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性癖全開!キャンティマロン~◎セイシをかけて、勝手に戦え!◎~  作者: 石鬼 輪たつ
第2章 VS.マ・ラ 御露出町・ぷるくら動物園編
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第23話  舟に乗って やっと乗る

試験的にイラストを入れています。

今後、正式な挿絵などに差し替える予定です。



「――これが、ボクたち後継生物の乗ってきた『ふね』だヨ」



 ナゾの閃光がトリニティとアルウゥスとマジモス、他2人をみ込んだ。

 次の瞬間、動物園の管理棟から「幻想的な平原」へと、景色が一変したのだ!



 幻想的な平原とは、たそがれどきのようなこんあいの空と、ひらけているが風ひとつ立たない緑の大地。


 地球儀ちきゅうぎの内側に、マントルではなく空間があるとすれば。

 加えて自身がそこにいるとすれば。

 空間から外側を見たとき、今トリニティが見ているものと同じ光景が見えるだろう。


 その通り、平原はまさに「()()()()()()」という様相ようそうていしているため、幻想的だった。



「へえ。全然フネ感ないけどな。これでどうやって地球に来たんだ?」


「その前に。トリニティ様は、捕獲ほかくした後継生物こうけいせいぶつ収容しゅうよう方法についてお知りになりたいのでは? そのためにいらっしゃったのでしょう」


「あ、ああ。そうだな、悪い」



 気分に任せて発言したトリニティをたしなめたのは、身長2.5メートルはあろうかという地球人らしき巨人()()()()()だった。


 テラ・ケルは特注のスリーピーススーツを着た紳士しんし的な男性。


 意図は不明だが凛々(りり)しい顔の口元を一切動かさず、腹話術ふくわじゅつの形式で話した。



「今からお見せします。私のマジカルパウアー、『舟』に乗って」



 テラ・ケルが手元にもった土気つちけ色の球体に触れる。


 すると、トリニティたち5名の地面がすべり始め、地点の移動が起こる。


 体感はレースゲームの画面をながめているものに等しい。

 足元が固定されたまま、景色のみゆっくりと流れていく。


 地球儀の回る間、トリニティの目には多種多様なものうつり込んだ。


 無論、中には後継生物も含んでいる。

 彼らは体がとても大きいためひと目でわかった。



「見たことないやつばっか――おっ、なんだっけ、コ・キユだ! コ・キユがいる!」


「ほとんどはボクが捕まえたか、マ・ラについていかず残ってくれた仔だね」


「ああ。けど、こんな自由に放牧ほうぼくされてる感じとはな……また脱走されない保証はあるのか?」



 アルウゥスの横ではしゃいだと思えば、急に深刻な質問を投げかけるトリニティ。


 自身を客人に見立てての放縦ほうじゅうなふるまいは、ペルウィアたちからの心証を悪くするおそれがある。


 しかし紳士しんしぜんとした巨人テラ・ケルは冷静で平然としたまま、トリニティの問いかけに応じてくれた。



「トリニティ様の意見はごもっともです。しかし、通常であれば『舟』の性質によって、後継生物(彼ら)はマジカルパウアーを使うことができません。したがって心配は無用むようでございます」


()()()()()()()()()使()()()()?」


「はい。『舟』の性質……端的たんてきに言うと『生体活動の停止ていし』、これによる作用です。ものが『舟』の空間へ立ち入るとその瞬間、()()()()()()()()()()されるという現象が起こります。固定化された状態では、いかなる変化が起こっても、一定の時間が過ぎることで元に戻ります」


「はあ……また、わけのわからん話になるのか。いたのは俺だけど。それで?」



 身振り手振りで戸惑いをあらわすトリニティ。


 彼の死角から、ペルウィアが飛び出してきた。


 何をするのか。

 脇目わきめもふらず、トリニティの指にみついたのだ!



「いって! 何すんだよこの野郎ッ!」



 激痛を覚え、ペルウィアをとっさに引き剥がす。


 トリニティのみつかれた右手親指は第一関節に歯型はがたがつき、皮ふがやぶれて血も染み出している。


 ところが、先ほどテラ・ケルの説明した「一定の時間」が過ぎると――、


 親指は元に戻ってしまった!



「って、もう痛くない……これが『舟』の能力か? 実演するために噛んだのか、そうだよな?」



 トリニティはおどろきと不信感を同居させながら、ペルウィアにる。


 ペルウィアは素知そしらぬ顔でだまりこくっている。



「今しがた起こった現象だけでは、傷が治癒ちゆしたと思われるかもしれません。実際は、傷を負った組織が、傷を負う前の組織――固定化された状態へ戻ったのです」


「そりゃ、ゲームの()()()()みたいなもんか……? それはテラ・ケル(お前)がやってるのか?」


「リセット、とは巻き戻しのことですよね? その通りです。しかしながら、生体の変化は、呼吸といった不随意ふずいいのものなどもふくまれ、無数に存在します。私が制御せいぎょしていてはリセットが間に合いません……それらはすべて『舟』による自動作用です」


「なるほどな、話はわかった」



 テラ・ケルがより詳細な説明をし始めることを予測し、トリニティはい気味に返事する。



「マジカルパウアーを使うには、精子の頭がとれる『無頭症むとうしょう』ってやつが必要だったよな。けど、『舟』の中にいると『無頭症』がそもそも起きないか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――だから後継生物(お前ら)はマジカルパウアーが使えない、と」


「素晴らしいですトリニティ様! その通りでございます」



 トリニティはテラ・ケルの主張を噛み砕いて理解する。

 しかし彼の表情はまだ、納得がいっていないというようすだ。



「いや、話はまだある。使えないって理屈はそうだとして、使()()()()()()()()()()()()わけだ。んで……なんだっけ? あの、脳にある睾丸力こうがんりょくが出すっていう()()。アレがある状態で『舟』に入れば、『無頭症むとうしょう』がなかろうとマジカルパウアーは使えてしまうんじゃねえの?」


「コソコソ……アルウゥス、この人間見た目によらずあたまは使えるのネ……」



 感心したようすのペルウィアが、アルウゥスへ耳打ちしている風に丸聞こえの声で話す。



「誰があたま悪そうな見た目だって?」



 トリニティの言い分とはこうだ。


 テラ・ケルの管理する「舟」の内部では、後継生物のからだに起こる変化――ここでは「無頭症」発症をトリガーとして、マジカルパウアー行使こうしの準備をすること――が阻止そしされる。

 そのため後継生物はただデカいだけの動物に成り下がる。


 ただし、あらかじめその準備を終えてから「舟」に入った場合では前述の限りではない。

 「舟」による()()()()()()()がどのタイミングで発揮されるか知れないが、少なくとも後継生物はリセットが起こる瞬間までマジカルパウアーを使うことができるはずだ。


 それこそマ・ラが脱走したと考えられる1年前のように、悪意をもった者が何らか「舟」に被害をもたらすような事象を、マジカルパウアーによって引き起こすことも可能ではないのか?

 ひいては、完全な安全性をうたうことはできないのではないか?



 ――トリニティが当事者テラ・ケルにした質問へ、横からペルウィアがにゅっと割り込み、微笑びしょうを浮かべながら代弁してきた。



「アレ、とは()()()()のことネ。人間の推察は合っているヨ。だから! 伝達物質がカラになるまで、マジカルパウアーを使わせてから放り込むノ。実質じっしつ去勢きょせいネ」


実質じっしつ去勢きょせいってなんだ……」


「あと、後継生物って『無頭症むとうしょう』がものすごい速度で起きるから、伝達物質をカラにしてもまたすぐに作られちゃうノ。だ、か、らぁ? 先に『無頭症』の()()を、ヌいておくんだヨ?」



 そう言うとペルウィアはあどけない顔の微笑を、ニヤニヤといやらしい表情に変える。

 成人男性の手にすっぽり収まるサイズの子どもの手、親指と人差し指で()をつくり、しならせて上下にシュッシュと()()()()()()見せる。


挿絵(By みてみん)


 向かい合ったトリニティは背筋に悪寒おかんが走り、脊髄反射で目をそむけた。



「やめろッその手つき! うわ! ヘンなもん想像しちまった!」



 ペルウィアにからかわれ、トリニティは悶絶もんぜつする。


 「無頭症」の原因物質を除去じょきょする。用語に置き換えていれば一般的で理にかなった方法のようだが……やっていることは()()()()()()だ。

 もっとも当のペルウィアは態度から、その行為を忌避きひしていないらしかった。



「わかったよ! お前らが無策でやってるわけじゃねえってのは。けど、だったら何がどうなってマ・ラはここから脱走したってんだ?」


「その話については、また私から……ちょうど、語るにふさわしい場所へ着きましたので」



 テラ・ケルの言葉に続いて、足元で流れていた景色が止まる。


 彼の口にした「ふさわしい場所」は、その実これまで目にしてきたものと大差がなかった。


 明確にことなるのは、トリニティたち5名のほかにものが一切いないこと。


 また、幻想的な平原の中に、肉色をしたとうが建っていること。

 高さは()()()()()()もある。



なんの建物だ?」


「いいえ。これは()()()です」



 たずねたトリニティは、テラ・ケルの即答に驚愕きょうがくする。


 ()()()()には目も口も、手足の区別すらない。


 到底とうていものとは思えない。


 ウニやナマコといった棘皮きょくひ動物も、外観で構造のわかりづらいものだが、肛門こうもん管足かんそくなどの対外器官は目視できる。


 ではそのとう……やはり見渡しても対外器官が存在せず、一面をブヨブヨした肉におおわれているばかりだ。



「『舟』にはものしか入れません。いえ、マスクや結石、寄生虫も含みますけれど……」


「俺のマスク(かお)を異物扱いすんなッ!」


「これは失敬……コホン。これは、マ・ラが残した遺産いさんのようなものです。トリニティ様は、吾々(われわれ)がどのように地球へ来たのか、気になるのでしたね? 僭越せんえつながらご説明いたします、あの日の惨劇さんげきについて……」


「ああ、手短てみじかにたのむ……」


「念のためすべてお話ししますね」



 頭痛に苦しむトリニティへ、テラ・ケルは表情ひとつ変えずに答え、腹話術ふくわじゅつの形式で回想する――。



(ペルウィアの語尾に全部♡付けたいなぁ……)

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