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元・暗殺者の新聞屋  作者: きいまき
2/8

軽く不法侵入罪

「ども~、王都新聞です。突撃お部屋拝見~、の取材に来ました」


 口を塞ぎ、馬乗り状態で、自分の真下にいるルデュロス第2王子にウィプは言った。


 真下にいるルデュロス第2王子は、本気になれば、ウィプなど簡単に押し退けられそうな体格をしているのに、全く抵抗する気配がない。

 ただほんの少し、言葉の内容はともかく、耳元に囁いたのがくすぐったかったのか、身じろいだだけだ。


「殺る気はないわけ。分っかるかな~、王子様?」


 すると即返で、頷き。

 目と目を合わせて、一応確認。


 ふむ、やっぱり頭は良さそうだとウィプは思う。

 お部屋拝見を、王族の誰にしようかな~と、的をしぼっている時に、抱いた感想は正しかったらしい。


 これから手を外しても、圧し掛かるのを止めても、ルデュロスは騒がないだろう。

 ウィプは自分の直感に満足した。


「んじゃ、ちょ~っと、部屋見学させて下さい」


 ウィプは着心地がとっても良さそうな、ルデュロスの夜着から離れた。


 布団はウィプが普段使っているものの、倍は膨らんでいる。

 寝台のスプリングも効いていた。


 さぁ、物色物色っ。


「……ここ数日、見ていたのは君か」

「あ~、やっぱ気づいてた?」


 気配は消していたつもりだったし、距離ばかりではなく、人や物が2人の間を隔てていたはず。

 それなのにウィプは、ルデュロスと目が合ったような気がしていた。


 部屋の物色だけなら、留守の時にすればいいのだが、そうせずに本人と直に会いたくなったのはそういう理由だ。


 たぶんウィプの影の一族としての、腕が落ちているのだろう。

 ちらちらと元・同業者っぽいのがいて、それらはなんなく通過出来たし、骨の髄まで染み込んだ技だと少し自信を持っていたのだが、案外そうではなかったらしい。


 ともかくネタ探しで、こんな風に忍び込むのは、今回で最後にしようとウィプは決めた。



「取材協力、ありがとうございました。失礼しま~す」


 自分の視線に気付いたくらいのルデュロスだから、元・同業者っぽい者の事は教えなくてもいいはず。

 もし気が付いていなくても、見張られ・狙われている事を教える義理はオレにはない、とウィプは口先だけの礼を述べる。


「待ってくれ」

「ん?」


 すると、呼び止められた。

 一応、去る前だったので、ウィプは止まってみる。

 しかししばらく待っても、ルデュロスからは何も続かない。


「良い夢を、王子様」


 安眠妨害したのは自分なのだが、まぁそう言っておこう。

 今度こそ、ウィプは王子の部屋から姿を消した。





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