第4話
私と義父殿との関係は悪くはなかったと思う。
師範の勧めもあり、道場帰りに小城家に訪問し、手ずから技を教えてもらうこともあった。また、家伝の小太刀術を教えてもらうこともできた。
「婿殿、平時であれば大刀を使うこともできる。しかし、城内では脇差ししか持っておらぬ場合が多い。その際こそ我が家伝の小太刀術が役立つであろう。」
そういいつつ教わった刀法は、我が身を挺して相手を取り押さえつつ、脇差しにて心の臓を一突きにするものであった。
「その昔から城中においての刃傷沙汰は何度か起こっておる。調べたところ、斬撃で死んだものはおらず、いずれも刺突による傷で死んでおった。脇差しの間合いは狭い。だからこそあえて相手に密着し、刺突による一撃で仕留める呼吸を身に付けられよ。」
元服前のため、未だ大刀を持たない私は、小城家の座敷において脇差しの抜刀から刺突までの流れを体に教え込まれた。
家伝の技を教えてもらうことに、一族として認められたと嬉しく思う反面、初顔合わせから一度も幸どのに会えないことに気落ちしていた。
一度だけ、義父に会わせて頂けるようお願いしたことはある。しかし、義父は
「未だ武家の妻女となる教育は済んでおらぬ。以前のような事があると小城家の沽券にも関わる。婿殿にあっては今しばらく待ってもらいたい。」
そういわれると返す言葉もなく、粛々と稽古をつけていただくだけに留めた。
今は会えなくてもいずれは一緒になれる。そう考えていた私が病にかかったのは元服してすぐのことだった。




