19 由美の過去(由美視点)
これは私が6歳の時のお話。
私の住んでいた村は、たった一人の男によって壊滅させられました。
村の人たちはみんないい人たちでした。でも、優しすぎたがゆえに、いきなりやって来たその男に対しても何の警戒もせず村に受け入れてしまったのです。
そして、彼を村に受け入れたその日から地獄は始まりました。
その男も初めは良い人の振りをして、「村のことは一番に思っている」とか「こうした方がさらに村の良さをアピールできる」とかデタラメなことを言っては村の人々から人気を買っていきました。
その成果もあってか、一か月もしないうちに男は村長補佐のような地位まで成り上がり、事実上村の財政をすべて支配するようになりました。
それから税金はどんどん高くなっていったのです。それと比例するように村の人たちは衰弱していきました。それでもお人好しな村の人たちは何の疑いもなく「きっといい政治をしてくれる」と税金を払い続けていました。
当然、そのお金がいい政治のために使われる事なんて一度も……。
後から知った話ですが、そのお金は横領に使われたり、その男自身の金になっていたらしいです。
そして金を取るだけ取り切った男はついに私たちに牙をむき始めました。
仲間を連れて、村のいたるところに火を放ったのです。
村は一瞬で灰と化しました。それは、土地だけでなくあいつのために誠心誠意従い、お金を払い続けた心優しい村人たちまでもです。
自分でいうのもおかしいかも知れませんが、その時初めて私は絶望というものを知りました。
それでも火の粉が散る中、一人彷徨いながらもなんとか村から出ました。
私だって死にたかった。親もいない、優しくしてくれる村のみんなだっていない。私は一体何のために歩いているのだろうか。
そんなことを思いながらも歩き続けていると、私の前に一人の男が現れたのです。彼は左手を私に差し向けて「お前は死ぬべきじゃない。これを食って元気出せ」と、飴玉をくれました。
いま改めて考えてみれば不思議な話ですよね。どうして男は私が死のうと考えていたのか分かったのでしょう。もしかしたら表情や雰囲気なんかから感じ取れたのかもしれませんね。
そして私も私でおかしくなっていたのでしょう。どこの誰かも分からない相手だったにも関わらず逃げることも隠れることもなく、話をしていました。
「どうして? どうして私を助けようとするの。私はもう……死にたい。生きていても何の意味も……」
だが、男は首を振りました。
「人はな、死ぬときって決まってるんだ。その時がくれば死神がカマで首を刈るように静かに死んでいく。――――お嬢ちゃんにはちょっと難しい話だったかもな。でも、お嬢ちゃんはまだ生きて歩いている。ということはまだ死ぬときじゃないということだ。まだお嬢ちゃんにはやることがあるんじゃないのか?」
「やる……こと?」
「お嬢ちゃんは自分の目で何を見た? その心で何を感じた? その答えこそお嬢ちゃんが今すべきことなんじゃないのか」
その男はまるですべての事情を知っているかのように話してきました。だけど、心に余裕なんてなかった私にこの男の不気味さを感じることなんてできなかったのです。
言われたまま、私がすべきことだけを考えました。 そして答えを出したのです。
それは、私が強くなって村を崩壊させた男――中川信二――を殺してこれ以上犠牲になる人をなくすこと。
そのために私は雲雀学園に入りました。
ちょっとしんみり回(?)でしょうか。
でも現実にこういう風に壊滅している村があると考えると……
次回は普通に圭君が主人公のお話です




