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ロスト学園  作者: 神木界人
1章 すべての始まり
7/143

5 身体測定(後編)

完全に前回からの続きです。

前回の話を忘れてしまった人は、いったん戻って数行前から読み直すことをお勧めします。

(なんか、機械と戦っている最中です)

あと、今回も一章最後なので長めです。


「ふん。あんまり俺をなめんじゃねぇー!」


 機械に振り返る暇さえ与えない。俺の剣は普通の人間でいうところの首筋辺りを、まるで猫がひっかいたように斜めに切りかかる。


「う、うそ~」


 甲高い声をあげて機械はその場に崩れ落ちた――――。いや、違うな。機械じゃないな。


 この声の正体は機械の向こう側で体を震わす少女だ。なんか、葵が初めて俺に乙女な一面を見せてくれた。


「あ、あなた、一体何者?」


 彼女は自分の足元に転がってきた機械の頭部を青ざめた様子で一瞥したのちゆっくり、一歩ずつ下がりながらも俺に質問を投げる。


「ん? 何者って。そうだな~。 ただの剣道好きとでも言っておけばいいか?」


「け、剣道好きって……」


 まぁ彼女の魂胆は見え見えだった。そもそも教室の後ろから敵が入ってきたのに対して、葵はずっと教室前方、もっと言えば俺の数メートル後ろから一応戦闘態勢で剣を構えていた。


 もちろん最初から戦う気はないのだろう。俺が、機械にいいようにやられそうになっているところに助太刀のごとく入ってきて恩でも着せる気だったってところだ。


 でもまぁ、俺が勝ってしまった。剣をもらってあんなにおどおどしていたのも、剣術が苦手とかじゃなくて状況が分からなかっただけだから、戦おうと思えばいくらでも戦えるし。


 そして、彼女は今、目の前で起きた状況が呑み込めないようでアタフタしていた。


 後ろ歩きをしているせいで教壇に足を取られ、後ろ向きにしりもちをつくようにして倒れこむわ。その衝撃に耐えようとしてだろうか手を後ろに持ってこようとした瞬間、ひじを教卓にぶつけるわ。そして、結局手で支えることも出来ずに盛大にしりもちつくわ。かろうじて正気を取り戻して立ち上がろうとしたところで粉受(黒板の下部にあるチョークと黒板消しを置ける出っ張った部分)に頭をぶつけるわ、もはやアタフタではなく、フラフラしていた。


「大丈夫か? 葵」


「き、気にしなくていいんだからっ」


 よっぽど俺に心配されるのが嫌なのだろうか、顔を真っ赤にして俺から視線そらしちゃって。


「立ち上がれる?」


 でも、さすがにそのまま放っておくのもかわいそうだから俺が手を差し伸べてあげたっていうのに……。



 彼女はいきなりさやから剣を抜いた。


「お前、少しは感謝ってものを」


「どアホ! 後ろ見ろ」


 後ろ? そういわれて振り返ると首のもげた機械がそれでもなお多少の火花を散らしながら俺たちに向かって突進してきていた。



 もう、一種のホラーだよコレ。 なんでそこまで必死こいているんだよこの機械。


 とりあえずここでよけても確実にそこで転がっている葵が斬られて終わる。当然その選択肢はなかった。


 となれば。


「居合切りかな」




 俺は敵をギリギリまで引き付けて、もう今日はお役御免だと思っていた剣を再び敵の腹もとで引き抜く。

 おそらく葵には剣を抜いたことすら分からなかっただろう。相手の勢いもあったおかげで切った部分より上、まぁ上半身辺りは勢いよく、俺の頭の上を超えてゆき黒板の上部へ。下半身の方は直線状に葵の真横にある壁に衝突した。



「はぁ。全く、倒れた女の子に見とれて殺されそうになろうとかバカを取り越してアホになるわよ」



「バカを通り越した先がアホなのかよくわからないし、俺はそもそもバカなんて認めてねぇーけど、まぁ一応教えてくれてありがとうな」


 確かに彼女があそこで何も言ってくれなかったら、さっきの復讐だと言わんばかりに今度は俺が後ろから首をポックリやられていたかも知れない。


「まったく、剣術は強いくせに女の子に弱いなんて」


「な! そんなわけねぇーだろ」


「でも……」


 そう告げる彼女の口調は、今までのトーンとは明らかに異なっているのが俺にも分かった。


「でも、ちょっとだけかっこいいって思っちゃった。ねぇよかったら私と一緒に卒業目指さない」


 そう語りかける葵からは夕日によって朱色に照らされる教室に舞い降りた天使さながら何か神聖なものを感じた。

 

「卒業?」


「うん。なんかね~今の圭君を見てたら、どんな敵でも怖くないんじゃないかなって。もちろん私だってお荷物にはならないから。それなりに剣術には自信あるつもりだもん。そんな私と圭君が組んだら卒業だって出来るんじゃないかなって。ねぇどう? 私と一緒に戦ってくれる?」


 こいつは今までさんざん俺のことをからかいまくって楽しんでいた女だ。そんなことは百も承知だった。でも、俺の体はまるで理性を忘れたかのように差し出された葵の手をつかみ、口はまるで寝言のように俺の意識とは別のところにある俺の言葉で彼女に対して返答を返す。



「あぁ。めちゃくちゃ楽しそうだなそれ」って。



 そんな二人を祝福するかのように俺たちの周りは神々しい光に包まれていったのだった。





とりあえずこれで第一章完結です。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

次回からは第二章、新キャラも(次回で出演できるか分かりませんが……)出てくるのでこれからもよろしくお願いします。

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