第13話
昼休み、学園の中庭に春の陽が差し込んでいた。
木々の葉が風に揺れ、生徒たちの笑い声が響くその空間で、私は“孤立”を味わっていた。
フィアナ様が、私の前に立ちはだかる。
その瞳に宿るのは、冷たく、鋭い光。
「……また、平民の分際で殿下に媚びていらっしゃるのね?」
その一言で、周囲の空気が凍る。
さざめきと視線が、一斉に私に向けられる。
私は、静かに俯いた。
演技だと分かっていても、胸の奥がひりつく。
「殿下と話すことが、そんなに楽しいのかしら? 身の程をわきまえなさい」
フィアナ様は、私の胸元をわずかに突いた。
軽い力だったけれど、周囲には十分すぎる“暴力”に見えただろう。
「貴女のような子が、セディリオ殿下に近づくなど……滑稽ですわ」
どれだけ心の準備をしていても、その言葉は鋭く、刺さる。
近くで見ていた女生徒たちは、恐れるように黙り込み、
一部の生徒は私をあからさまに避け始めていた。
そのとき――
「……もうやめてくれ、フィアナ」
セディリオ王子の声だった。
けれど彼は、それ以上は踏み出さなかった。
私と目が合うと、かすかに首を振る。
今は、まだ“そのとき”ではない。
私は会釈をして、静かにその場を去った。
背中に感じる視線、嘲り、疑念――
そのすべてを振り払うように、足を前へと運んだ。
⸻
夜。自室に戻り、結界を張って幻糸通信を起動する。
いつもの、低い声が響いた。
『よくやった。……明日、婚約破棄が決行されそうなんだな』
「そうです。」
(演技だけど……胸が苦しかった)
それでも、明日すべてが終わる。
そのための“舞台”は、整った。
「任務は予定通り進行中です」
『感情を交えるな』
通信が切れ、部屋には静寂が戻る。
私は窓辺に立ち、夜空を見上げた。
星が、ただ無言で瞬いている。
(本当に、これでいいんだよね……?)
心に広がる痛みを、ただ演技だと、自分に言い聞かせる。
――明日、すべてが変わる。




