24捕縛されたボス
「依頼してきたのはどんな奴だ?」
「それが、フードを被っていて顔も分からなかったんだ。でも、声からして男だ」
「いつ、依頼されたんだ?」
「確か、実行する2日前くらい。だったと思う」
「思うだと?ふざけてるのか。はっきりと答えろ!この手一生使えなくしてやるぞ」
ダイゾウ師匠が、バールさんの右手を掴み威嚇する。
「ヒィ〜!2日、2日前ですー!」
怯えながら話すバールさん。
「次の質問だ」
しかし、ダイゾウ師匠はそんなのは気にせず、更に質問をしていた。
それにしても、まさか先日起きた事件の犯人と遭遇するなんて驚いた。
と言うか、ダイゾウ師匠もよく知ってたよ。
「最後の質問だ。町に火を放った実行犯はどこにいる?」
「それがあの日以来、見てねーんだよ。きっと兵士にバレて捕まっちまったんだ」
「嘘は無いだろうな?」
「は、はい!」
「・・・ふむ」
再度、凄むダイゾウ師匠にバールさんが答えると、ダイゾウ師匠は何かを考え始める様な仕草をする。
やがて、ダイゾウ師匠も信じたのか、
「分かった。質問は終わりだ」
その言葉通り、酒場内からピリピリした雰囲気が消えた。
ホッ、
良かった、これで気が楽になった。
でも、と僕はその実行した犯人の事を考える。
実行した犯人は、まだ捕まっていないんじゃないかなと。
もし、犯人が捕まったなら、城内でそういう情報が入ってくるはずだけど、それがない。
なら、まだ犯人は何処かに隠れているか逃げているかしているんじゃないかな。
勿論、まだ僕の耳に入ってきていないだけの可能性もあるけど。
「ふん。しかし、こいつチームのボスだって言うのに、そんな事件を起こした下のその後の動向を把握出来ていないとは、とんだポンコツだな」
「す、すいやせん」
バールさんを見下しながら言うダイゾウ師匠に、もう抵抗をしなくなったバールさんが、ヘコヘコして頭を下げる。
「さて。おいレヴィ、コイツを突き出しに屯所へ行くぞ」
「はい、分かりました」
僕は、バールさんを連れたダイゾウ師匠と一緒に酒場を出て屯所へ向かい始めた。
道中、屯所が小さく見えてきた時に、バールさんが捕まりたくないと暴れ始めたが、ダイゾウ師匠の重そうなゲンコツを頭に食らうと大人しくなり事なき終えた。
◇
「ふぅ、今日は精神的に疲れたな」
僕は、自室のベッドで溜息なのか深呼吸なのか分からない様な息を吐く。
ダイゾウ師匠とはバールさんを引き渡した後に少し会話をして解散した。
「あ、そう言えば、何でダイゾウ師匠は僕が治癒師だったこと知っていたんだろう?」
僕は、なんとなくそんな事を思い出す。
今回、タワロさんの治療に呼ばれたけど、これまでダイゾウ師匠と一緒にいて、魔法を使った事なかったと思うんだよね。
「・・・まぁいいや。どうせ、いつでも聞けるんだしね」
とにかく疲れすぎた僕は、考える事をやめると、枕に顔を埋める。
柔らかい枕はとても心地良く、僕は一瞬で夢の中へと落ちた。
次の日。
ボーッとしながら部屋でご飯を食べていたら、呼び鈴が鳴った。
「誰なの?こんな朝早くから」
僕は、まだ怠い体を動かし、玄関まで行くと扉を開けた。
すると、そこには少し急いでいる様な仕草をしたエイトがいた。
「エイト?なにか、ってうわ〜」
何かようと聞く前に、僕の腕を握るとダッシュで廊下を走り出したエイト。
「ちょ、ちょっと」
僕が非難の声をあげると、ようやくエイトが口を開いた。
「いきなりで悪い。すぐに治療が必要な奴がいるんだ」
それを聞いた僕は、すぐさまお仕事モードに入る。
「分かった。場所は?」
「牢屋だ」
と言う事は、囚人さんかな。
たまに喧嘩を始める人がいるらしいから、それで誰か怪我をしたかな?
「昨日、収監された奴なんだが。今朝、監視員が見回りに行ったら、部屋で頭から血を流し倒れていたらしい」
え、昨日?
もしかして・・・、いやでも昨日はバールさんの他に1人収監されてるし、まさかね。
「あの、その囚人さんの名前わかる?」
僕の問いに、エイトは少し顔をあげ考えた後、僕の方を見て答えた。
「名前は、確かバールだ」