11、通称:職人泣かせの宝石
「シャルロッテ様、お美しいですわ」
「ありがとう、貴方たちのおかげよ」
もう、可愛いではなく美しいという形容になってしまうんだな____そう思いながらシャルロッテは鏡越しに自分を見やった。
ハーフアップで結えられ、色とりどりの石や花で飾られた銀髪。淡い青を基調とした豪奢なドレス。
前世の感覚が残るシャルロッテとしては、まだ子供なのにこんなに露出していいのだろうかと思うくらい肩が丸出しだ。
それを着こなしているのだからシャルロッテの美貌は恐ろしいものだ。
もっとも、前世の自分とかけ離れすぎていてシャルロッテ自身は素直に迎え入れにくい容姿なのだが。
(でも年相応に胸周りは足りていないな)
子供が胸を寄せて上げ、コルセットを締め上げて無理やり作ったくびれに価値があるとは思えないが。そこはこちらの価値観に合わせて生きるしかない。
「はあ……こんなに可愛らしいお嬢さまをいずれは王家に渡さねばならないなんて……」
「エメ、それはかなりの不敬発言よ?」
「でもそれが本心ですから……お嬢さまが嫁ぐ時に私的侍女としてついて行こうかしら」
自分が嫁ぐ前にエメが嫁ぐことになると思うのだが、とシャルロッテは内心苦笑する。エメが付いていてくれたらとても心強いが彼女の人生を縛りたくはない。
「お嬢さま、最後にこちらを」
「ああ……一番大切なものね」
この世界の風習で、社交界における重要なルールがある。
侍女が持ってきたのは緑色の宝石が嵌った髪飾り。他のものと比べて豪奢なそれは、シャルロッテの頭で最も目立つように着けられた。
それはシャルロッテの婚約者、ジュリアンから贈られたものだ。緑色の宝石……大粒のエメラルドはジュリアンの瞳を連想させる。
この世界には、婚約者に自分の瞳と同じ色の宝石が使われた装飾品を贈る風習がある。贈られた者はそれを身につけ社交界に出ることで寵愛を受けていることを示すのだ。
かつて1人の女性が、多くの求婚者の中で本命を示すために行っていたという逸話が形骸化し、今では婚約者を示す重要なルールとなった。
王族から贈られた婚約の証を身につけた自分を見て、シャルロッテは深くため息をついた。
「やはり、私には相応しくないものだわ」
「何を言っていらっしゃるんですか。シャルロッテ様以上の令嬢なんていませんよ」
「そんな訳ないでしょう……。はあ、荷が重い」
シャルロッテとしては次期正妃など真っ平御免なのだ。そんな立ち位置はたくさんの敵を作る上、プライベートなんてあったものじゃない。その上夫が好みでないなんて、前世の記憶があるシャルロッテ的にはなんのメリットもない婚約だ。
(どうにかして主人公にジュリアン様を奪って頂かないと)
悪役令嬢とはおおよそ思えない考えをシャルロッテは頭に巡らせるのだった。
シャルロッテはあまり胸がありません。美(微)乳。




