第41話 はずむ胸、もげる乳
突如、トリニティの目の前にはち切れんばかりのデカメロンをぶら下げてあらわれた、派手な髪色のツインテール美少女。
ただのトリニティファンの1人と安心したのもつかの間、彼女は予想外の言葉を発した。
「あの、デカいカエルっていうのはもう見つかりましたか……?」
「なッ、なぜそれをッ!」
トリニティは大げさにおどろく。
もっとも、盛大な前振りとはうらはらに美少女の目的とは、意外とあっさりしたものだ。
「色んな人に聞いて回ってるんですよね。あの僕、高校の新聞部に入ってて、情報集めとかまとめるのとか得意なんです! 僕にも手伝わせてください!」
美少女のそれは、言うなればセルフ・ファンミーティングだった。
とはいえ、アルウゥスの奇策によって情報収集は大成功を収め、今後も2人での聞き込み体制のまま問題はないはずだ。
「そりゃ、ありがたい話だが。手を借りるまではなあ」
「トリニティさんたち、お店の中で聞き込みとかしてないですよねッ? 僕、すぐ近くの叔父の焼鳥屋でバイトしてるんですッ。店員だったら、初対面相手にはなかなか話さないことも聞き出しやすいですし! あの、僕に頼んでくれないと絶対後悔しますよッ!」
「わ、わかった、わかったって……」
ものすごい威勢で自身を売り込む少女に負けを認め、トリニティは小さく諸手をあげる。
「けど、そっちもいそがしいだろ。善意とはいえ、そんな気を遣ってくれなくても……」
「じゃあ! 交換条件じゃないですけど、お手伝いの代わりに、いいですか?」
少女の態度は冒頭と変わらず物腰低いが、本性なのかだんだんと図太さがしみ出している。
「前から、部で上げてるネット新聞にトリニティさんの記事を載せたいなって考えててえ……ぜひ僕にインタビューさせてくださいッ!」
「ハハ、なんだよ! そんなの俺が頼みたいくらいだ。もちろんいいぞ」
トリニティは確信を覚えた。
目の前にいる美少女は純粋なファンで、ひたすら自身と町の役に立ちたいのだと。
そのような都合よい確信を。
「やった! そしたら善は急げです、店まで案内します! 僕、羊備洲 くくるって言います!」
にわかに美少女が手を掴まえてきて、トリニティを自身のいる方角へといざなう。
トリニティは「ちょっと待てって!」などと制するが形だけのものでしかなく、その手を拒まなかった。
美少女があらわれるまで、バキバキ通りにて図らずもいずれかラブコメディーのヒロインをなぞるような立場にあったアルウゥスだが……今では空気と化していた。
2人の背が遠ざかるのを見て、ハッと吾に返り、長身爆乳のからだを急いで同方角に走らせたのだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夜がふけた22時前。
羊備洲 くくるの強引な誘いを契機に、3人は件の焼鳥屋ののれんをくぐった。
「はい、トリニティさん、おしぼりです。叔父(焼鳥屋の店長のようだ)が焼鳥3本サービスしてくれるそうなので、遠慮なく頼んでくださいねッ。さあ、さあさあ!」
くくるは甘ったるい声でトリニティに語りかけ、華奢な手指におしぼりを広げると断りなしにトリニティの手と手首を拭き始める。
また当然の顔をしてトリニティの隣にかけている。
「あ、ああ……じゃあとりあえず、モモで」
すると得意顔を浮かべたくくる、トリニティの手を引くなり太ももへ挟み込んだ!
無論、くくるの太ももへ、だ。
トリニティと、対面に座るアルウゥスは銃に撃たれたように動揺する。
「はあ、はあ……次は?」
「え! じ、じゃあセセリ……」
トリニティは手に少しひんやりした柔肉の締めつけを感じながら、とっさに答える。
またくくるは整った顔を赤らめニヤリと笑んで、今度トリニティの肉垂の下、首筋に息を吹きかけた。
状況理解が追いつかずされるがままのトリニティ。
さらに彼女の舌粘膜がちろっと一度触れた!
「ひえッ!」
「えへ、頑張った味ぃ……。最後はどこにします? ほら、もう決まってますよね?」
トリニティにささやきかけるくくる。
彼女の鎖骨付近へと、鶏マスクの欲望が吸い寄せられる。
「え、っと――ム、ム、ムうううう!」
「ちょっといい加減にしてよッ! 園治が困ってるでしょ! 困ってるよね! 離れてね!」
腹に据えかねたとばかりにアルウゥスはいちゃつく2人へ迫った。
かつて聞いたことない怒声にトリニティも恐怖を抱き、すぐにくくるを引き剥がしジャケットの襟元を正してみせる。
「すみませんでした……」
「もういいよ。それで、くくるさんだっけ。インタビューっていうのはボクたちを連れてくるための口実で、本当はこんないかがわしいことがしたかっただけなんだ?」
トリニティからの謝罪の言葉を聞き流し、アルウゥスが爆乳をテーブルに乗せ追及する。
「ち、違います! あくまでもトリニティさんの緊張をほぐすための、交渉テクに過ぎません。さっ、トリニティさん、インタビュー始めますねー?」
「ほぐすんじゃなくて、骨抜きにしたいんじゃないの……」
間違いなどなかったと開き直り、作務衣に似た服の懐から手帳を取り出すくくる。
アルウゥスの疑う視線をないものとしながら本来の目的、トリニティへのインタビューを始める。
……ただし、インタビューそのものの内容は至極まじめであり、下心の一つとして感じられないものばかりだった。
途中飽きたアルウゥスが平然と食事をしだしたほどだ。
そのため詳細についてここでは割愛する。
時刻が23時を回る前に、一同は解散した。
くくるは最後「ありがとうございましたぁ!」と威勢よくあいさつをし、トリニティたちを店先で見送った。
「いや、まさか協力してくれるだけじゃなく記事まで書いてくれるとはな。嬉しい誤算だ!」
すがすがしい声でトリニティ。
黙って早足で前を歩く長身爆乳アルウゥス。
2人がバキバキ通りの、くくると出会った場所までもどって来た頃に、アルウゥスはいきなり後ろを振り返る。
「ボク、明日は(輸入雑貨店の)仕事があるから。聞き込みはあの人と園治でやってよね」
「ああ、わかった。にしても今日はホント、アルウゥスの機転のお陰で助かった。また頼――」
「ふんッ、どうせッおっぱいが欲しいだけでしょ! 園治のバカ! こんなの、自分でつけてればいいよッ!」
瞬間、長身爆乳アルウゥスは上着に腕を突っ込むと、爆乳をもいでトリニティに投げつけた!
真っ赤な肉塊は爆乳なりの重量をして、命中したトリニティを地面へと叩きつける。
もがれた爆乳がバキバキ通りに転がる。
「もう園治なんか知らない! 先に帰ってるね!」
覆面で表情はうかがい知れないが、怒っているのは確かなまな板アルウゥスがきびすを返す。
しかし、帰る場所がトリニティと同じだけに捨てゼリフは何ともマヌケだ。
アルウゥス去りし後。
しばらくしてトリニティも立ち上がり、道の爆乳を拾って帰途につく。




