つなぎとめるもの
短編小説なのに こんなに続けていいものでしょうか?
そろそろ 終わりに向けて話を考えなくては・・・・
患者5人 職員2人で 病棟から一階の温室中庭へやってきた
年寄り患者ばかりで 心から楽しそうに このちょっとした外出を喜んでるようだ
廊下ですれ違う職員や 顔見知りの患者に 過剰なほど元気に声をかけている
私は 一番後ろを職員と一緒にゆっくり歩いている
リラは黙って 私の肩に座っているが 表情はなくまっすぐ前を見ている
中庭に近づくにつれ 小さな人々がリラを一目見ようと ずらりと集まっている
人数は30~40人ほどだろうか
一つの建物にこれだけの不思議な人々が住んでいるのは異例だ
この人々が リラを崇めそして閉じ込めているのだ
老若男女 妖精も悪魔も混じっているが みんなけん制し合っている
中庭には 季節と関係なしに いろんな花々が咲き乱れていた
小さな池もあり そこには金魚も泳いでいる
ちょっとした花園・・・・・・・・ 天国みたいな空間・・・・・・・・・
そこに似つかわしくない 元気な年寄りとわたし達
はしゃいでる人をよそ目に 私とリラは静かに ベンチに腰掛ける
リラは大勢が見守る中 花園に降り立ち その姿は まさに 「妖精」だった
美しく 見ていても飽きることのない容姿
流れるような長い髪の毛の一本一本まで 神経を集中させ
ゆっくり長いまつげを伏せて 花々からエネルギーを蓄える
神秘的なその姿に ギャラリーは感嘆の声をあげ 見守ってる
遠くでは 花を世話している小人が 大はしゃぎでその様子を仲間に自慢している
中庭にいれる時間はせいぜい20分
この時間が 彼女の命をつなぎとめてる
患者が 中庭で過ごすのに飽きてきたころ リラにゆっくり近づく者がいた
悪魔と妖精のハーフで この集団を取り仕切ってる男だ
口がうまくて 顔も良いのだが 女好きだ
手当たりしだい気に行った女は 自分のものにしている
独占欲が強いが 口がうまいのでいろんな交流を持っている
中身は軽薄で小さい男だ
リラを自分のもにしたいのだが 一向に なびく気配はなかった
それどころか 口もきいてもらえない状況だったが 今日もめげずに話しかけてくる
「やあ、 ちょっとは元気になったかな?」
短めの髪を立ち上げ スマートで背の高い彼は 屈託のない笑顔で近づいてきた
目も大きく整った顔立ちの彼の登場に 女性ファンの黄色い歓声があがる
エネルギーを補給し終えたリラは 声の聞こえた方向に視線を移すが 返事はしなかった
美しい顔にも変化は見れず また 他のところに視線を落とした
その様子に見惚れていたが 彼は 返答が来るよう必死で話し続けていた
リラが振り向いてくれるまで お世辞を行ったり 脅したり とにかく彼の出来る
ありとあらゆる手法で ずっと喋り続けている
「不便だろうが ここに来れば 質の良いエネルギーが得られるよ
君さえよければ 結界を解いてくれれば ここに頻繁に連れ出すことも出来るのに・・・」
その発言に外野が参戦する
「ノベルト! その花はお前が育ててるんじゃないぞ」
小さな 子供の様な老人の様な花を世話しているテリーがそう言うと
「分かってるよ」
と 適当に愛想笑いを彼に向けていた
リラは 長いまつげを伏せて背を向けてしまった
ノベルトの提案には 全く応じる気配はなさそうだ
その様子にため息をつきながら
「いつまでも そんな調子だと 命が尽きてしまうぞ
いい加減 意地を張るのをやめて 俺と一緒になれば 何かと自由になれるのに」
みんなの姫に ノベルトのこの発言は 大きなブーイングを受けた
ノベルトにいろんな野次が飛んでいる
「・・・・・それとも 負のエネルギーで 悪魔に転身するという考えもあるけどな」
小声で冗談交じりにそう言うと
リラは ゆっくり目を開けて ノベルトを見据える
エネルギーを少しなりとも蓄えたリラは 神々しく美しさも増している
柔らかそうなきれいな形の唇は開くことはなかった
ただ 正面から見つめられたノベルトは 目を離せなくなり 虜になっていた
時間が来て 引き上げる準備を始めた患者達と一緒に 私も 立ち上がる
リラにそっと近づき 抱きかかえると
その様子を誰も 止めることもなく 姫を見送る 人垣が自然に作られていた
病棟に向かって歩き出した最後尾に並んだ私は リラに話しかける
「また 中庭に行こうね」
リラは私を正面からじっと見つめ
「私を開放してほしい」と はっきりと言った
困った顔で私は見つめ返す
「あなたがいなくちゃ 私は生きていけない」
「こうしていたら いずれ私は死ぬわ」
力ない彼女の言葉に
「だから その時は 私も一緒よ 覚悟は出来てる」
何度も リストカットした手首を軽くあげて彼女に見せると
リラは泣きそうな顔で また黙り込んでしまった
そんな顔が見たいわけじゃないのに・・・・・・悲しませたくないのに・・・・・・




