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小さな芽

優しいファンタジーを目指しました。


対戦、よろしくお願いします!


とある田舎の町外れ、精霊の森のすぐ近くに、その店はあった。

そこは薬師の少女リリィのアトリエ。

森で採った薬草で作る薬はよく効くと評判だ。

だが、なぜだかこの山奥で暮らしている、少し変わり者でもある。


その日もリリィは1人薬草採取に森に来ていた。

籠いっぱいに集め、昼食のサンドイッチを頬張る。

木漏れ日の気持ちいい日だった。

気がつけば彼女は夢の中にいた。


大木の根本で女性が泣いている。

「あの…大丈夫ですか?」

リリィが尋ねると女性は涙を拭い、こぶし大の大きな種を彼女に手渡した。

「これは?」

『わたくしの子供をどうか…』


リリィの目が覚めると手の中に夢の中と同じ種があった。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


1日目


大きな鉢と柔らかい土を用意してタネを植えてみた。

どんな花が咲くんだろう?

どんな木に育つんだろう?

ワクワクが止まらない。


すくすくと元気に育ちますように!


ーーーーーーーーーーーーー

2日目


すごい!もう芽が出たよ!

凄くいい匂いのする双葉。

お水いっぱいあげて、日向に出してあげるね!


大きく育て!


ーーーーーーーーーーーーー

3日目


葉っぱが大きくなった!

これでお日様の光、いっぱい受けられるね!

そうだ!名前つけよう!

【フィル】ってどうかな?

葉っぱが揺れた気がした。


よろしくね、フィル!


ーーーーーーーーーーーーー

4日目


また少し大きくなったみたい。

フィルって呼びかけると、ふるふると葉が揺れている気がする。

お日様いっぱい浴びて、もっともーっと大きくなあれ!


明日はどうなるんだろう、楽しみ!

ーーーーーーーーーーーーー

5日目


えっ?!ちょっとまって?!

どう言うこと?!


朝起きたらフィルの鉢が割れていて、

土だらけの赤ちゃんがいたんだけど?!

きょとんって顔で座ってる。

とりあえず、抱き上げて土を払ってあげると

声は出てないけど笑ってた。

もしかしてあの女性が言ってた子供ってこの子のこと?!

頑張って育てるぞ!


今日から私がママだよ、フィル!


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


フィルの成長は早かった。

初日こそ大人しく座っていたが、翌日には匍匐前進を、さらに翌日にはハイハイを覚えた。

「これは明日には掴まり立ちしちゃうかな?」

でもそうなると大変だ。

机の上に物を置けなくなると、この前会った奥様が言っていた。

少し片付けようとしたら、服が引っ張られた。

「あー」

なにか言っている。何かわからないけど…。

「ってフィル!あなた声?!」

私が驚くと、フィルはきゃあきゃあ笑った。

この子、絶対わかっててやってる。

でも可愛い声だな。

「これからはいっぱいお話ししようね?」

「あーきゃあっ!」


明日、育児書を買ってこよう。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


12日目


聞いて聞いて!

今朝、フィルか初めてママって呼んでくれたの!

もう可愛くって額にキスしちゃった!

……もしかしたら、まんまだったのかもしれないけど…

でも今日くらい、ママって呼んでだって思ってもいいよね?!


明日の成長も楽しみ!


ーーーーーーーーーーーーー

14日目


最近フィルがどこにでもついてくるようになったの!

歩けるようになったから楽しいのかな?

ひよこみたいで可愛い!

でも、キッチンまで入ってきちゃうのは怖いなー。

危ないよって言ってもきいてくれない。

まだわからないのかな?

お料理してる時も、お洗濯してる時も、足元で「ママ、ママ」って言ってる。


大丈夫、ママはそばにいるよ?


ーーーーーーーーーーーーー

18日目


大変!フィルが熱を出しちゃった!

注意はしてだんだけど、洗濯桶に落ちちゃって

びしょ濡れになったからかなぁ?

とりあえずお薬は飲ませたけど、どう考えてもこの子、人間の子供じゃないでしょ?

お薬、効くかなぁ?効いて欲しいな…

大丈夫、私は薬師!

絶対助けてみせる!


頑張ってね、フィル!


ーーーーーーーーーーーーー

20日目


良かったー!

フィルの熱、やっと下がりきってくれたー!

ちょっと良くなると、お布団抜け出して積み木で遊び出しちゃって大変だったけど、もう安心!

ああ、安心したら、私まで熱が出たかも。

今夜は早く寝よう。


明日からいっぱい遊んでいいからね、フィル


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


「ママ、だっこ」

薬の調合をしていたリリィに、手を上げてフィルは呼びかける。

完全に今すぐ抱き上げてのポーズだ。

「ごめんね、今、手が離せないの。もうちょっとまって」

リリィは調合道具から目を離せない。

それが余計に嫌だったのか、フィルが足に抱きついた。

「やあだ!だっこ!!」

「ごめんね?」

日に日にフィルの甘えん坊が強くなってる気がする。

リリィは苦笑した。

そして、キリのいいところで薬品を片付け、フィルを抱き上げる。

「ママはね、お薬作ってたの」

「おく…すり?」

「そう、お熱お熱のときや、ぽんぽん痛い時に使うお薬」

「まほうだー」

フィルは目をキラキラさせ…「でもね、でもね」と呼びかける。

「ママのおててのほうがまほうだよ?」

なでてくれるとぽかぽかするから。


そんなフィルが愛おしいリリィだった。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢

23日目


あれからフィルは私の仕事に興味を持つようになったの。

調合道具を触りたがって大変。

とりあえず今は使ってないなるべく安全そうなのあげてみたけど…

すごく真剣な目で何をしてるんだろう?

真似っこしてるつもりなのかな?


頑張れ!未来の弟子よ!なんちゃって

ーーーーーーーーーーーーー

28日目


最近のフィルはね、何でも自分でやりたがるの。

ご飯も最後まで自分で食べるし、

着替えも1人でやりたがる。

……この前はボタンがずれていたけど。

洗濯もの畳むのを手伝ってくれるのも助かる。


こうやって成長していくのかな?

ーーーーーーーーーーーーー

1ヶ月目


どうしよう!フィルがお昼寝してくれない…。

「ぼくはもう、おとなだからおひるねしない」って、困ったなぁ。

寝てる間に片付けたい仕事あったんだけどなぁ…

…って思ったんだけど、絵本読んでたら寝ちゃった。


可愛い寝顔だけど、もうすぐ見れなくなっちゃうのかな?



♦︎♢♦︎♢♦︎♢


その日、リリィのアトリエに珍しく来客があった?

「リリィちゃんの薬があって本当に助かったよ」

町からやってきた顔馴染みの青年。以前痛めた傷に使った薬が良かったと礼に来たらしい。

「いいのよ、仕事だから」

リリィが言うと、彼は彼女の手をとった。

「今度町に来ない?一緒に食事でも…」

「ママ、この人だあれ?」

タイミングがいいのか悪いのか、部屋の奥からフィルが出てきた。

フィルは青年がリリィの手に触れていることに気がつき、不機嫌そうにリリィの足に抱きついた。

「ママのお客さん。フィル、ご挨拶して」

「あれ?リリィちゃんの子供…じゃないよね?」

青年がフィルをみる。フィルはますます不機嫌になる。

「リリィちゃんって?」

「ママのお名前よ」

「じゃあ、僕も呼ぶ!」


ヤキモチなのか、その日からフィルはママと呼ばなくなり

少し寂しいリリィだった…

幼児編終わりました。

次は思春期です。

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