第4話[差異恭之助]
「つか、今日は街に行かないわよ。」
達子を抱きしめながら蛇乃が言う。
今日の蛇乃の服装が変じゃないのは街に行かないからかと恭子が納得する。
お昼は食べに行くみたいだが、なら一体今日は何をするのだろうか。
疑問に思った恭子が尋ねると達子が答えた。
「今日はね、カラオケとかボーリングとかゲームセンターとかに行こうかなって考えてるよ。嫌かな?」
カラオケ、ボーリング、ゲームセンター。
どれも行った事のない場所だ。
中学の時、クラスの女子達が話していた憧れの場所。
恭子は過去を振り返る。
座っているだけじゃ誘われない。
そう思って私はクラスの女子達に声をかけた。
「あ、あああのしゃ、私もカラオケに行きたいんじゃけど、いいいっしょにええかな?」
だが、断られる恐怖からか上手く喋れなかった。
せっかく勇気を出して言ったのに…。
私は泣きそうになるのを堪えてクラスの女子達の返事を待った。
「えっと、私達は別にいいんだけどさ…。その…。差異さん部活あるんじゃ…。」
忘れていた。
そうだ部活あるんだった。
「流石に部活終わるまで待っていられないし、都合が合う日があれば行ってもいいんだけど…。」
恥ずかしさのあまりこの場からすぐに立ち去りたかった。
「ありがとう。また部活が休みの日があれば誘ってみるね。」
私がそう言うとクラスの女子達はうん、また誘ってねと言って笑顔を向けてくれた。
だけど、教室から出ると…。
「びっくりしたぁ〜。急に声かけてくるんだもんね。」
「ちょっと変な事言ってて笑い堪えるの大変だったわ。」
「あっ、それ超わかるー。」
教室内で笑う女子達。
私は泣きながら部活へ向かった。
それ以来、カラオケとか友達同士でわいわい騒げる場所に憧れを持つのはやめて格闘技に打ち込んだっけ。
それが今、あの憧れだった場所に行けるとは…。
生きてきてよかったなと思う恭子に達子が声をかける。
「ごめん恭子ちゃん。嫌だった?なら別の事して遊ぼうか。」
過去を振り返っている間に色々達子に話しかけられていた恭子。
それらを無視されただけで無く、辛い過去を思い出し、辛い表情を浮かべている恭子の顔を見て嫌がっているんだなと勘違いする達子。
その様子を見ていた蛇乃が口を開く。
「仕方ないよ達子。カラオケとかって人前で歌うの苦手って人もいるし、ボーリングとかゲーセンなんかは格闘技ひと筋の恭子には興味の無い話しだったみたいね。」
そう言うと蛇乃はニヤニヤしながら横目で恭子の方へ視線を向けた。




