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執務室を出てから、とりあえず来年度の予算案を取りに王宮のとある部署へ向かう。

中庭を通り抜けた方が近いため、花壇をすり抜けて中庭へ出た。

今の中庭は色々なクリスマスローズやビオラが多く咲いており

その中央には庭師のローズが土だらけになりなら剪定をしている姿が見えたので私は声をかける。

「ローズ、お疲れ様。剪定してるの?」

私の声で顔を見上げにっこりと笑った。

ローズという名前だけど彼女の笑顔はひまわりのようでお日様の様な人。

私はこの友人の笑顔が大好きでつい仕事中でも声をかけてしまっている。

「あら、サラサ。どうしたの?今から王宮にお使い?」

「そうなの、急にお使いに行くよう言われちゃって。まだこの時期だと早い仕事内容なんだけどとりあえず行く様に言われちゃって」

「何かあったの?」

私の表情をじっくりと見ながら立ち上がったローズは真剣な顔つきになった。

ローズは私の表情をよく見て声をかけてくれる友人だった。

私も彼女になら自分のプライベートのことを相談したり、彼女の相談にものったりお互いのことはよく知っているかけがえのない友人である。

私が結婚するために退職を考えていることもちろん1番に相談していた。

「そうなの。退職について上司に相談したらなんだか変な空気になってしまって。

だからグラウド様が予算案をとに行くように言われて執務室を出てきたの。

私、誰にも迷惑かけないように時期とか後継の引き継ぎのこととかちゃんと考えて報告したのに。なのに殿下はなんであそこまで機嫌が悪くなってしまったのか分からなくって。何かもっと効率よく手短に話せばよかったのかな」

書類を抱き抱えていた私は泣きそうになるのを我慢した。

仕事中とはわかっているけど、友人のお日様みたいなあたたかい笑顔を見て安心したかったから、

自分の中言い訳しながら中庭を通って王宮へ行くことにしたのだった。

「ついに言ったのね。あの上司に。勇気あるなぁ」

土だらけの手袋を急いで外し、ポイっと投げると私を優しく抱きしめてくれた。

抱きしめられるとポロリと涙が出てきた。仕事中だから我慢してたけど、すごく怖かったんだ、私。

あたたかい手のひらでゆっくりと背中をさすってくれる間、ずっとローズの胸の中にいた。

その時、背中をさすりながらローズがどこを見て睨んでいたのか、私はもちろん知りもしなかった。


ローズに慰めてもらって元気を取り戻した私はいつも通り仕事をこなし、

落ち込んでいることを誰にも悟られないように深呼吸した。

仕事中にプライベートのことはもちこむべきではないのよね。

すれ違う同僚ににこやか挨拶しながら徐々に自分を取り戻す。

顔を上げて前に進むと、曲がり角から会いたくない人が飛び出てきた。

「よう、サラサ。この時間にこんなところいるなんて珍しいな。どこまで行くんだ?」

ニヤニヤしながら近寄ってくるのは王宮騎士団に所属している脳筋バカことジャスパー。

以前からしつこくて気持ち悪い。最近は王宮所属なのに何故か遠方に行ってたから顔を見なくすむとホッとしてたのになんでこんなところにいるの?

表情に出さないようにしつつ、

「あなたには関係ありません。通してください」

と、脳筋の脇を通ろうとするも腕を掴まれた。こいつに紳士な対応を求めても無理なことはわかっているけど、流石に腕を掴むのはどうかと思う。

「ちょっと、話してください」

きつめに言ってもニヤついてる。きもちわるっ。

申し訳ないけど顔を見たくない存在なのに顔を近づけられ鳥肌がたった。腕を振り解こうにも無駄に筋肉はあるため、びくともしない。

今まで待ち構えられたり、後ろからついてこられたりして声をかけらることはあっても、

こんなに至近距離に来られることはなかったから油断していた。

「なあ、このあと時間あるだろ?ちょっと話さないか?」

ローズと話す時間はあってもお前と話す時間はないんですけど。

徐々に廊下の隅の方まで追い詰められ、気がつくと逃げ場がなくなっている。

上司は機嫌悪くなるわ、嫌な奴から追い詰められるわ、最悪だわ。



顔を下に背けどうしにかして逃げ出そうともがいている瞬間、冷たい空気を感じた。

そして吐く息が一気に白くなった。




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