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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 御露出町・御露出コールドロン編
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第27話  ウワサの巨大ヘビって?

 虚幌須うろぼろす市は、御露出おつゆで町ぷるくら動物園。


 先日、後継生物こうけいせいぶつ回収の拠点となっていることが判明した、町内北西部にある施設しせつだ。


 とはいえ、カムフラージュのため日中は、一般的なふれあい動物園というテイで営業している。


 支配人は「ふね」のマジカルパウアーをもつ巨大ヘビの()()()()()


 人前ひとまえでは精巧せいこうなフェイスマスクと、「()()()()()()()()紳士しんし服を

 遠近法を駆使くしして、身長()()()()()()()を超える化物ばけものの姿を人間にいつわっていた。


 そして園内唯一のフリースペース。

 本日はその場所を貸し切って、ご当地ヒーローショーが行われている。


 もちろん『商店戦士トリニティ』のショーだ。



 寒空さむぞらの下、にわとりマスクと全身タイツの正装アクタースーツに身をつつんだトリニティが、着ぐるみの怪獣へと攻撃を開始する。


 ダメージジーンズ同様、表面のいたみが勲章くんしょうめいた味を出す二足歩行の怪獣が、大きくひるんだ。


 シーンは、これまで防戦一方だったトリニティが怪獣への反撃にてんじる、むねアツ展開だった。



「食らえッ、必殺・厘月りんげつ隕石いんせきストライぃぃぃぃクぅッ!」



 そこに渾身こんしんの必殺技が炸裂さくれつ! 


 垂直()()()()()()()()()()()()トリニティがりをみまう。


 ドガビシャア! 

 けたたましい効果音が、スピーカーからはなたれる。


 怪獣と観客、園の動物たちの鼓膜こまくにすさまじいダメージがおよぶ。



「グオオあああああッ!」



 怪獣はスピーカーボイスと悲鳴が混じった鳴き声を上げ、ステージの上にひっくり返った。



野蛮やばんネ……」



 ショーを遠目にながめていた、しりがデカい作業着さぎょうぎ姿の人物がつぶやく。


 梅鼠うめねずみ色という肌に、白色の髪をした、宇宙人型の後継生物の()()()()()

 こちらも体格に合わない巨尻は隠せていないものの、一般のスタッフにふんしていた。



 クリスマスを終えた12月26日。


 日曜日であり、また市内全域の小学校で冬季休みが始まっていることも手伝って、動物園には多くのファミリー客が訪れた。


 トリニティのショーは、繁忙はんぼうをかもし出した園の仕事を手伝った彼への、いわば報酬ほうしゅうだった。


 動物園は千客万来せんきゃくばんらいといえども、温泉(めぐ)りや地理的名所の観光()()()の来客には違いない。


 そこに、トリニティはショーをぶつけることで、自身の宣伝と来客の満足度向上を同時にやってのけたのだ。



「トリニティ、トリニティ! めっちゃ、かっちょよかったです! 応援してます!」



 ヒーローショー終了後、恒例こうれい握手あくしゅ会にてトリニティの前には子どもの行列ができる。


 ひじょうに可愛かわいらしい。

 トリニティへかけられる言葉も純粋じゅんすいで美しい。


 見守る保護者一同の笑顔も満開だ。


 いつの間に参加したのか、コアな成人ファンもはず的に列へならんでいるが、いちいち気にしない。



「ありがとう、また待ってるぞ。じゃあ次の人!」


「え、えっと、あわ……」



 眼鏡めがねをかけた男児に順番が回ってきた。


 男児は、恥ずかしがって固まってしまう。

 トリニティはみずから握手へ誘導ゆうどうするか逡巡しゅんじゅんする。


 すると男児の後ろに並ぶ、よく顔の似た少年が1歩前へみ出してきた。



「あ、オレこいつの兄です! 一緒に握手お願いしゃす!」


「ああ! 仲がいい兄弟だな。よろこんで」



 トリニティは陽気な兄と眼鏡の弟に、両手を差し出し握手をわした。



「えっと、今日トリニティが来るって知らなかったから、こいつ緊張してて。オレら(御露出おつゆで町中央にある)士里七しりなな小なんすけど、厘月りんげつ町までショー観に行ってました! 頑張ってください!」



 陽気な兄はすらすらとしゃべった。

 それにトリニティはあいづちを返す。


 しばらく、眼鏡の弟を待ったもののひと言も発することはなく、その場はお開きとなる。


 トリニティは泣く泣く次の客に視線を移した。



(なんか言いたげだったけどな……)



 ファンサービスの精神か、ただの思い上がりか。

 いずれにせよトリニティが疑念を、自力のみでおさえることはできなかった。


 握手会待機(たいき)列をさばき切った後、先の兄弟が退園していないことを祈りながら、園内をさがし回る。



「やあやあ! トリニティだ。さっきは握手あくしゅしに来てくれてありがとう」



 すると、動物園の1周に10分とかからない小規模さのおかげで、トリニティは眼鏡の弟を見つけることができた。


 陽気な兄の姿はないが、はぐれてしまった悲愴ひそう感などはない。



「あっ、はい。どうも」



 眼鏡めがねの弟はまるで、トリニティが会いに来るとわかっていたように、握手会の緊張した態度が演技だったというように落ち着きはらって、彼を受け入れた。


 駐車場側ゲートに面した、木陰こかげのベンチ。


 座っている眼鏡の弟のとなりに、トリニティがこしかける。



「……ボク、見てて。トリニティさんは、公園で、おっきなうまと戦ってましたか?」


「え? あ……ああ。戦ってた、確かに」



 眼鏡の弟は小動物のささやきで、油断していたトリニティをするどい質問でつらぬいた。


 ――彼の指す「おっきな馬」とは、おそらく後継生物()()()()()だろう。


 ミセ・ヤリは今年()()()()()、トリニティが遭遇そうぐうした2体目の敵。


 だが、アルウゥスとの連携ミスによって逃げられてしまった。

 苦い経験そのものだ。



「あ、あのッ、じゃあおっきな()()は見たことありますかッ!」


「へ、ヘビぃ……?」



 眼鏡の弟はひとみを満月にして、興奮ぎみに、また突拍子とっぴょうしもない問いを投げかけてくる。


 ヘビと聞いて、トリニティの脳裡のうりにはすぐテラ・ケルの正体が浮かんだ。

 当然だろう。


 胴体の四か所が食いやぶられ、内側から「触手」がはみ出した魔改造ヘビ(見た目はトカゲ)。


 まさか……考えたところ、とおくでクシャミが聞こえてきた。



「お、お兄ちゃんのクラスとかで、そのヘビを探すのが流行はやってて。見た人がいるって言ってて。()()()()()で、木みたいにおっきいって聞きました! それから、歯がヘンな形をしてるとか」


「じゃあ見たことはないな」



 テラ・ケルの体表は、青みを帯びたうろこにおおわれていた。

 さすがに黒色、と呼ぶべき色彩と見間違みまちがうことはあり得ないだろう。



「そっか……お兄ちゃんの友だち、ヘビにってケガをして、(ペットの)ワンちゃんに逃げられちゃったから。先生が、『探しに行ったらダメ』って言ってました。えっと、その……」



 眼鏡の弟はおどおどしながらも真剣に言葉を選んでいる。



「トリニティさん! そのヘビをやっつけてくださいッ!」



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「――ってことがあってな。たぶん後継生物こうけいせいぶつなんだろうが、決定的な情報がない。とりあえず、小学生がヘビにおそわれたらしい場所の地図はもらってきた」


「オッケー! 明日現場に行こう!」


「即答か。景気けいきがいいな!」



 トリニティは巨大ヘビの話を聞いたその日の夜、食卓にてアルウゥスへ状況を説明する。


 説明だけで、何をしてくれと言わずともアルウゥスは協力の意思を見せてくれた。



 翌朝、トリニティはアルウゥスとマジモスを連れて、御露出おつゆで町中央の士里七しりなな近辺へと向かう。


 バスの最終便に乗れず、ぷるくら動物園で一夜を明かした失敗をかてに、125ccの()()()()()を中古で買ったトリニティ。


 小ぶりな車体にまたがって走っていると、軽くなったふところへ、とがった冷たい風が突き抜ける。


 また珠辻たまつじ 園治えんじとしてのツテをたよって、先週から、アルウゥスが輸入ゆにゅう雑貨ざっか屋でアルバイトを始めた。


 生活費を切り詰めなければならない只中ただなか

 2人と1匹、バードナーでフライドチキンを食べる日は、もはや祝日と化した。

 生きることはきびしい……。



いたけど……うん、やっぱり森だね」



 士里七しりななへ到着。


 アルウゥスは、トリニティがコンビニプリントしたネット地図を両手ににぎり、片側一車線の道路脇を漫然まんぜんと歩いた。


 右手に水田みずた

 左手に鬱蒼うっそうとした森林。

 そんなロケーションは、およそ未知なる生命体をかくまっているようには見えない。



おそわれた子は普段の犬の散歩ルートから、たまたま遠出とおでした日に()()()()()と出くわしたらしい。そんで襲われて……子どもは手の骨折こっせつで済んでるが、犬は行方ゆくえ不明になってる。あんま悠長ゆうちょうにはできねえぞ」


園治えんじ、でもね、やっぱり目的地はここだよ。森の中に棲処すみかがあるのかな……」


「移動してる可能性もあるだろ。ああッくそ! あいつっぽいとかこれっぽいとか、何かこころたりはないのか?」



 トリニティは漠然ばくぜんとした問いかけをする。


 なやまされるアルウゥスが、うーんと小さくうなる。



「そういえば、ここって1回来たことあるかも。えっと、どののときだったっけ……」



 アルウゥスがボケている間に、彼のヘルメット代わりになっていたマジモスは元に戻った。


 そして、マジモスはなんとッ、高速で森の中へと飛んでいく――! 


 ブウンッ! 

 単独で危険区域へ、突貫とっかんしたのだ!



「おい、マジモス! どこ行くんだよッ!」



 トリニティたちが取り乱す中、森のおくから奇妙な光がれ出してくる。


 視神経の奥までこびりつく、()()()()()()()()()


 それはマジモス――あるいは子どもを襲った巨大ヘビが、まさにマジカルパウアーを行使している証左しょうさだった。


 マジモスは、その体内にアルウゥスのキャンティマを移植されたことで、自身もまた任意にマジカルパウアーを使うことができる。


 巨大バエのからだを頭部に見立て、筋骨きんこつ隆々(りゅうりゅう)とした人型ヒトがたの胴体を生成して合体するのは、マジモスの十八番おはこの戦法だ。



「マジモスう!」



 アルウゥスがなさけなく声を荒らげる。


 2人は焦燥しょうそうしながら、森の中にダイブした!

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