂糖を吐き出しそうになる代物だった。シャルロッテの存在がなければもっと恐ろしいことになっていたかもしれない。
そしてシャルロッテがいることにより難易度が跳ね上がったルートでもある。それもまたプレイヤーたちを燃え上がらせ、人気を盛り上げていた。
……とはいえ、今のジュリアンはシャルロッテと同じく13歳。まだ幼げの残る顔は可愛らしさが勝っている。
「エメ、ジュリアン様は?」
「あちらでお嬢さまをお待ちしておりますよ」
あまり待たせてはいけないだろうとシャルロッテは招待客ににこやかに接しながら目的地へ向かう。この手の所作は慣れたものだ。
そんなシャルロッテの視界の端で、不意に金の髪がサラリと流れた。
(……?)
思わず足を止め、その髪を目で追うように振り返るシャルロッテ。振り返った先に金髪を持つ者はいなかった。
「お嬢さま?」
「……いえ、今行くわ」
この国で金髪は珍しくない。シャルロッテの銀髪の方が珍しいくらいだ。実際、ジュリアンの髪も美しい金である。
だというのに、今の胸のざわめきは何だったのだろう。シャルロッテはそっと己の胸に手を当て困惑した表情を消しながら、足を前に進めた。
そんなシャルロッテと同じように、金髪の持ち主がシャルロッテの銀を眺めていた事にも気が付かずに。
昔は、銀の方が金より価値が高かったらしいですね。
今回は短めでしたので2つ同時更新でした。




