20 乱闘戦前夜
今回からはまた普通に圭君視点です。
「すいません。なんか重い空気になってしまいましたね」
一通りすべての過去を打ち明けた由美ちゃんは軽く会釈をしてこの場を去って行ってしまった。
乱闘戦までもう日は無い。俺は師匠として彼女を勝たせて想いを遂げさせてあげなければ。そう改めて心に誓ったのだった。
*
そして乱闘戦の前日を迎えた。
「買い物……ですか?」
その日の午前中、急ではあったものの由美ちゃんを買い物に誘い出してみた。あまり緊張して固くなられ過ぎると逆に実力が発揮できないしな。
「もちろん師匠が行くというなら全然いいですけど」
「葵はどうする?」
俺が、葵の方に話を振ると彼女は少し驚いたような表情を見せた。
「へ~一応私も誘うんだ。でも、まぁいいや。今回はパス。二人で楽しんできな」
逆にどうして誘われないと思ったのだろうか。よく分からなかったがとりあえず今日は俺と由美ちゃんの二人で出かけることになった。
「で、どこに行くんですか師匠」
電車の中で彼女は少し不安そうに聞いてきたが、俺は「着いてからのお楽しみ」とはぐらかしてみた。せっかくだからサプライズをしてみたい。男のロマンというやつだ。
だが、そんな思いとは裏腹に彼女はあらぬ疑いをかけてくる。
「買い物とか言ってまたあのゲームに連れまわす気じゃないですよね」
「ん? 嫌か?」
「え⁉ マジでまたあのゲームですか。べ、別に嫌いとかそういうのじゃないですけど」
そういう由美ちゃんの顔はゴキブリを眺めるような眼つきをしていた。
そういや最後の方はダンジョンばかり潜っていたせいかクモだのアリだの毛虫っぽいなんかだの無駄に虫系統の敵が多かったからな。
「まぁ今日はゲームじゃない。本当に買い物だ」
そうこうしているうちに俺たちは目的地までたどり着いた。
とあるショッピングモールの一角でどっしりと店を構える、いかにもリア充が大量発生してそうな……
「服屋……ですか?」
「そう。ゲームをしに行ったとき、毎日おんなじ服を着てただろ。女の子なんだからもっとおしゃれとかしてみたほうがいいんじゃないかなって」
だが、両手あげて喜ぶわけでもなく、まじまじとこちらを見つめられると自分のやっていることが正しかったのか疑心暗鬼になる。
「てことで、何か私服でも買ったらどうかなって思ったんだけど……さすがにお節介すぎたかな……」
だが俺の心を察してか、口角を上げ彼女は微笑んでくれる。
「いや、私も服は欲しいって思ってましたし、師匠がいてくれたら男性的に見ていい服とかも見つかりそうですから」
彼女はそういって服屋さんの中へと入っていったのだった。
さりげなく気遣いデートのできる圭君でした。
次回はデート後半戦です。




