第40話 場外戦ふたたび!?
ついにたどり着いた、鈴ノ口鍾乳洞深部の意味ありげな空間。
ただし、そこにマ・ラの姿も足跡たりえる証拠もなく、トリニティたちは行き詰まっていた。
「諦めるのは早いワ! まだ大きなナゾが残ってる。マ・ラはどうやって、ここに来ていたのかナ?」
先ほど、みずから「糸口」とは名ばかりの絶望的事実を示したにもかかわらず、ペルウィアは居直って明るい声で叫んだ。
一方のトリニティは徒労感から、まじめな思考をやめて小さなリアクションをとるにとどめた。
「まあ、そりゃ、当たり前にどっかで地上とつながってるんだろ。そうでなくともマジカルパウアーでマジカルな感じにマジカルできるだろ」
「投げやりに答えるな! 移動の方法じゃなくて、移動の回数の話だヨ。いくら方法があっても、こんな暗ければ手間もかかりそうな場所に、デカいカエルは何度も来たがらないでしょ?」
「そういやマ・ラってカエルなのか……」
物思いにふけるトリニティをよそに、ペルウィアの発言意図を、アルウゥスは推しはかった。
「確かに、アクセスのしやすい場所が怪しいよね。でも……マ・ラは、人間が暮らすような環境が好きなはずだし……それこそ、双成町の住宅街みたいな! ボクはそう思うなあ」
「双成町にいる、っていうのはワタシも同意だワ」
マ・ラに詳しい尻の大きな宇宙人たちが、捜索の方向性をいっせいに決めてしまった。
トリニティもここまでの長ったらしい話に辟易する。
そして深呼吸の後、宣誓するように口を開く。
「住宅地ってのは考えたくないが……双成町にいるとしたら好都合だ! 双成町は俺の庭だ、マ・ラだろうと何だろうと絶対見つけ出せる!」
トリニティの強気な発言が、議論に決着をつけた。
3人は巨大バエのマジモスを中央にゆるやかな円陣を組み、覚悟が決まった表情でうなずき合う。
「じゃあとりあえず、トリニティとアルウゥスは双成町で足の調査。ワタシはHCCで、監視とデータ精査の頭の調査」
「ああ。わかった」
「それじゃあ……作戦開始ッ!」
アルウゥスが号令する。
ペルウィアは悠然たる笑顔を貼り直し、トリニティたちを「穴」の純白にかがやく出口へとみちびく。
岩陰にかくれた「穴」へ、ペルウィアが先んじて入っていく。
残り全員もその後ろに続いた。
場所からはすべての明かりが消え、完全なる闇へと沈没した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
時刻は、午前10時を少し過ぎたころ。
「穴」という超時空的現象を使って、暗い洞窟の中を一瞬にして出ると、トリニティの体内時計は軋みを上げていっきに朝日差す景色に順応する。
時差ぼけにも似た感覚が全身を駆けめぐった。
「どこだ? ……川か?」
トリニティが日光にくらむ視界をゆっくり開くと、まずアスファルトの色。
次に、大きな透明な水の流れが、きらきらと光を弾くようすが認識できる。
河川らしい場所の上を見ると、護岸ブロックが敷き詰められ、そのまた上にフェンス越しに人の行き交う道路があった。
「おいペルウィア、ここどこだよ……」
「えっとぉ……ごめんネ、(『穴』の)出口をつくる場所、間違えちゃった! 双成町ではあるんだけどネ」
臆面もなく開き直るペルウィア。
トリニティが急いで近くの護岸ブロックの斜面をのぼる。
道路に出る。
それは主要な自動車道路から見た、脇道のような場所であり。
民家を越え、歩いて5分程度のところに、第二みもみじ商店街の屋根付き通路が広がっている。
「……確かに。ペルウィアでも凡ミスすることあるんだな」
むしろ、これから調査を始めるうえでこの場所は中継地点として都合がよかった。
ペルウィアは苦笑いしているが、何か深い考えがあっての判断なのかもしれない。
からだをピンクに発光させ、自身らの来た「穴」を抹消したペルウィアは、トリニティの鶏マスクへ向き直った。
「気を取り直して。ワタシは動物園にいるから、マ・ラのことで何かわかったら――ゼッタイにッ!! 行動する前に連絡してネ?」
「わかったよ……。ク・コロのこと、悪かったな」
ペルウィアの威勢に負け、トリニティはついに謝罪した。
それから、各人はざっと揃って、各人に背を向ける。
互いのために。
互いの仕事を手にとって。
屋根付き商店街の方角へ歩くトリニティの姿は、まさしく「戦士」の勇ましさと自信をかもし出していた。




