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第2章 - 悪魔の遊戯

あの咆哮の振動が、まだクレントの骨に残っていた。


耳に残っているのではない。もっと深くで振動していた。胸、背骨、歯の中で。何か太古のものが世界を一瞬引っ張り、その際に彼を弦のように張り詰めさせたかのように。息を吸うたびにその余韻が擦れた。


森は再び沈黙していた。


だがこの静寂は、祠樫の森に足を踏み入れた時に二人を迎えた潜むような沈黙とは違った。空き地の上に横たわるそれは、誰も疑おうとしない一文の終わりのようだった。重く。動かず。


「あれは......私を見た」


ヴァレリアの声は囁きにすらなりきれていなかった。クレントが頭を向けた。


彼女はまだそこに立っていた。竜がつい先ほどまで現実を歪めていた空白の場所に目を縫い付けたまま。指があまりに激しく震え、弓の弦が微かに唸っていた。その細い音が静寂を切り裂いた。小さく、無力で、だからこそクレントの耳にはっきりと届いた。


彼は何も言わなかった。


心臓が速すぎる。耳の中で血が轟き、その鈍い轟音の下で、背後のどこかで消えた焚き火の最後の熾火が崩れ落ちた。クレントは視線を空き地に這わせた。


空だった。


地面に足跡はない。剥がれた苔もない。潰れた草も、折れた根も、裂けた枝もない。ただ存在するだけで世界を小さくした生き物にふさわしいものは、何一つ残されていなかった。


ただ匂いだけが残っていた。


煙ではない。肉でもない。灰でもない。


冷たい空気。金属。息をするたびに上顎に張り付く、何か異質なもの。


樫の木々の間にまだ微かな煌めきが漂っていた。あまりに儚く、クレントにはそれを本当に見ているのか、見たいだけなのか分からなかった。色の残滓かもしれない。残像かもしれない。ただの視覚の誤りかもしれない。


ヴァレリアがゆっくりと空いた手を上げ、指の環を押さえた。冷たい金属が自分を何か確かなものへ引き戻してくれるかのように。指の関節が白く浮き出た。口元に小さな白い雲が立つ。呼吸は浅すぎ、吐息は短すぎた。


「あれは本物だったの?」


もう一度口を開いたが、それ以上の言葉は出なかった。視線は空白の場所に留まったままだった。


本物だったのか。


クレントは身を起こした。肩が抗議した。あの咆哮の残響がまだのしかかっているかのように。寒さにもかかわらず汗が背中を伝った。何か掴めるものを感じるためだけに、双剣の柄をきつく握った。


「メリィアに報告する。すぐにだ」声が思った以上に荒れていた。「こんなことは無視できない」


もっと毅然と聞こえたかった。位を身に纏う者のように。しがみつく者ではなく。だが胸郭はまだ覚えていた。思考すら従わなかったあの瞬間を。魔力が体の中で萎縮し、隠れたような感覚を。


しっかりしろ。


ヴァレリアに動揺を見せるわけにはいかない。


彼女がようやく視線を上げた。赤い瞳にはまだあの硬直した困惑があった。理性が竜を見たことは認めていても、それを現実に委ねることをまだ拒んでいるような。


「一瞬、そのまま倒れるかと思った」彼女が囁いた。


クレントはその目を受け止めた。


「もしあれが余波だったとしたら - 」彼女が唾を呑んだ。「なぜあんなに近かったの?」


彼は再び木々の間を見た。とうに元通りに集まった闇の中を。何も起きなかったかのように。


「ここで何かがとんでもなく狂ってるからだ」と低く言った。「そして俺たちはその真ん中にいる」


返事は待たなかった。立ち止まれば思考に余白を与えすぎる。だから動き出した。


ヴァレリアが後に続いた。


最初は足音でその不安定さが分かった。強すぎる踏み込み。短い躊躇い。それから無理やりリズムを取り戻した。一歩。呼吸。一歩。弓は再び手にあったが、指のかかり方がいつもと違った。きつく。疑り深く。木そのものすら信じていないかのように。


二人は帰路についた。


森は変わっていた。


はっきり名指しできるほどではない。だが呼吸の一つ一つが違って感じた。空気が重くなっていた。帯電して、誰かが狭すぎる空間に魔力を詰め込みすぎたかのように。クレントのうなじの毛が逆立った。金属の味が舌に溜まり、そこに張り付いた。


そして一瞬、すべてが消えた。


魔力がゆっくり引いたのではない。ただ消え去った。世界がその瞬間、空洞に響いた。まるで森がかつての自分の形だけを纏っているかのように。湿った地面を踏む足音が異質に聞こえた。もう土の上を歩いているのではなく、土を模しただけの何かの上を歩いているような。


ヴァレリアが不意に弓を構えた。


クレントも同じ瞬間に見た。敵ではない。姿でもない。羊歯と幹の間の偽りの揺らめき。闇の中の短い痙攣。影そのものが足場を失ったかのような。


ヴァレリアが弦を引いた。指の間に小さな火花が集まった。それだけだった。炎のかすかな息吹。闇を試す程度の。


火花が跳ねた。


瞬きほどの間、矢尻で燃え上がった。貧弱だが、確かにそこにあった。


そして消えた。


ゆっくりと萎むのではない。揺らめくのでもない。ただ消えた。見えない手が二度の呼吸の間に掻き消したかのように。


ヴァレリアは弦を張ったまま保っていた。暗い矢尻を見つめている。煙を、熱を、何かがまだそこにあるという証を待っているのかもしれない。


何もなかった。


やがて矢を放たぬまま弦を緩めた。


「消えた......」


クレントは短く頷いた。皮膚の下には自身の魔力の馴染み深い疼きがあるが、外へ押し出そうとしない。何か目に見えないものが自分と空気の間に立ちはだかり、すべてを押さえつけているような感覚。


「分かってる」と言った。「そして戻ってくる時は、強すぎる形で来る」


ヴァレリアが彼を見た。一瞬、口を歪めて悪い冗談だったと認めてくれることを願うかのように。彼の表情がその望みを即座に奪い返した。


二人は歩き続けた。


最後の残光はすでに森から完全に抜け落ちていた。稀に梢の間から星が覗くだけ。遠く、淡く、まるで星ですらよく見たくないかのように。風が向きを変えた。最初はクレントのうなじを温かく撫でた。まるで地面から直接吹き上がるかのように。数秒後には、肩が勝手にこわばるほどの冷たさになった。


そして臭いが来た。


冷たく。刺すように。焦げた石に、硫黄の鋭い刺激が混じって。


クレントは足を止めた。あまりに突然で、ブーツの下の落ち葉が軋んだ。何かが見えたからではない。身体の方が速かった。あらゆる本能がこれ以上一歩も進むなと叫んでいた。目の前の密生した羊歯から視線を外さずに、後方へ手を上げた。


ヴァレリアが即座に凍りついた。


前方、森の縁からそう遠くないところで、下草がざわめいた。


逃げる獣ではない。


何者かがそこで位置を取っていた。ゆっくりと。慎重に。悠然と。


「動くな」クレントが息だけで言った。


背後でヴァレリアの呼吸が止まるのを感じた。


そして聞こえた。


乾いた軽い音。地面近くで、長い静止の後に関節が無理やり動かされるような。


下草が裂けた。


影が現れた。あまりに突然で、クレントの目はそれが来るのを見なかった。ただそこにいることを認識した。黒い角が細く白い頭蓋から伸びていた。滑らかで、鋭く湾曲して。だが最も恐ろしいのはその目だった。


螺旋状の虹彩。毒々しい緑と紫。ゆっくりと回転し、見つめるほどに視線が深く抉り込んでくるような。


引き裂かれた革のような翼が背中の後ろで開いた。その音は乾き、古く - 骨の上で湿った布を引くような音だった。その下に笑みがあった。広すぎ、静かすぎる。


悪魔だ。


その存在だけで空気が歪んだ。硫黄がクレントの鼻を焼いた。その下に甘ったるく腐った何かがあった。死を隠そうとして、かえって際立たせる香水のような。


隣でヴァレリアが鋭く息を吸い込んだ。


「上位......悪魔......」


「くそっ」


思考が形になる前に、クレントは彼女の前に出ていた。英雄的にではない。純粋に本能で。双剣が手に滑り込んだ。青い火花が刃を走るが、不安定で、いつもより弱い。火花がうまく飛ばない。もたついている。


悪魔が笑った。


錆びた鎖をゆっくり石の上で引きずるような音だった。その音がクレントの歯の奥まで引っ掻いた。膝が折れそうになる。暴力によってではなく - この存在から溢れ出す悪意によって。窯から噴き出す熱のように。


ここで揺らぐわけにはいかない。


悪魔が首を傾け、二人を眺めた。夜の退屈を紛らわせる獣でも見るように。笑みがさらに広がった。


「遊ぼうか?」


一瞬、世界が息を止めた。


そして悪魔の叫びが夜を引き裂いた。


黒い雷が放たれ、不自然に明滅する炎と絡み合った。木々の間を疾走し、樹皮を裂き、古の樫を破裂させ、木片を闇の中に撒き散らした。圧がクレントの鼓膜を叩いた。顎まで痛みが走るほど強く。


「伏せろ!」


ヴァレリアが後方へ身を投げた。幹が破裂する轟音、枝が打ち鳴らされる音、土塊と樹皮の破片が鈍く着弾する音が聞こえた。森が骨を折られるような音だった。


クレント自身は前へ出た。


賢明だからではない。この狭さで退けば、誰を先に取るかをあの存在に委ねることになるからだ。ヴァレリアは後ろにいる。それで十分だった。


瓦礫がブーツの下で軋んだ。空気は硫黄と焼けた木と掘り返された土の臭いで満ちていた。埃と闇の中で双剣が淡い青の弧を描き、悪魔に向かった。


教わった通りに戦った。


闇雲な突進ではない。まず短い試し斬り。間合いを読むためだけの。死角への一歩。二撃目はより深く狭く、反応を強いるように置いた。そしてもう一方の刃を即座に追わせる。相手が態勢を立て直す前に。


何一つ通じなかった。


悪魔は血肉ある者のように躱さなかった。そこにいた - 次の瞬間には半歩ずれていた。労もなく、あまりに滑らかで、クレントの目がその動きを理解した時には刃はとうに虚空を斬っていた。視界の端にちらつきが残り、空気に引く何かがあり、もう存在は別の場所に立っていた。


近すぎる。


クレントが腕を跳ね上げた。ぎりぎり間に合った。


悪魔の拳は彼を打たなかった。一瞬前に彼が立っていた地面を打った。大地が裂けた。苔と根を引き裂いて窪みが穿たれた。その衝撃がそれでも脚と腰を突き抜けた。大地そのものが殴り返したかのように。


「速いな」悪魔が笑った。「だが弱い」


クレントは歯を食いしばった。汗が襟に流れ込む。肩をさらに落とし、呼吸をさらに静め、歩幅をさらに小さくした。再び攻めた。今度は体ではなく、悪魔が回避に必要とする空間を狙った。左への偽動、視線をそちらに引きつけ、もう一方の刃を同じ拍子で首の高さへ。正確に。精密に。ほとんどの相手なら致命的に。


悪魔はただ微笑んだ。


そしてまた消えた。


指先に風を感じた。近すぎる。反射的に胸の前で双剣を交差し、魔力を注ぎ込んだ。青い稲妻が鋼の上を走ったが、細く、震えていた。悪魔の気配がその上に粘る霧のように覆いかぶさり、クレントが外へ押し出そうとするすべてを引き剥がした。


背後でヴァレリアの呼吸が聞こえた。制御されているが、鋭すぎる。弓を再び構えていた。隙を探している。喉。目。関節。


悪魔はまさにその瞬間に彼女を察知したらしい。クレントが次の一歩を踏み出す間にも、緩慢にその頭が彼女の方へ向いた。


ヴァレリアが弦を引いた。


矢尻に火花が跳ねた。震え、燃え上がり、食らいつこうとするように。


そして空気の中の魔力がそれを引き裂いた。


小さな閃光が無用に横へ飛び、倒れた樫の樹皮に食い込んだ。黒い焦げ跡が残った。それだけだった。


ヴァレリアが硬直した。


恐怖ではない。


認識で。


「おや」悪魔がかすれた声を漏らした。「もう一つの玩具か」


クレントが振り返った。


遅すぎた。


拳が胸の真ん中を打った。


打撃ではなかった。壁だった。


最初にあったのは衝撃だけだった。残酷に、すべてを押しずらし、胸郭ごと一度に内側へ押し潰そうとするかのように。そして乾いた、近い音で何かが折れた。肋骨。次の瞬間、痛みが熱く、眩く、上半身全体を貫いた。


よろめいた。


一歩だけ。


二撃目はその直後に来て、彼を完全に宙へ跳ね上げた。


世界が傾いた。闇。土埃。黒い枝の間の星明り。どこかで醜い音を立てて金属が裂けた。温かい血が脇腹に飛び散り、夜気に触れて即座に冷えた。


そして叩きつけられた。


肺の残りの空気が絞り出されるほど強く。目の前に星が弾けた。酒場で見つめ、物語を仕分けるような位階制度の明瞭な印ではなく - 痛みが大きくなりすぎた時に残す、白い、無意味な光。


息をしようとした。


出たのはかすれた喘ぎだけだった。


立て。


身体が応じなかった。


立てよ。立て。


「クレント!」


ヴァレリアの声が夜を裂いた。


頭を少し持ち上げた。即座に痛みが胸を貫いた。何か温かいものが脇腹を伝い、身体の下に溜まり、地面に沁み込んでいく。視界が明滅した。縁がすべて灰色にぼやけた。


ヴァレリアを探した。


その輪郭を見つけた。


その視線を見つけた。


逃げろ。


唇がその言葉を形作った。声は出なかった。あの屈辱的で掠れた喘ぎがもう一度だけ。


悪魔がゆっくり近づいた。


一歩一歩が意図的に置かれていた。落ち葉に鉤爪が残す音を味わうかのように。あの歪んだ笑みがまだ蒼白い顔に張り付いていた。


「守ろうとしたのか」かすれた声で言った。「可愛いことだ」


その存在の圧がクレントの胸郭を他者の手のように押さえつけた。刃を持ち上げようとした。腕が震えた。刃の一方から青い火花が一つ跳ね、即座に消えた。


悪魔が笑った。


そして何かが変わった。


悪魔にではない。


ヴァレリアに。


最初にクレントが聞いたのは、弓が地面に落ちる鈍い音だった。重く。決定的に。他のすべてに比べれば小さな音で、だからこそ深く刺さった。


ヴァレリアが武器を手放していた。


それから首を不意に横へ傾けた。


硬い音が空き地を切り裂いた。


気楽な伸びではない。人間の反射でもない。跳躍の前に身を整える獣の動きに近かった。


クレントは痛みと血に抗って瞬きした。彼女の筋肉が目に見えて緊張していた。微かな振動が身体を走る。慌ただしくはない。制御を失ってもいない。内側の何かが圧力に晒され、もう退くことを拒んだかのようだった。


周囲の魔力が反転した。


クレントにとっては、皮膚の下のすべての雷気を圧殺する粘い圧のままだった。だがヴァレリアの周囲では空気が空になった。流れもない。引きもない。応答もない。


まるで世界の魔力を押し退けたかのように。


赤い瞳が悪魔へ向けられた。


そこにはさっきまでの恐怖は一片もなかった。ただ冷たい怒り。暗く。抑制されて。あまりに澄んでいて、ほとんど静けさに見えるほどの。


何を......しているんだ......?


ヴァレリアが一度、深く息を吸った。


そしてクレントは鉄の味を感じた。


彼自身の血 - ついさっきまで温かく地面に流れていた血が、震え始めた。最初はほとんど見えないほど。やがてはっきりと。暗赤色の糸が苔と湿った土の上を這い、淡い星明りの中で濡れた光を放ちながら、彼女の方へ引き寄せられていった。穏やかにではない。呼ばれたもののようにではない。


従うもののように。


悪魔が足を止めた。


初めて、その顔から純粋な嘲りが一瞬消えた。完全にではない。だがそこには別の何かがあった。


興味。


血の筋がヴァレリアの手に集まった。凝縮した。層を重ねた。液体の赤から形が生まれた。稜。重量。そこから刃が成長した。凝固した命があらゆる自然の理に逆らい、致死の何かへ強制されるかのように。


金属のようには輝かなかった。


脈打っていた。


深い赤がその内を流れ、まるで中にまだ鼓動が囚われているかのように。


粘ついた唾液が悪魔の口から地面に滴った。


にたりと笑みを広げた。


「遊ぼうか?」


ヴァレリアの口が歪んだ。


微笑みではない。もっと硬い何か。もっと冷たい何かへ。声がより低く戻ってきた。荒く、鋭く。もう一つの呼吸が彼女の中に居場所を得たかのように。


「ええ......遊びましょう」


一拍。


そして彼女は消えた。


駆けたのではない。跳んだのでもない。


ただ、いなくなった。


次の瞬間、悪魔の真下で地面が裂けた。土と根と湿った苔が吹き上がった。暗い弧を描いて血が宙を飛んだ。あの嘲笑が化け物の面に凍りついた。


「何 - ?」


ヴァレリアが突然、目の前に立っていた。


二人の間に空気の入る隙間もないほど近くに。手の中で血の刃が脈打っている。指を暗い赤が走り、武器がまだ道具と傷のどちらであるかを決めかねているかのようだった。銀の髪の何本かが根元から深紅に染まっていた。


彼女が唸った。


喉の奥から出る低い音。生々しい。人間の身体にはほとんど低すぎる。


「私の男に手を出した - その遊び方が気に食わないの」


クレントはただ見つめていた。


これはもう、先ほどまで弓を構え、舞うような軽さで戦場を駆けていた優雅な狩人ヴァレリアではなかった。


悪魔の前に立っていたのは、狂戦士だった。


そして彼女は、ついに血の匂いを嗅いだのだ。

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