18 井上由美の剣舞2
奇跡の音に目を見開くと、彼女の眼前にほっそりとした剣がしっかりと俺の剣を止めていた。柄(剣を持つ部分)と剣先を持ち、剣を平行にすることで力を分散し、止めている。
そんな彼女は余裕な表情を見せながら、
「大丈夫ですよ。なんか剣の来る方向が自然とわかって……そうなれば私の体が勝手に動いていました」と。
もちろんそんなことは普通じゃあり得ない。感覚的に止められるほど俺の剣だって優しくない(はず)。
もしかすると、由美ちゃんは本当に俺が想像していた以上に強くなっているのかもしれない。
そう思うとワクワクしてもう一発全力で振ってしまう。
「圭君のバカ! なんで二回も」
だが、その剣すらも躱されてしまう。いや、それどころか逆に彼女の細い剣が俺の腹部に一刺し……。
「大丈夫ですよ。私も寸止めできますから」
もはや何も言葉にならなかった。自分の腹に剣を突き刺された衝撃で俺はバランスを崩し、その場にしりもちをつく。
後ろでは葵が爆笑しながらまるで中学生のイジリかと思うほど「圭君がやられてやんの」って無駄に連呼していた。
「笑うな!」
「ダッサ~。本気でかかって負けちゃうなんてね。しかも寸止めまでされちゃってるし」
いまだに笑いが収まらないようでクスクスと交えながらなんとか言葉にしている。
「うっせー! ならお前もやるか? この前のリベンジ戦って事で」
「お断りね。由美ちゃんだって疲れてるし」
葵の言う通り、由美ちゃんもすでに俺から剣は離し、その場で座り込んでいた。
「まさか俺が負けるとは」
「でも、これって全部師匠のおかげですからね」
すると葵もまた由美ちゃんの隣に座る。
「ねぇ由美ちゃんってなんでこの学校に入ったの? 話を聞く限り圭君みたいにバカだからってわけでもなさそうだし。他にもっとまともな高校でも」
そういわれると、由美ちゃんはさっきまでのやり切った感じの清々しい顔から急に深刻そうな暗めの顔に変わった。
「純粋に強くなりたかったからです。弱いと何も守れないですから」
そこまで言うと周りの空気を察してか冗談めかしに微笑みながら「まぁそうは言っても師匠に出会ってなければこの学校に入った意味すらなく死ぬところでしたけど」と付け足した。
だが、そんなフォローよりも俺たちが気になるのは前の部分だ。
「どうして強くなりたいなんて」
そう聞かれると、彼女も腹をくくったのか草原においてあった剣を拾い上げ鞘にしまってから語り始めた。
いや、まさか圭君負けるなんて。それでも主人公なんでしょうか(笑)
次回は由美ちゃんがこの学校に入った理由を由美ちゃん視点でお送りします




