2話 指令
「レイ!」
映画スター似の軍隊長レイを、女がよびとめた。
長い黒髪をなびかせながら、スラリと立った美女。
宇宙船の軍副官、ミアだ。
「招集よ」
「アタシたちもですか?」
レイの影にいた部下のひとり、色黒でそばかすだらけのタニアがめんどうくさそうに聞く。
「そうよ、来て」
ミアは、カツカツとヒール音をたてながら歩きはじめた。
うしろからレイが聞く。
「用件は?」
「知らない」
「ロンからか?」
「えぇ、急いでたわよ」
彼らはエレベーターに乗りこんだ。
エレベーターが光につつまれながら上昇する。
最上階につくと、船長室のゲートが開いた。
そして、奥のほうにはデスクに座った船長ロンが待ちかまえていた。
………………………
「つまり、宇宙船がAIに乗っとられて、ワームホールに向かってるってことね。このことを知っているのはだれですか?」
ミアがロンに聞く。
「知っているのは、今のところコックピットのクルーと、君たちだけだ」
「そのワームホールは、どこへつながってるのかしら?」
「分からない。あらゆるデータを調べたが、情報がない」
「だれも知らない宇宙空間に飛ばされる……か。で、もうすぐワープに入るんですよね?」
タニアが、興味なさそうに聞く。
「あぁそうだ。ワープに入ったら宇宙船からの脱出はできなくなる」
「侵入もね」とミア。
「とにかく時間がない」
「そもそもこの船って、補給星に向かってたんですよね。5時間以上ワープする燃料なんか残ってるんですか?」
「補助燃料を使えばワームホールまではもつ。ただ、そこで燃料は0になる」
「ワームホールに入ったら最後、帰ってこれないってワケね」
「わー、ちょっとヤバくない?」
「さっきからぜんぜんヤバそうに聞こえないんだけど」
さめた目でタニアを見るミア。
「できれば、この件は内密にかたづけたいんだが……」
ロンがそう言うと、小柄なタニアのうしろで、イスをきしませながら座っていたダンが、眉をひそめて聞きかえした。
「というと?」
「知ってのとおり、この船は旅客船でもある。客がパニックになって騒ぎだしたら手がつけられなくなる」
「それはそうね」と、ミア。
「どうかな、それは」
相撲とりのような巨漢のダンが、心配そうにつぶやく。
タニアもダンに同意した。
「ムリだよね、ワープして5時間なんて、ぜったい隠せないと思いますけど」
そのとき、宇宙船がほんのすこし振動した。
「今のは?」
「……」
ロンにもわからない。
「で、なにをすればいい?」
レイがたずねると、振動がとまった。
ロンは、レイをまっすぐ見て言った。
「ワープに入る前に、AIラースを破壊してほしい」
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