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高嶺の花が入り浸る  作者: ゆー
二人で紡ぐ『これから』のこと
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すーろろデイズ

猫の日

皆様、未だ肌寒い日が続く今日此の頃、如何お過ごしでしょうか。ごきげんよう、藤堂蓮の妹・翠でございます。皆様からはすーちゃんと呼ばれておりますが、みどりでございます。


特にこれと言って理由もございませんが、本日は私の他愛無い日常を少しばかり紹介させていただきたく存じます。


決して、とある姉さんが


『あー…すーちゃん成分が足りない。足りないわすーちゃん成分名付けてスーチャミンが。…まずいわね。このままでは私、ノクターンかムーンライトに溢れんばかりのリビドーをぶつけたあることないこと盛りまくったなぎ×すー百合百合あだるてぃ小説投稿してしまいそう。でも許されるわよね?義姉妹だもの。私達の間に要らなくない?プライバシー。二人で捨てちゃいましょう、倫理。堕ちましょう、禁断の義姉妹丼ルー…あ、いたたたちょっと何するの蓮、離しなs』


と言い始める出来事があって、このままでは私は彼女の己を満たすことだけを目的とした性欲の糧とされるかもしれないと、そこはかとない危機感を抱いた訳ではございますん。せん。付け加えておくと、淫猥な要素もございませんので、それを目的に読み進めることはオススメいたしません。


それでは、始まり。始まり。

















「参ります」


今日も今日とて学生としての務めを無事果たした夕方。

兄さ、んと共に下校して、途中で姉さんとも合流した私達は、ちょっとした買い物を済ませた後、無事に兄さんの自宅に帰ってきていた。


「にゃ?」


今、私は絶賛・苦手を克服するべく、未来のお友達、いや家族?と距離を縮めるべく奮闘している真っ最中である。


『翠。頑張ってー』

『ロロ。ゆっくりね』


目の前には、状況をまるで理解していないかの様なくりくりとした無垢な瞳をこちらに向ける白猫。

少し離れた場所では、姉さんがごく当たり前の様に、ソファーに座る兄さんの膝に寝転んで寛いでいる。

枕にされている兄さんは、文句を言うのも諦めたのか、やれやれと言った感じで膝に乗った彼女の頭を優しく撫でる。その姿は、かつて私を可愛がってくれた昔の姿を思い出す。唯一異なるのは、その表情に私に向けてくれたものとは明らかに異なる情が乗っていることだろうか。


決して、『最近妹の前でも平然といちゃこらする様になりましたね…』などという感情は持っていない。多分、姉さんはともかく兄さんは自覚していない。


「な〜」

「くっ…!!」


しまった。あちらに気を取られている場合ではないだろう翠。全ての意識を目の前に集中するのだ。ここから先は少しの油断が命取り。ここは戦場。力こそが全ての、弱肉強食の理が支配する世界。弱い者から狩られてしまうのだから。


「ほ、ほほ、ほ〜らロロさん。じゃらしですよ〜。存分にじゃれていいんですよ〜…じゃれじゃれじゃれれ」

「……………」

「そうそうそのままその…ままぁ……良い子ですねぇ〜…そのままゆっくり……ゆぅ〜っくり……」

「……にゃー…」


素晴らしく腰の引けた私が差し出した、買ったばかりの猫用の玩具に興味を持ったロロさんが、ゆっくり、一歩一歩躙り寄ってくる。その可愛らしい姿に胸躍るのと同時に、過去のトラウマが刺激されて背中を冷たい汗が流れ落ちていく。


決して、猫そのものが嫌いな訳ではない。寧ろ触ってみたいし撫でてみたい。主に肉球とか、肉球とか、肉球とか。私の目の前でこれ見よがし(主観)にロロさんを膝に乗せて撫でる二人の姿を、幾度羨ま恨めしいと思ったことか。

けれどそれでも、あの日の出来事は、幼い私にはあまりにも衝撃的すぎて。もふもふがもっふもふでふもっふだった。


『あの子、私よりも君に懐いてきてる気がするわね、最近…。…何かした?』

『心が通じ合ったんですねぇ』

『そ。ところでキッチンの奥に巧妙に隠されていた高級猫缶の山について大切なお話があるのだけど』

『………………………………』

『こっちを見なさい小僧』


依然として2人はほのぼのとした雰囲気で和やかに話している。

よく分からないけれど、きっと私では思いもよらない様な大人な会話をしているのだろう。


「なぁん」

「なあんっ!?」


気づけばすぐ前で聞こえてきた鳴き声に、慌てて意識を覚醒させる。

翠。またお前は。2人の仲良しな姿にほんわかしている場合か。前を見ろ。今目の前にはお前の――


「にゃにゃにゃっっ」

「ひいぃ何ですか突然の高速反復横跳び!?私達の間にその様なルールは無かったではないですかぁ!!どうしてそういうことするのぉ!!?」


『『……………』』


ああああ゙やっぱり無理です無理です無理無理無理可愛いですけど可愛いですけどぉ!!


「にゃあぁあぁあぁ」

「でゅんっ!?」


『『……………』』


うわぁぁ今度は横にコロコロ回り始めたぁ!予測不可能!そして回避困難!ロロさんが何を考えているのか何も分かりましぇん!!


「うなー」

「あひゃいえっふぉお!?もふもふがっハチャメチャに押し寄せてくるぅ!!暴力はっ!暴力はいけませんロロさん!!話し合いましょう!?話を!対話を!!和睦をぉっ(←?)!!」


『『……………』』


ひえええいきなり飛びかかってきたぁあてしてし肉球が私の頬を叩いてるぅ。

気持ちいい怖い柔らかい恐い可愛い恐ろしーーーい!!


「………」

「ほあぁ゙ぁ゙お手々があああ!!この柔らかがあぁっ!私を駄目にしゅるぅう↑!!」


『『………………』』


「なあん」

「ピッッッッッッ…」


仰け反りすぎて堪らず後ろに倒れ込んだ私の顔を覗き込むロロさん。

まぁ落ち着け、とでも言わんばかりに私の肩をぽんぽん叩いているが、今の私にそんな冷静な判断が出来る訳もなく。


「ロロさんにぃ!!捕まってぇ!!ロロさんがぁ!!画面端ぃ!!まだ迫るぅ!!」

「…なんなん??」




『ロロさんが決めた』

『どちらかというと、キマってるのうちの妹なんですが…』

『…………助けないの?』

『だって手出し無用って言われたし……後まぁ、どこまで壊れるんだろうなぁ……って思って、つい』

『止めなさいな』

『そっちこそ、そのカメラ下ろしてくださいよ』

『いいの、私は。純粋に可愛いからやってるだけだし』

『後で送ってください』

『お主も好きよのぉ』




カンカンカン。ゴングの音が鳴り響き、うつ伏せに倒れ込み放心する私の腰の上で、無傷の勝者たるロロさんが退屈そうに欠伸する。決着を見届けた二人が苦笑い混じりに近づいてくる気配を、視界の外から感じ取った。


「うう……兄さん、兄様ぁ……お兄ちゃぁん……」

「ここにいるよ」


「こーら、ロロ。あんまりいじめないの」

「うにゃ…」


兄の脚に縋り付く私を横目に、困った顔で己を抱き上げる姉さんを非常に不服そうなお顔と声で睨むロロさん。

確かに、悪いのは心の弱い私なのだけど、でもロロさんだって明らかに途中から遊んでた気がしなくもないので、その程度は甘んじて受け入れてほしい。


「…やっぱりまだ早かったかな?」

「う、うぐぅ……」


横にしゃがみ込んだ兄さんに、幼子をあやすかの様な慈愛の籠もった微笑みと共に優しく頭を撫でられて、私の中に悔しさが溢れていく。

私が今こうして兄さんと仲睦まじく過ごせているのは、姉さんのおかげだ。姉さんが兄さんを変えてくれたから、いや、戻してくれたから、私は今ここにいる。

そしてまた、兄さんも一歩踏み出してくれたからこそ、昔の様な関係に戻ることが出来た。そう、二人は今も成長を続けている。


なのに、私だけが何も変われていない。


ただ、流されるままに甘やかされていただけ。

呼び方を変えたから何だというのだ。二人はそんなこと、微塵も気にしてなんていないのに。


「……いえ」

「……ん?」


駄目だ。


「もう一回、お願いします……っ」


このままでは、駄目だ。

私もまた、変われていることを証明しないと。何も知らずに泣くことしかできなかった子供からは卒業しないと。

そうしないと、二人にどんどん置いていかれてしまう。

もう、置いていかれるのは嫌だ。


「すーちゃん…」


私の決意の籠もった瞳を見た姉さんが、ロロさんをもう一度床に下ろす。

未だ若干不服そうではあるものの、ロロさんも姉さんを見てこの場の何かを感じ取ったのか、暴れることなくその場で大人しくしてくれていた。

それを見て、兄さんと姉さんは無言でゆっくり、私達から距離を開けた。


「ろ、ロロさん!」

「……」


くしくしと手で顔を洗う彼女にもう一度、意を決して手を伸ばす。


手が震える。


思い出すのは獣の匂いと、大量の毛で塞がる視界。

何故、自分がこんな目に。あの時は、ただただ恐怖しか無かった。



そう、思っていた。



「っ」


小さな頭に、指先が触れる。ロロさんは、黙ってなすがままにされている。

掌を乗せる。

そっと力を込めて、その頭を撫でた。


一回。


二回。



「……………柔らかい」


それは、あの日感じたものと同じ。


「………………温かい…………」


確かに存在した、恐怖とは別の異なる感情。


「割と自慢なのよ?その毛並み。ね?ロロ」

「………にゃふ………」

「………」


からかう様な声色に、けれども満足そうに鼻を鳴らす彼女にもう片方の手を伸ばして、私はその身体をそっと抱き上げた。

くりくりまん丸の、つぶらな瞳と目が合う。

その時、何故だろうか。


今までも何度も会ったことがあるというのに、初めて彼女という存在を知った。


そう、感じたのだ。


「姉さん」

「ん?」

「ロロさん、温かいです」

「ふふふ」

「凄く柔らかいです…」

「…………ふ、ふふふ」

「(今、体重が頭を過ったな…)」


何故かちょっと笑顔が引き攣った姉さんに気付くことなく、私はロロさんを撫で続ける。ともすれば鬱陶しくもあるだろうに、彼女は目を閉じて、黙ってそれを受け入れてくれた。


「(ああ)」


そして今更、漸く気づくことが出来た。


そうか。彼女は最初からずっと歩み寄ろうとしてくれていたのか。

怖がられても、遠ざけられても。


姉さんの家族になるであろう、私と、ずっと。


何て強くて、優しい。

私とは正反対だ。


「ロロさん」

「にゃ?」




「…改めて、これからよろしくお願いします」




「………にゃあ」


返ってきたその小さな返事を肯定と受け取り、私は笑みを溢れさせてロロさんを抱き締めた。

新しく出来た家族。それは、今まで感じたことの無い優しさと温かさを持ち合わせた、騎士の様に立派な方だった。


この先、私達は兄さんと姉さんとも負けず劣らずの仲睦まじい関係になるのだけど…



それはまた、別のお話。











※百合百合あだるてぃ小説は無いです。

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