9 井上由美の剣舞
由美ちゃんの威勢は素晴らしかった。「やーー」と気合の入った掛け声(?)と、それに見合うような全力ダッシュ。周りの草木までも巻き込みながら葵に一直線に突き進んでいた。
俺に対して無駄口ばかりたたいていた人間がそう易々と避けられる代物ではない。
そう、威勢だけは俺よりもすごかった……。
「…………」
「…………」
結局、葵は一歩も動くことが出来なかった。きっと彼女の勢いに押されて動くことが出来なかったのだろう。でも、彼女の体に傷は一つたりともついていない。。
「あーやーとぅーたー」と無駄な言語付きで振りかざされる彼女の剣は、まるで葵にあてないという曲芸を見せているかのように彼女の周りの空気だけを千切りにしていた。
「本気か?」
目を見ればそんなことは分かっていたのだが、それでもつい聞いてしまった。いや、口から洩れてしまったの方が正しいか。
彼女は思っている以上に重傷だったのだ。これならこの短い期間に四度殺されても納得がいってしまう。
「とりあえずしばらくは由美ちゃんに剣の使い方を教える必要がありそうだな」
俺の方は前途多難に頭を苦しめていたものの、当の本人はそこまで問題と考えていないのか、能天気にも「では、これからは圭君のこと、師匠って呼ばせてもらいますね」なんて抜かしている。
「師匠⁉」
俺と葵が驚く表情を見て楽しんでいるのか、彼女はにこやかに「はい」とだけ答えた。
ちょっと今日は短かったです。
次回からは由美ちゃんと圭君の特訓回です。




