6 ストーカー?
新章突入です!
入学してから数日が過ぎ、俺はしばらく、安定的な生活を送ることが出来ていた。
たった一つの気がかりなことを除いては。
「なぁ俺ら、誰かに付けられてないか?」
この質問を葵にするのも、もう五日目だ。彼女の方も最初のうちは「は~付けられているとか圭君バカなの~。そんなアイドルみたいなことあるわけないじゃん」みたいな感じで冗談めかしく笑いながら返してくれていたものの、最近は「圭君、しつこ過ぎない」と不機嫌だと思いっきり書いた顔に愛想笑いを混ぜ込みつつ答えてくれる。
俺だって最初は「気のせいかな。俺が考えすぎてるだけなのか」と思うようにしていたものの、どう考えても、違和感があった。背筋が凍るようなというか、誰かに覗かれているような。壁に耳あり障子に目ありを三次元でやっているような感覚だった。
今日も今日とて葵は「ホント、しつこいよ」と鬱陶し気に答えていたが、今日は彼女が「いないものは、いな……」と会話している途中に俺の目の前から消えた。
「え?」
さすがにいきなり目の前から消えられたら驚かないわけにはいかなかったが、彼女は消えたのではなく、すごいスピードで俺の後ろに移動していたのだ。
俺を守るために。
俺の後ろでは葵と見知らぬ少女が対峙していた。虹に含まれているような少し薄めの紫と、かけている厚みの少なめなメガネが彼女を目立たないようにしている。ちょっと覇気の感じにくい少女。
彼女は申し訳なさげに「ごめんなさい。ごめんなさい」と葵の前で謝りながら素振りを繰り返す。
何やってんだ?
そんな少女を最初のうちは半眼で眺めていた葵だったが、一応彼女に敵意があると感じたのだろうか、急に鞘から剣を抜き構える。
「あなたが、ここ最近圭君のことをつけ狙っている子~? 最近の圭君の様子があんまりにもおかしいからちょっとだけ、警戒してたけど、やっぱりなんか悪い虫がついていたようね」
「いや、違う、あ、えっと違わ……ない? う、う~ん」
だが、少女はなおも剣を振るいながらも自問自答のスパイラルへと落ち込んでいく。
まるで花占いで「好き、嫌い」と繰り返すように「違う、違わない」と。
「埒が明かないから、あなたの事、圭君に寄り付かないように斬り捨ててあげてもいいのよ」
だが、彼女のパニックは収まる様子はなく、葵のイライラも目に見えて上がっていってるのが分かった。
このままではこの子は確実に殺されるな。
もちろんストーカーとして、俺の生活を脅かしている相手なら斬り捨ててもいいだろう。だが、これだけ、慌てふためく少女が悪意に満ちて俺のことをつけてるとも思えなかった。
何か理由があるのかも知れない。
そう思い、俺は「どういう事か説明してもらってもいい?」と静かに声を掛けた。葵のように喧嘩腰ではなく、優しく声を掛けてあげれば何か答えてくれるかもしれない。
「わ、私は井上由美と言います。驚かないで聞いてほしいのですけど……」
彼女はとても申し訳なさげに下を向き、指をいじりながら、まるで俺たちのことを探っているかのようにところどころ止まりながらも少しづつ言葉を紡ぐ。そして、最後に初めて俺と目を合わしてくれたところで、締めの言葉を話す。
その、アメジストのような深く純粋な瞳から訴えられた彼女の言葉に俺はどう応えることも出来なかった。
だって、彼女の言葉は俺が理解するにはあまりにも実感がなさ過ぎたからだ。
「私、あと一回誰かに殺されたらもう、死んじゃうんです」
普通に出てきましたね。新キャラ井上由美ちゃん。
彼女が話す言葉の意味とは一体何なのか? 次回をお楽しみに




