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三人を乗せた銀竜は草原を飛び越え神殿のような建物の前で着地した。
流石新コンテンツだけあって天空島はこの神殿以外整備されてない。
だが中に強力な何者かがいる事は容易に予想出来た。
階段を登り中へ。
居たのは椅子に腰掛ける三人組だった。
真ん中に腰掛けた金の衣の男が言った。
「エリザベスを投獄してから丸四日。今だに俺様の妻になるつもりはねーらしい。水以外殆ど何も与えてねーのによぉ」
エリザベスはソラを信じて待っているのか。
「ハイディス、キヨシの二人の心が折れるのももう間もなくかと。いずれ零社からの注射をお持ち致します」
零社、ガゼド、そしてこの者たちーー。
もしかしたらジン王国の政府の裏の者達まで陰で手を組んでいるのか。
真ん中の者の名をゼウス、左右の者たちをポセイドン、ハデスというそうだ。
ハイディス、キヨシが敗れたところを見るととんでもなく強力な人たちと言える。
いや、もしや人ではなく神ーー?
何にせよフォックス達はこれから黄金探しに向かわねばならず、岩場付近まであの「シルバー」とやらに乗る事になった。
ナギサを見たゼウスの眼の色が変わったのは確かだが、今回は何も言ってこなかった。
とにかくキヨシも裏魔法が使えるそうだ。
(これでアニキを手懐ければ、四人の裏魔法使いが揃う事に)
「君、何でハイディスが歴史から抹消されたか知ってる?」
「いや……」
「裏魔法を操るキヨシと手を組むと予言されてたからだよ。十五年前は裏魔法の研究が進んでおらず魔王様の消滅にのみ焦点が当てられていた。裏魔法で復活させる等、考えもつかなかったのが当時だ」
ハウルは二十八歳くらいに見えた。
岩場に着いた三人はいよいよ黄金を探す事となった。
だが今はそれよりもこの世界の縮図にただただ呆然としていた。
ソラ達にとって敵、敵、敵だらけである。
この世界がゲームなのだとしたら、それはそれで残酷だった。
プレイヤーにも平等に死は訪れる仕組みだからだ。
「この付近にクリーチャーは出没するのか?」
「先ず間違いなく。気を抜いたら即死だよ」
ハウルの人間性については今だ完全には掴めていないが、思ったよりずっと温厚だった。
寧ろゼウスやポセイドンの方が本物の悪といった感じがする。
「クリーチャーよりも恐ろしいのが彼ら空、海、冥界の神。逆らったら即死だよ」
ハウルの言葉にフォックスは僅かに頷いた。
もはや黄金は一パーセントも懐に入らないかもしれない。
「この付近から掘り進んでいこう。魔法でツルハシは出せる?」
頷き安物のツルハシを掌から作り出すフォックスとナギサ。
だがこれでも無から作り上げるのだから上等だ。
発掘作業が始まった。
時刻は既に正午を過ぎており、エリザベスが保たないか密かに心配していた。
ソラ達と出会い人の温かさに触れた。
レインやホワイトロックやアスカですら、自分を亜人と特別視する事は無かった。
あの頃に戻りたい気持ちが無い訳でもない。
だがもう天空島の岩場に来てしまった。
採掘場で労働させられる運命には抗えないのか。
ハウルのツルハシがカンカンカンと音を立てる。
ナギサも嫌そうな顔をしていたが、しょうがなく?といった具合でツルハシを縦に振る。
ソラ達が絶望なのだとしたら、自分も自分で絶望のルートを辿ってしまったのかもしれない。
ハイディスを歴史から抹消したのは人々がまだ魔王を慕っていたから?
何にせよジン王国もそれより少しマシなヒロナ帝国も、奴らがその気になれば一瞬で滅ぼされてしまう。
天空島という新コンテンツは異世界人達に追い討ちをかける存在だったのだ。
その時、岩場の陰から何かが此方を覗いて居るのが分かった。
あれは……巨大な蛇……いや七つの首を持つヒュドラ!?
相手は体長十メートルの銀竜よりまだ大きかった。
とにかくここは闘うしかない!
幸い自分は注射によって強くなっていた上、ハウルもナギサも頼れる存在だった。
「超時劣化」
ナギサが相手の動きを鈍くする時魔法をかけた。
ヒュドラには毒がある為、超時劣化は有効打になると言えた。
そこへハウルが衝撃波を叩き込む。
青白い光線は動きの鈍ったヒュドラの頭部に吸い込まれていき、敵は狼狽える表情を見せた。
自分が得意なのは補助魔法か。
いや、ここはサーベルで突っ込む。
いつしか死も恐れなくなっていた。
いやこの採掘場に来てそれが加速したのか。
何にせよ自分はここで自分を試す!
ダンジョンでのゴーレム戦ではソラとクレラに任せっきりだった。
もうあの時の自分とは違う。
ヒュドラ程度に敗れるならーーそこまでの男だったって事だ。
牙。
猛毒が身体中を襲い、やがて意識は遠のいていった。




